ウラン価格が一部で100ドル超え、供給減観測と需要増期待で16年半ぶり高値
ウランの国際価格が高騰している。マーケット・インサイダーのデータによると、1月12日に$104.00/lbと心理的節目の100ドルを超え、2007年夏以来およそ16年半ぶりの高値を付けた。1月15日も同水準で推移している。生産大手が採掘不振を予告する一方、原子力利用の発電や電池などの需要が拡大するとの期待が強く、価格を押し上げている。
過去20年間のウラン価格の推移($/lb)
ウラン価格はmiruのデータでも1月15日に現物で$91/lb。2023年末から一段高となっている。2023年9月に60ドルの節目を突破して東日本大震災と福島原子力発電所事故の発生以前の水準に戻した後、たった3か月余りで約$40も上げた。
■採掘最大手のカザトムプロムが生産目標見直しを発表
週末の週末の上昇の直接のきっかけは、ウラン採掘の世界的大手であるカザフスタンの国営企業カザトムプロム(Kazatomprom)が1月12日、自社ホームページ上で「2024年の生産計画を見直す可能性がある」と発表したことだ。
プレスリリース(英語): Kazatomprom expects adjustments to its 2024 Production Plans
発表によると、生産目標の見直しは、ウラン採掘の重要な操業材料である硫酸の不足のため。供給先との契約に基づいて2024年と2025年の生産目標を設定していたが、硫酸不足に伴いウラン鉱床の建設工事が実行できないため、達成は困難だとの認識に達したとしている。同社は世界最大のウラン生産企業であり、生産量は2022年の世界の一次ウラン生産量の約22%を占める。
これより以前から、西アフリカの政情不安もウラン供給の重荷となっていた。ニジェールで2023年7月末にクーデターが発生。当初は混乱による影響は小さいとされたものの、ニジェールは世界のウラン供給の2割を占め、欧州連合(EU)にとっては最大のウラン供給元でもある。
■中国企業、硬貨サイズの原子力電池を開発
一方、ウランの需要拡大期待は強い。まず、気候変動を受けた脱炭素社会への動きを受けて、火力発電以外の発電設備として原子力発電を見直す機運が再開している。2022年のロシアのウクライナ侵攻後に原油をはじめとする資源の争奪が深刻になったことに加え、2024年元旦の能登半島地震で原発への被害がほぼなかったことも原発への安心感を誘っている。
新たな需要への注目もある。中国の原子力電池開発企業である北京貝塔伏特新能科技は1月8日、自社ホームページ上で、「実用化レベルの硬貨サイズ原子力電池の開発に成功した」と発表した。この原子力電池は50年間の安定した発電が可能で、充電、メンテナンスが一切不要という。人工知能(AI)向けなど幅広い領域で使用が見込まれる。既にテスト段階に入っており、一般向けの発売も間近だとした。
プレスリリース(中国語): 贝塔伏特公司成功研制民用原子能电池 (betavolt.tech)
■2025年に115ドルの予想も
ウラン価格の先高観はいよいよ強い。米モーニングスターのメディア部門などの外電は1月15日までに、バンク・オブ・アメリカの金属・鉱業チームの見立てとして、「ウラン市場の逼迫は2025年まで続く可能性がある」との見方を伝えた。
同チームは、スポット価格は2024年に1ポンドあたり105ドル、2025年に1ポンドあたり115ドルに上昇すると予想したという。供給不足と需要拡大に加え、投資ファンドの規模が引き続き拡大することも価格押し上げるとみている。
(IR Universe Kure)
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