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ニッケル価格、底入れか一時反発か 4ヵ月ぶり高値もインドネシアが供給増方針

 足元のニッケル価格を巡り関係者の見方が交錯している。ロンドン金属取引所(LME)のニッケル価格現物は3月1日に$1万7435/tonと2023年11月中旬以来ほぼ4か月ぶりの高値を回復した。過去2年間にわたり下落が続いていただけに底入れ期待が広がるものの、世界最大のニッケル生産国であるインドネシアからの供給は続き、先行きのへの不安は根強い。

 

■インドネシア「$1万8000を上回るのは望ましくない」

 

 過去6か月間のLMEニッケル価格($/ton)

 

  3月1日のニッケル価格は2月6日に付けた直近安値($1万5620/ton)からは12%上げた。心理的節目である$1万5000台に下落したため、さすがに迫入れと見た業者が買いを入れた模様だ。ロシアのへの追加経済制裁でロシア産ニッケルの供給が細るとの観測が浮上したうえ、HPなどが豪州のニッケルの精錬所の停止を発表するなど国際資源大手でニッケル減産の動きが相次ぎ、供給が細るとの見立ても強まった。

 しかし、この流れに水を差す動きがインドネシアの政府高官から飛び出した。インド英字紙エコノミックタイムズ傘下の自動車専門メディアであるET AUTOをはじめとする外電が3月1日、インドネシア海洋・投資担当調整大臣府のセプティアン・ハリオ・セト(Septian Hario Seto)投資及び鉱業調整担当副大臣が、「同国にとってのLMEニッケル価格の適正水準は$1万8000/ton程度だ」と話したと伝えた。現在の水準でインドネシア企業は十分にコストが均衡しており、「これを上回るのは望ましくない」として、今後も供給を増やしていく方針を示したという。

 

■安いEV生産にはニッケル高騰は困る

 インドネシアの供給増方針の背景は、同国が進める「下流化」がある。インドネシアは単純な資源国から脱却し、精錬や加工・完成品までを生産する高度製造儀用国家を目指す。埋蔵量が世界一で最大の強みであるニッケルに関しては、2020年に鉱石輸出を禁止。国内企業による精錬業発展を目指した。一方で、中国企業の支援を受けて、電気自動車(EV)向けニッケルの一種である混合水酸化物沈殿物(MHP)を製造する新しい処理プラントの建設も進める。

 もしインドネシアでEVが生産されるとすれば、少なくとも最初は、低価格帯EVを近隣の東南アジアの国々に輸出していくことになるとみられている。その場合、電池原料となるニッケル価格が高騰していては困るのだ。国内自動車メーカーの負担を軽減するためにも、材料価格は抑えなければならない。ET AUTOによると、セト氏は「EVメーカーのコストを低く抑えるために、ニッケルが十分に供給され続けることを保証する」と話したという。

 さらに、ニッケル価格の抑制は、リン酸鉄リチウム(LFP)のようなニッケルを使わない電池との競争力を高めることにもつながる、とし、「数年前にコバルトで起きたことはよくわかっている」と述べたとも伝わった。

 

■中国依存がリスクか

 もっとも、インドネシアのこの政策は、同国の産業付加価値を高めるという目的そのものとの矛盾をはらむ。結局のところ低価格でしか勝負できないのなら、やはり搾取される側に陥るのではないかとの懸念が同国内外にある。

 また、MHPなどの生産に中国企業が多く関わっていることも、米国などの懸念を招いている。インドネシアとしては米中対立に巻き込まれたくはないものの、中国資本からの投資は雇用創出などの恩恵もあり断ち切りづらい面がある。インドネシア側は米インフレ抑制法(IRA)への対応などもめぐって米側と協議を重ねているものの、足元では2023年末に中国企業出資のニッケル工場で死亡事故が起きるなど、中国との協力体制下での生産管理の甘さも露呈している。

 

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(IR Universe Kure)

 

 

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