コンゴ、欧ERG傘下のコバルト採掘を一時停止か 自国優先、ESGはカナダ企業などから信頼
コンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)が欧州系のユーラシア・リソーシズ・グループ(Eurasian Resources Group)傘下のコバルトと銅採掘9社による採掘を差し止めている模様だ。コンゴ側による企業管理が不十分との理由だが、ESGは欧米企業からの信頼が厚く、今秋もカナダの電池企業と新規契約を結んだばかり。コンゴ側との亀裂が懸念される。
■下請け企業、コンゴ人株主は名前だけ?
Mining weeklyの4月4日の報道によると、コンゴ当局は4月2日のERGとの会談で、差し止めが継続していることを認めたという。措置自体は3月14日から発効していた。理由についてコンゴ側は、採掘企業の権益が「コンゴ人株主によって構成されていない」と指摘したと伝わった。
ERGはルクセンブルグを本拠とするカザフスタン系企業。ザンビアなど他のアフリカ諸国やブラジル、中国などで採掘事業を展開する。コンゴでは同国国営資源のジェカミンと合弁で南部のボス(Boss)鉱山での採掘や、メタルコル(Metalkol)工場での鉱物再処理を手掛ける。
関連記事:コンゴ産コバルトに成長を賭けるカザフERG | MIRU (iru-miru.com)
コンゴは2017年、これら外資による下請け企業について、コンゴ国民が過半数を占める必要があると定めた。しかし、ERGの下請け企業の株主であるコンゴ個人は、採掘企業に実質的に関与しておらず、会社を管理しているわけでもない名義上の人物たちだとの指摘があったもようだ。また、ERGは資産の一部をジェカミンに移行する予定だが、その計画も進んでおらず、コンゴ側の不信を招いたとみられる。
■カナダ企業、ESGのコンゴ産コバルトの購入を契約
欧州系企業であるESGは欧米顧客からの信頼は厚い。カナダのバッテリー企業であるエレクトラ・バッテリー・メタルズは4月2日、ESGとの間でコバルト供給契約を結んだと発表した。
エレクトラの発表資料: Electra and Eurasian Resources Group Sign Cobalt Supply Agreement | Electra (electrabmc.com)
エレクトラは2026年から3年間にわたりERGから水酸化コバルトを購入し、硫酸コバルトに変換した上で電気自動車(EV)用バッテリー材料に用いる。供給元はERGのコンゴのメタルコル工場とし、エレクトラの経営陣は発表資料でERGについて「安全でクリーンで倫理的に調達されたバッテリー材料を生産するためには、持続可能な採掘慣行で認められたリーダーとの提携が不可欠。世界最高の水酸化コバルトサプライヤーの1つであるERGをパートナーとして迎えることができて光栄だ」と持ち上げた。
■コンゴのコバルトには中国勢が入り込む
コンゴのERGに対する厳しい姿勢の背景には、単純な先進国に搾取されたくないという資源国側の思惑が背景にある。ただし、コンゴの銅・コバルト産業には、中国勢が深く切り込んでいることを忘れるわけにはいかない。コンゴの姿勢が傾きはやや気にかかる。
関連記事: 中国、コンゴを囲い込み 国有2社が70億ドルのインフラ投資、コバルト生産は世界首位 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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