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Americas Weekly#16 史上最も混乱した1968年大統領選との共通点におびえる民主党 学生の標的は「虐殺ジョー」

 イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの軍事行動を非難する米国の大学生らによる抗議活動は全米に広がり、各地で警察官との衝突が起きている。CNNのまとめでは、逮捕者が出たのは22大学(4月29日現在)にのぼり、4月18日以降の逮捕者数は約1000人となった。米国メディアは、1960年代のベトナム反戦運動と対比させるように今回の学生の動きを報じている。

 

 こうした中で繰り広げられている今年の大統領選は、ベトナム戦争中の1968年の大統領選との共通点が多い。米国史上、最も混乱した大統領選と言われ、この時は民主党が大統領のポストを共和党に明け渡しているだけに、民主党の危機感が高まっている。

 

 1968年の大統領選では、ケネディ大統領の暗殺(1963年11月)を受けて副大統領から大統領になり、現職のまま1964年の大統領選で当選したジョンソン大統領が再選を目指した。当初は、順当にジョンソン大統領が党の候補者になるとみられていたが、長引くベトナム戦争が状況を変えた。

 

 年初から北ベトナム軍が反転攻勢に出た。戦争の長期化を危惧する米国民の声が急速に強まり、学生を中心とした反戦運動が拡大した。

 米駆逐艦が北ベトナムの魚雷艇の攻撃を受けたとされる「トンキン湾事件」(1964年8月)をきっかけに、軍事行動の判断はジョンソン大統領に一任されていたこともあり、反戦学生らはジョンソン大統領を「標的」にして抗議行動を激化させた。

 

 経済も悪化した。戦費の急増が財政赤字とインフレを加速させ、国民生活を直撃した。ジョンソン大統領の支持率は低迷し続けた。

 ジョンソン大統領は予備選がスタートした後の1968年3月、北爆(米空軍による北ベトナム本土への空爆)の部分的な停止と自らの大統領選への立候補の撤回を発表した。

 民主党の予備選ではベトナムからの撤退を掲げる候補が支持を広げていた。故ケネディ大統領の弟のロバート・ケネディ元司法長官も参戦したが、6月、カリフォルニア州での予備選の勝利宣言をした直後に、イスラエル寄りの姿勢を示していたことに不満を抱いたパレスチナ人の男によって射殺された。

 8月にシカゴで開かれた民主党全国大会では、ジョンソン大統領の選挙運動を引き継いだハンフリー副大統領が党の候補者に選出された。学生や反戦活動家が会場を取り囲み、警官隊と激しく衝突し、600人以上が逮捕される「流血」の党大会となった。

 米紙USAトゥデーは4月27日に配信した記事で、1968年と今年の大統領選の共通点として①反戦運動の高まり②民主党内の分断③海外の軍事衝突の対応によろけめく不人気候補――の3点を共通点に挙げて、「多くの点で1968年の大統領選が戻ってきたようだ」と指摘した。

 

 反戦運動の高まりは、大学キャンパス内で激しさを増しているイスラエルのガザ攻撃に抗議する動きを指す。デモ参加者はイスラエルを支援するバイデン大統領を「虐殺ジョー」と呼び、厳しく非難している

 

 1968年の反戦運動の「標的」がジョンソン大統領であったように、今回の抗議運動の「標的」はバイデン大統領だ。

 民主党支持層では若者らが左派的な志向を強め、党内の分断につながっている。再選を目指すバイデン大統領は、液化天然ガス(LNG)輸出の新規許可の凍結など環境保護政策を打ち出して左派勢力のつなぎ止めを図っているが、これまでの予備選では「支持者なし」を意味する「uncommitted」に投票する動きが加速している。

 

 さらにバイデン大統領の支持率の低下は深刻だ。

 米国の世論調査会社ギャラップは、四半期ごとの大統領の支持率の平均値を発表しているが、就任して13四半期目のバイデン大統領の平均支持率(2024年1月20~4月19日)は38.7%で、調査開始以降の歴代大統領の中で最低を記録した。

 

 1968年との共通点は他にもある。ロバート・ケネディ元司法長官の息子、ロバート・ケネディ・ジュニア氏は今回の大統領選に無所属で立候補している。当選の可能性は低いが、バイデン大統領の票を奪う存在だ。政界の名門、ケネディ家の数人がわざわざ集まってバイデン大統領支持を表明し、その場にバイデン大統領が姿を見せたのは、ジュニア氏への警戒感の表れだ。

 

 民主党の候補者を正式に決める今年の全国大会は、1968年と同じシカゴで8月19~22日に開かれる。シカゴ市当局は、再び「流血の党大会」になることを避けるために、デモ参加者が集まる場所を制限する条約を制定し、全国大会の会場周辺ではデモを行えないようにした。これに対し3つの抗議団体が、シカゴ市を憲法違反だとして連邦裁判所に提訴している。

 

 大学キャンパスでの抗議運動は党内左派の「バイデン離れ」を加速させるだけでなく、「国内に混乱をもたらしているのは、トランプ元大統領ではなくバイデン大統領だ」との共和党の主張を助長する恐れがあり、ひいては中道的な浮動層をバイデン大統領から遠ざける結果となるのではないかとの見方が広がっている。

 

 

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Taro Yanaka

街ネタから国際情勢まで幅広く取材。

専門は経済、外交、北米、中南米、南太平洋、組織犯罪、テロリズム。

趣味は世界を車で走ること。

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