米中、ともに傷深まる 株通貨は双方下落、中国は物価、米国は債券安 資金逃げ出す
高関税の応酬によって米中貿易戦争が激化する中、双方とも傷が深まりつつある。4月10日の外国為替市場では、人民元が対米ドルで17年ぶりの安値を付けた。一方、株価は米中を含め世界株安の様相。中国はデフレ入り懸念が強まり、米国債も値下がりしている。両国からの資本流出懸念が強まる中、日本企業にとっては取引先の再考も現実味を帯びてきた。
■中国株から資金流出、デフレも懸念
4月10日の外国為替市場で、人民元は一時1ドル=1ドル=7・351元台後半と、2007年12月以来17年4カ月ぶりの元安・ドル高を付けた。人民元は管理変動相場制で、中国人民銀行が毎朝発表する「基準値」の上下2%以内でのみ変動できる。この基準値が連日で元安方向に設定されたため、市場では当局が米関税に対抗するために元安を容認しているとの見方が強まった。
中国は物価も下げている。中国国家統計局が4月10日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.1%下落と、2カ月連続で前年割れした。デフレ圧力が強まっている。
中国のCPIの推移
(出所:国家統計局)
また、株価はベンチマークである上海総合指数が4月7日に終値3145.549と清明節の連休前の営業日だった4月3日から6%近く急落。4月10日には3223まで戻したが、前週の水準には届いていない。
上海と深圳の株式市場では一部銘柄と投資家に向けて香港市場との相互取引(ストックコネクト)を認めている。米ブルームバーグ通信の4月9日の報道によると、このストックコネクトを通じた中国本土からの香港株買いは同日、356億香港ドル(約6680億円)相当と1日当たりの過去最高額を記録した。中国から資金が香港へと逃げだしている様子が見て取れる。
ストックコネクトの日刊データ。4月10日分は香港株のデータが出そろっていない
(出所:香港証券取引所)
■米株安定せず、債券は中国との対立の場に
一方の米国は、4月10日の米国市場でダウ工業株30種先物が下げている。毎日のように乱高下し、不安感は強い。通貨は4月2日のトランプ氏による関税発表後は対主要通貨に対し弱含み、かつてのように株や通貨で米国が独り勝ちを続ける様相ではなくなった。資本が逃げ出し始めているとの見立ては増えている。
過去1年間のNY株の推移
注目すべきは米国債。4月9日のニューヨーク債券市場で長期債相場は3日続落し、長期金利の指標となる表面利率4.625%の10年物国債利回りは前日比0.04%高い(価格は安い)4.33%で終えた。
4月10日の日本経済新聞などが市場関係者の話として伝えたところによると、4月9日の米10年物国債の入札に中国は参加しなかったもようだ。中国政府が手持ちの米国債を大量に売却したとの指摘もある。中国が米国債を対米報復措置の一環に利用している可能性もあり、米国債の下押し圧力は強い。
過去3か月間の日本円に対する対ドルと対元相場の推移
日本円に対しては、米中通貨はともに下落し、日本円の押し上げ要因となっている。米中両国から逃げ出した資本が行き場を失い、日本に流入してくる可能性も残る。しかし、米景気の後退はもちろん日本企業にとってマイナスであり、中国製造業の低迷継続は製造業関連材料の需要減退に結び付く。日本企業は今後も難しい対応が迫られそうだ。
(IR Universe Kure)
関連記事
- 2025/08/05 50%関税でLME銅軟調、円高急伸で国内銅建値20円引き下げの1,470円に
- 2025/08/04 LME Weekly 2025年7月28日-8月1日 全面安、50%関税で軟化の銅に連れる
- 2025/07/28 LME Weekly 2025年7月21日-25日 米関税交渉進展期待もドル高などでCu小反落
- 2025/07/23 日米相互関税、自動車15% 対米80兆円投資へ、米輸入も一部開放・トランプ投稿原文
- 2025/07/18 鉱業企業、米上場相次ぐ 金鉱のオーラやニッケルのネックスメタルズ、人気はイマイチ
- 2025/07/15 中国GDP5.2%増 4-6月、不動産不況止まらず、米関税で製造業が不振・指標一覧
- 2025/07/08 米国、8月1日から輸入関税 日本25%、ミャンマーとラオスは40% ・税率一覧
- 2025/07/08 鉄鋼・非鉄関連会社の決算発表予日定一覧:最終版
- 2025/07/04 7月の世界経済 「運命の9日」で一変か 野村・高島氏 関税延長なら経済にプラス
- 2025/07/03 鉄鋼・非鉄関連会社の決算発表予日定一覧 :いつもより1週間程度早い