「アスベスト」処理の現状
アスベストという言葉を覚えている方はいるだろうか。
「奇跡の石」と呼ばれたこの素材は、かつて日本の建築物に必ず使われていたものだが、健康被害が著しく損なわれるということで、日本で規制が始まったのが2006年から段階的に使用が禁止されてきた。
近年はあまり聞かれなくなったこの素材だが、環境展で唯一見ることができたブースがあった。
主に、産廃やリサイクル原料などの運搬を行う大阪の運送会社、株式会社インターアクションだ。
同社に、現在のアスベストの状況について話を聞いた。
大量に手つかずになっている「レベル3」のアスベスト
同社によると、そもそもアスベストには様々な施工方法があるが、健康被害への度合いを示す施工方法については、レベル1~3が設定されているという。
それぞれ
・レベル1→天井などに吹き付ける工法
・レベル2→水道管への被覆材
・レベル3→壁材の一部として練りこませてあるもの(断熱材)
というものであるという。
2006年に騒がれたのは、このうちのレベル1であり、レベル1についてはすでに処理が終わっているが、問題はレベル3のものであるという。
この工法で作られた壁材は、解体の際に飛散しないように、割らずに解体、処理が必要だというが、実際は多くの業者が壁をたたき割るような解体方法が一般的となっており、このような状況から、解体作業には国への届け出のほかに、「石綿調査官」という資格を持った人間が、解体業者などを調査し、結果を行政へ報告。
このように、工事に対し、管理と監視が厳しくなった面から、手間と費用が掛かるようになり、日本国内でアスベストが多く使われた物件の解体が進んでいないという。
さらに近年では、少子高齢化の影響で空き家が多くなっており、その空き家のほとんどは、アスベスト全盛期に建てられたものも多く、今後さらにアスベスト処理の問題が増えていくという。
今なおアスベストを生産している「あの国」
アスベストの規制については、規制の厳しいアメリカなどから比べると、日本のアスベストへの規制はかなり後手に回っているという。
そんな中、いまだにアスベストを生産しているのが中国だという。現在でも、この「奇跡の石」と呼ばれるだけの能力を生かすため、同国ではいまだ作られているという。
一方東南アジア方面では、各国が規制を始めた以前のものについては使われた可能性はあるが、規制後の経済成長に伴う建設では、アスベストは使われていないだろうと話す。
いずれにしても、まずは国内のアスベスト問題を解決する方が先決であることは間違いないだろう。
(IRUNIVERSE Hatayama)
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