バナジウム市場近況2024#4 堅調 金属相場高の流れが波及、春以来の高値回復
2024年6月上旬までのバナジウム価格は堅調。五酸化バナジウム、鉄鋼向けのフェロパラジウムはともに4月下旬に底を打ち、5月は段階的に上昇した。銅や金の快進撃を背景とした世界的な金属相場の回復の流れが波及し、6月に入ってからもムードは明るい。
五酸化バナジウムは4月25日に仲値$4.735/lbと2016年末以来の安値を付けた。ただ、ここを底に反発し、5月30日には$5.32と3月半ば以来の高値を回復している。
過去3か月間の五酸化バナジウム価格の推移(V205 fob China)($/lb Vo205)
バナジウムは生産・消費ともに中国の比重が大きい。中国の5月発表の経済指標で輸入などの一部データが改善し、中国景気の減速に対する過度な懸念が和らいだ。特に中国で人気のバナジウムフロー電池(V2O5)への需要期待は根強く、Ferroalloynetによると、「主要な五酸化バナジウムフレークメーカーが6月の長期単価を引き上げたため、バナジウム市場全体が強い上昇ムードに包まれた」という。
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一方、鉄鋼向けのフェロバナジウムも4月18日に付けた仲値$25.875/kgが底となった。その後は段階的に上昇し、5月23日には$27.3に上昇。その後はやや上値は重いものの、$27台と4月上旬以来の高値圏にある。
過去3か月間のフェロバナジウム価格の推移(V78%min US$/kg EU)($/kg)
フェロバナジウムは鉄鋼の硬化に使われるが、中国の鉄鋼は伝統的にバナジウムが多く必要で、こちらも中国の内需回復期待が支えとなった。もっとも、こちらは「下流需要は弱く、高価格でのフォローアップ取引も少ない」(Ferroalloynet)といい、やや上値の重さも目立つ。
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5月15日
カナダのバナジウムメーカーであるラルゴ・リソーシズ(Largo)が5月15日に発表した2024年1-3月期決算は、最終損益が1300万ドルの赤字と赤字額が前年同期の120万ドルから大幅に拡大した。欧州と中国の鉄鋼向け需要の低迷が打撃となった上、メンテナンス費用もかさんだ。ただ、航空宇宙分野からの需要は引き続き強かった。
同社は米ナスダックとカナダのトロントの株式市場に上場する。ブラジルのマラカス・メンチェン鉱山でバナジウムを採掘している。同社は2023年12月期も最終赤字を計上していた。
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(IR Universe Kure)
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