週刊バッテリートピックス 「伊藤忠ゼロアヴィアに出資」「電池火災に注意喚起」など
2024年7月8日~7月15日のバッテリー業界では、国内勢の活発な新事業投資が目を引いた。伊藤忠商事が米ゼロアヴィアに出資。エレサーモが悪環境の鉱山での充電に成功するなど鉱業への朗報もあった。一方で、夏に増えるモバイルバッテリー火災には公的機関からの注意喚起があり、酷暑での電池の扱いが注目された。
<国内>
●夏の電池火災、製品評価技術基盤機構が注意喚起
NITEの注意喚起ポスター(一部)
(出所:NITEホームページ)
独立行政法人・製品評価技術基盤機構(NITE)は7月12日、夏に増えやすい製品事故の1つとしてリチウムイオン電池よる発火事故を取り上げ、注意を呼び掛けた。例えば夏の炎天下、温度が上がる自動車内にリチウムイオン電池搭載のモバイルバッテリーを放置し発火するなどが考えられるという。また、同じくリチウムイオン電池搭載の小型扇風機は、落下などによる衝撃で発火することがあるとした。
プレスリリース:真夏の製品事故アラート~モバイルバッテリー・携帯用扇風機・着火剤の取扱いに注意~ | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp)
バッテリー由来の火災は増えている。東京消防庁によると、2024年は1-6月に都内でリチウムイオン電池が使われた製品から出火した火災は107件と、前年同期より28件多かった。韓国で6月に20人以上が死傷する工場火災が起きたことも記憶に新しい。
米国ではバッテリーリサイクル材料のフル・サークル・リチウム(Full circle Lichium、FCL)が6月にリチウムイオン電池火災に特化した消火剤を開発したと発表するなど、対応への取り組みは進んでいる。
●東京都、ペロブスカイト型太陽電池に助成
東京都は7月11日、ホームページ上で、ペロブスカイト型太陽電池事業者に対する助成を始めると発表した。申請期間は7月11日にから2025年3月31日まで。4000万円を上限に実証事業に要する経費の3分の2を支援する。予算総額は1億2000万円。
プレスリリース:次世代型ソーラーセルの開発を支援|東京都 (tokyo.lg.jp)
●大阪ガスやみずほリース銀、蓄電池事業に参画
大阪ガスは7月11日、「みずほリース銀行、JFEエンジニアリング、九州製鋼の3社と共同で、系統用蓄電池事業に参画する」と発表した。
関連記事:大阪ガス、九州製鋼佐賀工場内に系統用の蓄電所設置 | MIRU (iru-miru.com)
●AESC、スペイン工場起工
中国エンビジョン傘下で車載電池のAESC(神奈川県横浜市)は7月11日、ホームページ上で、「7月8日にスペインのエストレマドゥーラ州に建設予定のリチウムイオンバッテリー・ギガファクトリーの起工式を行った」と発表した。工場は2026年に生産を開始する予定。
プレスリリース:AESC、スペインのナバルモラル・デ・ラ・マタにて バッテリー・ギガファクトリー起工式を実施 - AESC (aesc-group.com)
●エレサーモ、鉱山での充電に成功
東京工業大学発のスタートアップであるelleThermo(エレサーモ)は7月11日、「悪環境の鉱山での小型リチウムイオンバッテリー(LiB)充電に成功した」と発表した。室温以上の未利用排熱で電力を生みだす技術「半導体増感型熱利用発電(STC)」を活用した。
関連記事:エレサーモ、温度42℃、湿度100%の鉱山で発電・充電に成功 | MIRU (iru-miru.com)
●パナエナジー、米カンザス大と連携へ 電池向け人材育成など
パナソニック エナジーは7月10日、自社ホームページ上で、「米カンザス大学との間で連携に向けた合意書を締結した」と発表した。共同でリチウムイオン電池に関する次世代技術開発や専門人材育成を推進する。同社はカンザス州にリチウムイオン電池工場を建設中。
プレスリリース:リリース (panasonic.com)
●auリニューアブルエナジーなど、蓄電池事業開始へ 2025年から
auリニューアブルエナジーなど4社は7月10日、2025年度下期から蓄電池事業を開始すると発表した。24年12月にはKDDI小山ネットワークセンター(栃木県小山市)内で大型蓄電池設備の建設を開始する。
関連記事:蓄電池事業を25年度下期に開始へ、auリニューアブルエナジーなど4社が連携 | MIRU (iru-miru.com)
●京セラコミ、農業向け太陽電池発電のシェアリング開始へ
京セラ傘下の京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は7月9日、ホームページ上で、「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の提供を開始する」と発表した。太陽電池を搭載した農業用ハウスを農家などに提供する。KCCSが設置費用を負担し、「初期投資なし、月が設備利用料のみ」で提供。発生した電気を企業などに販売する。
プレスリリース:農業用ハウスへの初期投資ゼロで始められる「営農型太陽光発電」を開始|KCCS
●伊藤忠、米ゼロアヴィアに出資
伊藤忠商事は7月9日、航空機向け水素燃料電池エンジンの開発・製造を行うゼロアヴィア(ZeroAvia, Inc.、本社:カリフォルニア州)に出資したと発表した。出資額は明かしていない。また、アジアにおける販売代理店契約、および保守整備体制、空港インフラ、
水素インフラの構築を共同で推進する覚書を同社と締結した。
ゼロアヴィアは水素燃料電池エンジンで注目の企業。アメリカン航空が7月初めに同社のエンジン搭載機を購入したほか、日本航空も協業している。
プレスリリース: 航空機向け水素燃料電池エンジンの開発・製造を行うゼロアビア社への出資及び協業について|プレスリリース|伊藤忠商事株式会社 (itochu.co.jp)
関連記事: 週刊バッテリートピックス 「日本ガイシが台湾社に出資」「インドネシア初のEC電池工場」など | MIRU (iru-miru.com)
●ENEOSリニュ、再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業に採択
再生可能エネルギー発電所などの運用を手掛けるENEOSリニューアブル・エナジー(本社:東京都港区)は7月8日、「資源エネルギー庁が公募していた、再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業に採択された」と発表した。
関連記事:ENEOSリニューアブル、太陽光発電所に蓄電池併設の補助金 | MIRU (iru-miru.com)
<海外>
●米ジョビー・アビエーション、エアタクシー500マイル飛行に成功
米エアタクシーのジョビー・アビエーション(Joby Aviation Inc)は7月11日、ホームページ上で、「世界初の水素電気エアタクシーデモンストレーターの523マイル飛行に成功した」と発表した。ヘリコプターのような垂直離着陸の航空機で、水以外を排出しない次世代のエアタクシーだ。エアタクシーの開発は米空軍が支援する。
ジョビー・アビエーションは「空のテスラ」の異名を持つエアタクシー開発企業。
プレスリリース:Joby completes landmark 523-mile hydrogen-electric flight | Joby (jobyaviation.com)
●米上場のクリティカル・メタルズ、サウジの水酸化リチウム工場を親会社から取得
米上場のクリティカル・メタルズ(Critical metals)は7月9日、自社ホームページ上で、「親会社の米ヨーロピアン・リチウム(European Lithium)から、サウジアラビアで計画している水酸化リチウム処理工場の合弁計画を譲り受けた」と発表した。
関連記事:米上場のクリティカル・メタルズ、サウジの水酸化リチウム合弁計画を親会社から譲渡 | MIRU (iru-miru.com)
●中国山東省、リチウム電池産業を1000億元規模に育成へ
中国山東省政府は7月8日、ホームページ上で、リチウム電池産業の発展方針を発表した。2025年までに1000億元(約16兆円)超規模の産業に育成する。
関連記事:中国山東省、リチウム電池産業を2025年に1000億元超へ 「新・三種の神器」で育成 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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