週刊バッテリートピックス 「トヨタ福岡に新工場」「CATLが4年ぶり減収」など
2024年7月20日~7月28日のバッテリー業界では、日本勢の電池事業への邁進の一方、海外では電気自動車(EV)失速に伴う業績不振が相次いだ。日本勢ではトヨタが福岡に新工場を建設する計画が浮上。一方、中国CATLや韓国LG系の業績は悪化し、事業縮小の声も聞こえた。
<国内>
●トヨタ、福岡にEV電池工場新設へ
トヨタ自動車が福岡県にEV向け電池工場を新設する方針であることが分かった。NHKはじめ各メディアが7月26日に伝えた。
関係者の話によれば、トヨタは同県苅田町にある工業団地での新工場建設に向け用地取得などの調整を進めているという。生産した電池は、同県北部の宮若市にある宮田工場で生産するレクサスブランドのEV向けに供給する見通しだ。
トヨタは2030年にEVの販売台数を350万台まで拡大し、レクサスでは2035年に新車をすべてEVにする目標を掲げる。2030年までにEV関連に5兆円規模の投資を行うとしている。
●パナ、2040年には太陽電池で「どこでも発電所」 豪政府ともニッケル加工技術で協力
2040年の都市のイメージ
(出所:パナソニックHDホームページ)
パナソニックホールディングス(HD)の技術部門は7月25日、自社ホームページ上で、2040年の未来にありたい姿とその実現に向けた研究開発の方向性を示す「技術未来ビジョン」を発表した。
この中で、ペロブスカイト太陽電池を巡っては、従来は設置が困難だったビル側面やガラスなどへの設置を進め、「どこでも発電所」を目指す。また、水素材料の低価格化や電力リサイクルに取り組むほか、全個体電池の開発も加速する。
パナソニックは、傘下のパナソニックエナジーが7月19日、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)と、新たなニッケル鉱加工技術の開発を目的とした共同開発に関する契約を締結したと発表したばかりだった。
関連記事:パナソニックエナジー、CSIROと新たなニッケル鉱加工技術の共同開発へ | MIRU (iru-miru.com)
●東京海洋大、純燃料電池船に船舶検査証書
東京海洋大学(東京都港区)は7月24日、「同社の二酸化炭素(CO2)を排出しない純燃料電池船である小型実験船『らいちょうN』が、日本小型船舶検査機構から船舶検査証書を取得した」と発表した。
関連記事:CO2排出しない純燃料電池船に船舶検査証書、東京海洋大学 | MIRU (iru-miru.com)
●古河電池、アドバンテッジが買収へ 1株1400円
鉛蓄電池大手の古河電池は7月23日、自社ホームページ上で、「投資ファンドのアドバンテッジパートナーズによる買収を受け入れる」と発表した。アドバンテッジが関連ファンドを通じ1株当たり1400円で古河電池に対し株式公開買い付け(TOB)を実施する。親会社の古川電工とアドバンテッジもそれぞれ詳細を発表した。
関連記事:古河電池に投資ファンドのアドバンテッジがTOB実施へ 1株1400円 | MIRU (iru-miru.com)
プレスリリース:pdfFile.pdf (furukawadenchi.co.jp)
プレスリリース:子会社株式に対する公開買付けに係る契約の締結および連結子会社の異動(予定)に関するお知らせ (furukawa.co.jp)
プレスリリース:|ニュース|株式会社アドバンテッジパートナーズ|Advantage Partners
●丸紅など、「タイヤ電池」実証実験
丸紅は7月22日、「使用済みタイヤをリサイクルしてできる次世代型蓄電池『タイヤ電池』の開発に取り組んできたルネシス(佐賀県みやき町)などタイヤ電池プロジェクトに加盟する18社が、この電池を搭載した街路灯の実証試験を始める」と発表した。
「タイヤ電池」を街路灯で実証試験、丸紅など | MIRU (iru-miru.com)
●住友商事、EVと系統を接続 日本初
住友商事は7月19日、「EVを電力系統に接続し、電力の需給調整市場に貢献する取り組みを行う」と発表した。同様の取り組みは日本初。
関連記事:住友商事、EVと系統を接続し需給調整市場に貢献 | MIRU (iru-miru.com)
<海外>
●中国CATL、中期4年ぶり減収
(出所:深圳証券取引所)
車載電池の世界最大手である中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が7月27日、上場する深圳証券取引所で発表した2024年1-6月期決算は、売上高が前年同期比12%減の1667億元(約3兆5500億円)、純利益が11%増の228億元と減収増益だった。1-6月期の減収は4年ぶり。
プレスリリース(中国語):深圳证券交易所-公告正文 (szse.cn)
●韓国LGエナジー、中期58%減益
韓国電池大手のLGエネルギーソリューションが7月25日、自社ホームページ上で発表した2024年1-6月期連結決算は、売上高が前年同期比29.8%減の6兆1,619億ウォン、営業利益が57.6%減の1,953億ウォンと大幅な減収減益だった。営業利益には、米インフレ抑制法(IRA)税額控除の見込額4,478億ウォンが含まれており、これを除いた場合の四半期営業損失は2,525億ウォンだった。
同社は通年の業績予測を下方修正し、2024年の連結売上高を前の期比20%超減少すると予想した。
プレスリリース(英語): LG Energy Solution Releases 2024 Second-Quarter Results – LG Energy Solution (lgensol.com)
同社を巡っては、米アリゾナ州での新工場建設を中断したとも伝わる。
●韓国セビットケムに身売り観測
韓国大手LIBリサイクラーであるセビットケムが身売りを検討しているようだ。同社の発行済み株式を巡り、筆頭株主の朴ヨンジン経営本部長の持分の半分ほどを私募ファンド(PEF)に売却するとの憶測が7月22日に浮上した。
関連記事:韓国大手LIBリサイクラー・セビット社が身売りを検討中、ソンイルも大赤字! | MIRU (iru-miru.com)
●米NY市、粗悪バッテリーを下取り 火災増加で
米ニューヨーク市は電動自転車やバッテリーの下取り制度をスタートさせる。エリック・アダムス市長が7月22日、記者会見して発表した。粗悪なバッテリー由来の火災増加に対応する。
関連記事:Americas Weekly 28 NY州、市が相次いでリチウムイオン電池対策 知事「無謀なメーカーの責任を追及」 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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