株急落4451円安 米経済の不安定化が影響・川上氏 8月の世界経済は頭打ち

日経平均株価の8月5日終値は3万1458円だった。下落幅は4451円(12%安)とブラックマンデーを上回り、過去最大となった。金融アナリストの川上敦氏は8月3日に開いた定例セミナーで「米景気不安が日本株売りを誘発した」と指摘。「秋口にかけ米景気のクラッシュが本格化すれば日本株にも影響する」と警戒した。
■日本株、リスクなお高く 円安バイアス再燃の兆し
過去1年間の日経平均株価の推移
川上氏によれば、今回の日本株の下落は米株安に追随したもの。米株にさすがに割高感が出て下げたところに日銀が利上げしたことで、ろうばい的な売りが生じた。川上氏は「世界株式指標も5-6月とプラスで、揺り戻しは出やすい状況だった」と指摘。インテルの大規模リストラが伝わるなど、今後、秋口にかけて米景気の不安定さが一段と露呈する可能性があり、「その場合は日本株の調整も長引く」として、「当面のリスクは高い」と話した。
日本株の裁定残
ただ、裁定取引残が拡大したことから投資マインドは冷え込んでいないとも指摘し、秋口のクラッシュを経て「年末に向け再度上昇する場面はありそうだ」と予想した。
過去1年間のドル円相場の推移
一方、為替については、8月いっぱいは現水準の1ドル=140円台程度の水準が続くとみる。川上氏は円安が進んで1ドル170円、200円との声が上がっていた時も、ドル円マネタリーベースの落ち着きを背景に、一貫して円安一服を予測していた。
現状について川上氏は「日米金利差の拡大がピークアウトし、ずっと売られてきた円に下げ止まる理由ができた。マネタリーベースは横ばいが続いており、金利差で売られてきた分に修正が入っている状態だ」と指摘した。ドル円相場と実質国内総生産(GDP)の動きはおよそ3年のタイムラグを経て影響が出るため、「現在の円高への揺り戻しは3年後の日本経済にプラスになっているかもしれない」とも予想した。
ただ、「数十年ベースでみるとやはり異常な円安」(川上氏)であるのに変わりはない。川上氏は「投資家の円売りポジションは続いており、円安バイアスは再燃の兆しがある」と懸念した。
円の売買ポジション
■米雇用悪化が世界経済の重荷に
世界経済全体は、8月は頭打ち感が強まりそうだ。消費主導で好調だった米国で失業者が増えており、「ちょっと悪くなってきた」(川上氏)。米国では雇用の悪化を背景に消費者心理が膠着状態となり、設備投資や銅工業生産も既にピークアウトして緩慢な鈍化を始めている。
更に悪いのは中国経済だ。川上氏は「政府が一生懸命支えているが、実際はかなり景気が悪い」とみる。中国は国債価格も急落しており、川上氏は「完全にデフレに陥っている」と話した。
ユーロ圏は横ばい。一時やや持ち直したがその勢いも沈静化した。商品市況は、「銅相場は世界経済の波乱を先行する形で上下している」(川上氏)。金相場はロシアや中国などが米ドル建て外貨準備の代替として金を購入する動きが下支えし、今後も堅調な動きが続きそうだ。
川上氏運営の山澤企画:株式会社 山澤企画 Yamasawa Planning Limited
(IR Universe Kure)
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