Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.82 ロシア向け禁止措置後の中古車輸出(1):ロシア向けは減ったのか
前回の記事(vol.81)の執筆のタイミングで日本政府がロシア向けの自動車輸出の禁止措置を発表した。前回の記事から1年ほど経ってしまっているが、今回はその後、ロシア向けの中古車輸出がどうなったのかを確認したい。
まず、ロシア向けの自動車の輸出等禁止措置の対象品目を確認したい。これは2023年8月2日に公布された輸出貿易管理令の一部を改正する政令(政令第二百五十二号)および輸出貿易管理令別表第二の三の規定に基づき貨物を定める省令の一部を改正する省令に規定されているものであり、同年8月9日に施行されたものである。具体的には表1の品目が禁止措置の対象となっている。
これを見ると、バスの全ておよび乗用車、貨物車の一部は対象となっていない。よって、禁止措置の施行後もそれらの対象外のものは輸出されていることは想定される。
なお、少々細かい指摘だが、乗用車はガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車ともに1900cc以下のものは禁止措置の対象外であるのに対して、貨物車はディーゼルエンジン車のみ1900cc以下のものが対象外である。つまり、ガソリンエンジン車は1900cc以下であっても禁止措置の対象である(具体的なHSコードは8704.31)。その理由は定かではないが、一覧表を示した経済産業省の資料(経済産業省,2023)およびそのアップデート版(経済産業省,2024)、さらに「輸出貿易管理令別表第二の三の規定に基づき貨物を定める省令の一部を改正する省令」を見ても確かに8704.31は禁止措置の対象で、輸出できないことになっている。
表 1 ロシア向け輸出の禁止措置(バス、乗用車、貨物車)
出典:経済産業省(2023)より作成
図1はロシア向けの中古車輸出台数を月別に算出したものである。これを見ると、確かに2023年8月に数量は急減している。前年と比べると、2023年8月から12月までは半分程度(各月の対前年比は50%台)に減少している。図にはないが、2021年の各月と比べても少ない。
2024年になると、多少は前年に近づいており、4月の対前年比は96%にもなっている。数量的には2024年4月がピークであり、5月、6月は若干落としている。また、2022年と比べると3月~5月は2024年のほうが多いが、6月は2022年のほうが多い。禁止措置によって対象外の品目にシフトしていることは想定されるが、全体として禁止措置以前の水準には到達していない。
図 1 ロシア向け中古車輸出台数の月別推移(バス、乗用車、貨物車の合計)
出典:財務省貿易統計より作成
(次回では品目別に数量を示す)
参考文献
- 経済産業省(2023)「外国為替及び外国貿易法に基づく輸出貿易管理令等の改正について(ロシアの産業基盤強化に資する物品の輸出禁止措置)令和5年8月2日」
- 経済産業省(2024)「外国為替及び外国貿易法に基づく輸出貿易管理令等の改正について(ロシアの産業基盤強化に資する物品の輸出禁止措置及びロシアを原産地とする非工業用ダイヤモンドの輸入禁止措置)令和6年4月5日」
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阿部新(Arata Abe)
山口大学 国際総合科学部・教授
2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。
同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授
2020年より同大学国際総合科学部・教授
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