米、韓国のタングステン休眠鉱山を視察 24年中に再開か、中国依存の低減を視野
カナダの鉱山会社アルモンティ・インダストリーズ(Almonty Industries)は8月28日、自社ホームページ上で、「米地質調査所(USGS)傘下の国立鉱物情報センターの調査団が、韓国のタングステン鉱山である上東鉱山を訪問した」と明かした。タングステンは中国が生産を独占しており、韓国産の入手で中国依存低減につなげる意図があるとみられる。
■中国以外の5割を生産
米ニュース放送局CNBCの記事を自社ホームページに転載する形で明らかにした。米国からは4人の鉱物資源学者が、国立鉱物情報センターの副所長であるショーン・シュン(Sean Xun)氏が率いる調査団として上東鉱山を訪れ、鉱山再開発事業の進行状況全般を視察した。
アルモンティはかねて2024年の鉱山再開目標を公表しており、「稼働すれば中国以外の世界の国々のタングステン生産量のうち50%程度を生産することができる」としている。
■1994年から閉山もカナダ鉱山会社が再開準備
上東鉱山は韓国南部、ソウルの南東に位置する 1916 年開坑の古い鉱山だ。1945 年の韓国独立までは日本のソリム鉱山会社が運営し、第一次・第二次大戦中の製造業需要の拡大に伴い活況を呈した。しかし、その後は中国の市場開放とともに中国産タングステンの輸出が始まったことで価格競争に敗北し、1994 年に閉山した。2001 年から韓国の鉱山会社により再開準備が進められてきたが、権益の移転を繰り返し、現在はアルモンティが運営する。アルモンティは2020年に上東鉱山再開のための完全子会社を設立し、既に1億2500万ドル(約180億円)ほどを投じた。
タングステンは大規模な鉱石埋蔵が中国やロシアに遍在するため、現在は世界の生産量の8割を中国産が占める。小規模鉱山は他の国にもあり、日本でも1900年代前半まではタングステン採掘が行われていた。ただ、それも閉山し、現在はタングステン加工物の形で、多くを中国からの輸入に頼る。
事情は米国も同様で、2015年以降はタングステンを生産しておらず、純輸入国だ。
(出所:JOGMEC)
タングステンは現時点では中国の外交カードにはなっていない。しかし、CNBCによると、市場関係者の間では、「8月半ばのアンチモンの輸出規制発表を受け、次はタングステンではないかとの観測は強まっている」という。特にタングステンは「キラーメタル」の異名を持つとおり、古くからミサイルなどの兵器に使用されてきた。
韓国の中央日報は、「アルモンティは、米側は上東鉱山の生産再開が至急だと強調した」とも伝えた。
(IR Universe Kure)
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