LME亜鉛価格が1年8カ月ぶり高値 豪鉱山で山火事、鉱石不足懸念に火
亜鉛市場で供給ひっ迫懸念が強まっている。ロンドン金属取引所(LME)の現物価格は10月23日に$3165.5/tonと2023年2月以来およそ1年8か月ぶりの高値を付けた。オーストラリアの鉱山が山火事で一部操業を停止することをきっかけに、原材料の供給懸念が一段と意識されている。
■現物価格が先物上回る、買い占め行動発生か
過去3年間のLME亜鉛価格の推移($/ton)
10月23日のLME亜鉛の3カ月先物価格は$3130.5/tonで、現物価格を下回った。これは現物需要が増していることを示し、亜鉛鉱石の買い手がすぐにも在庫を確保しようとしている動きを示す。
実際、10月24日の米ブルームバーグ通信によると、過去1週間以内に、1人の個人バイヤーがLMEの倉庫ネットワークで容易に利用可能な亜鉛在庫の50%から80%を取得した。また、先物市場では、ある事業体が主要な11月受渡し亜鉛契約の少なくとも40%を買い占めたという。
■豪鉱山、山火事で11月半ばまで停止
亜鉛の買い占め行動のきっかけの1つにあるのが原材料となる鉱石の供給減少懸念だ。南アフリカの貴金属企業であるシパニー・スティルウォーター(Sibanye Stillwater Ltd)は10月18日、自社ホームページ上で、「所有するオーストラリアのセンチュリー亜鉛鉱山の一部機器が山火事で破損し、操業を11月16日まで停止する」と発表した。これにより、同社の2024年10-12月期の亜鉛生産量は、当初目標を下回り9680トンにとどまる見通しとなった。
亜鉛はかねて鉱石不足に悩む。価格低迷を受けた2023年のプロジェクト遅延や相次ぐ鉱山の操業停止などを受け、「鉱石不足の地金余り」と呼ばれてきた。中長期に見れば鉱石不足は和らぐ可能性があるものの、シバニーの操業停止で、鉱石不足が一段と意識された面がある。
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■採掘企業が銅に殺到、他の金属は鉱石不足に
一方、中国をはじめとする世界景気の減速が続く中、亜鉛の最終製品の需要も本格的には回復していない。このため、目下、注目が集まっているのは亜鉛精錬所の採算の問題だ。冬の電気代上昇が予想される中、欧州の亜鉛製錬所が減産に踏み切る可能性も取りざたされる。
非鉄金属の原材料供給の混乱はアルミニウムでも見られる。やはりギニアでのボーキサイトの輸出停止が波及し、アルミナ価格が世界的に高騰、パニック的な様相となっている。
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世界の投資資金は脱炭素の方向とともに中長期の需要が見込まれる銅に傾き、採掘企業は他の金属から手を引きがちだ。このため、亜鉛やアルミといった金属には潜在的な原材料不足懸念が蔓延しており、山火事や輸出停止といった些細な出来事が、パニック的な買い占めと価格急騰に結び付きやすくなっている。
(IR Universe Kure)
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