シャープが提案する次世代技術~CEATEC 2024~
「AI-Powered Innovation」をテーマに、「Better QOL」、「Sustainability」、「Carbon Neutrality」の3つのゾーンにて、持続可能な社会と健やかなくらしの実現に向け、AI関連技術を中心とした先進のソリューションを提案されていた。
この中から3つのテーマについて紹介する
業界初、家電・住設機器で太陽光発電を最大活用する「Eeeコネクト」システム
シャープの「Eeeコネクト」システムは、家庭内でのエネルギー管理を新たなレベルに引き上げる革新的な技術である。
このシステムの最大の特長は、家庭用の家電および住宅設備機器に太陽光発電を効率的に活用できる点にある。通常、太陽光発電システムの電力は、住宅内での消費が行われると余剰分が電力会社に売電されることが一般的である。しかし「Eeeコネクト」は、エネルギー消費のタイミングを管理し、各機器が効率的に太陽光発電を最大限活用できるよう調整する。これにより、売電以上に家庭内での自家消費を優先し、電力の利用効率を大幅に向上させることができる。
このシステムは、AIを活用したエネルギーマネジメントが核となっており、各家電が必要とする電力量を予測し、最適なタイミングで稼働するように調整する仕組みだ。
例えば、エアコンや洗濯機、冷蔵庫などの消費電力の大きい機器が、太陽光発電による余剰電力が多く発生している時間帯に優先して動作する。
このタイミング制御により、エネルギーの無駄を最小限に抑えると同時に、家庭の電力コスト削減にも貢献する。また、蓄電池との連携によって、天候の変動に柔軟に対応し、電力供給が不安定にならないよう配慮されている点も画期的である。
今後、Eeeコネクトのようなエネルギー最適化システムが普及することで、各家庭が自らの電力消費をより一層管理しやすくなると期待されている。これは単なる家庭内の電力管理にとどまらず、電力供給全体に対する負荷を軽減し、持続可能な社会の実現に貢献するものである。
小型月着陸実証機「SLIM」に搭載、高効率・軽量・フレキシブルを実現した宇宙用太陽電池
シャープは、日本の宇宙開発を支えるため、次世代の宇宙用太陽電池を開発した。この太陽電池は小型月着陸実証機「SLIM」に搭載され、過酷な宇宙環境下でのエネルギー供給を担う役割を果たす。宇宙用太陽電池は通常、極限状態での高効率な発電能力と長期間の耐久性が求められる。
シャープが開発した新しい太陽電池は、その要件を満たしつつさらなる特長として軽量化とフレキシビリティを実現する。
この宇宙用太陽電池は、従来の技術と比較して、セルの効率を大幅に向上させている。セルの構造に特殊な薄膜技術を採用し、エネルギー変換効率を引き上げると同時に、軽量化を図ることに成功している。さらに、フレキシブルな設計により、着陸時や運搬時の衝撃にも耐えられるため、宇宙機器全体の設計の自由度も増し、月面着陸や探査の成功率が向上する可能性が高い。
この高効率・軽量・フレキシブルな太陽電池技術は、今後、さまざまな宇宙開発プロジェクトへの適用が期待される。特に月面や火星での有人探査が進むにつれて、持続的な電力供給の確保は、探査活動の成功の鍵を握る要素となるため、シャープの技術は宇宙開発における戦略的資産となるであろう。シャープの技術革新は、宇宙でのエネルギー利用をより実現可能なものとし、人類の宇宙進出を強力にサポートする。
農業用途向け半導体レーザーモジュール
農業分野でも、シャープの技術が活躍している。農業用途向けに開発された半導体レーザーモジュールは、植物の生育環境を効率的に管理するための革新的な技術である。従来、農業における照明や温度、湿度の管理は、外部の気象条件に左右されることが多く、生産量や品質に影響を与える要因となっていた。この新しいレーザーモジュールは、植物が光合成に必要とする特定の波長を精密に照射することが可能であり、効率的な成長を促進できる。
この半導体レーザーモジュールは、植物工場や温室などの施設内での使用が想定されており、天候に左右されずに安定的な作物生産を支える。特に、光合成効率を最大化するために最適化された波長の光を供給することで、植物の成長をより一層促進できる点が特長である。これにより、収穫量の増加だけでなく、品質向上も実現し、農家にとって経済的なメリットが期待できる。また、この技術は、通常の農業方法と比較してエネルギー消費が抑えられるため、持続可能な農業実践の一環としても注目されている。
レーザーモジュールの導入により、気候変動の影響を受けにくい安定的な農作物生産が可能になるだけでなく、消費者へ供給される食料の安全性や品質向上にもつながると考えられている。シャープの農業分野での取り組みは、単なる技術提供にとどまらず、持続可能な食料供給システムの構築にも貢献しており、今後の発展が期待されている。
(IRuniverse I.Yuta)
関連記事
- 2024/12/02 林地残材の活用促進でバイオマス発電の事業継続を―経産省小委員会
- 2024/12/02 出光 廃潤滑油のマテリアルR実現に向けプロセス構築と検証を開始
- 2024/12/02 元鉄鋼マンのつぶやき#71 企業倒産とパンドラの箱
- 2024/12/01 最近の一般炭と原料炭の価格推移(11/29)
- 2024/11/29 屋根設置型太陽光発電に導入支援策検討、国民負担増に懸念もー経産省小委員会
- 2024/11/29 国際粉体展のユニーク空気駆動機器・エクセン社・中央理化・Metso Japan
- 2024/11/28 低圧事業の集約へ、適格太陽光発電事業者認定の要件を修正―経産省小委員会
- 2024/11/28 環境省 プラスチック等資源循環システム構築実証事業の二次公募結果公表
- 2024/11/28 原油価格の動向(11/27)
- 2024/11/28 元鉄鋼マンのつぶやき#70 下妻物語