FREYR Battery (フレイル・バッテリー)、方針転換 「EV向け電池」から「米国の太陽光電池」へ
リチウムイオンバッテリー(Lib)セルを生産するノルウェー発、米国のフレイル・バッテリー(FREYR Battery(NYSE:FREY)は11月6日、自社ホームページ上で、「中国企業が運営していた米国の太陽光パネル組み立て工場を買収する」と発表した。北欧勢は大手のノースボルトが9月に大規模リストラを発表したばかり。先行きに影が差す電池から、経営多角化を急ぐ。
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■テキサス州の工場を520億円で取得
プレスリリース:FREYR Battery | FREYR Battery Announces Transformative Acquisition of…
フレイルは、中国民営企業の天合光能(トリナ・ソーラー)から、テキサス州の工場を買収する。買収金額は3億4000万ドル(約520億円)。現金1億ドルのほかにローン返済分などを含む。一方、トリノ側は転換社債(CB)などを引き受けて最終的にフレイルの発行済み株式のうち19.08%および子会社の権益を取得する。
手続き完了は2024年末の予定だが、11月1日から工場の一部で操業を開始した。製品の3割は米国企業向けに供給する。
■経営陣も刷新、太陽光に急転換
今回の買収は、フレイルにとっては「変革的」な方針転換と言っていい。フレイルは買収に合わせて経営体制も刷新し、最高経営責任者(CEO)を新たに任命したほか、複数の太陽光業界の出身者を経営陣に加えた。新体制で太陽光へのシフトを進める考えで、発表資料では、「次の段階は、米国に5ギガワット(GW)の太陽電池製造施設を建設することだ」と表明。既に工場敷地の選定に着手しており、2025年4-6月期に着工し、2026年上半期の操業開始を見込む。
つまりは、これまでのEV向けバッテリーから太陽光バッテリーへとかじ取りを変えたのである。従ってEV向けで雇用されていた社員もばっさり切られる可能性はおおいにある。
もちろん、電池事業を完全に捨てるわけではない。フレイルのダニエル・バルセロ新CEOは発表資料中で、「太陽光発電とバッテリーの国内製造能力は、エネルギー転換と雇用創出に不可欠です。米国はかつて太陽光発電の世界的リーダーでしたが、再びそうなる可能性があります」と述べた。
■中国企業側にも「欧州の衣」はメリット
欧州の電池業界は二重の意味で苦しい。まず、地域経済が停滞している。さらに電気自動車(EV)は中国勢に押されて地元メーカーが苦戦し、地元の電池企業にも影響が波及する。フレイルにとっては事業多角化と景気が好調な米国での事業拡大は急務だった。
一方のトリノは中国企業のうちでも米国進出が早かった企業の1つ。米国に足場はあるものの、トランプ次期政権が中国製品に対し厳しい目を向ける可能性が高まる中では先行きに懸念もあった。フレイルの陰に隠れる形で米国製品として生産し、米国事業を続けられることはメリットがあるだろう。
(IR Universe Kure)
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