リペア前提の製品設計でリユース促進を―環境省検討会
環境省は19日、「令和6年度使用済製品のリユースの促進に係る検討会」の第1回会合を開催した。今回の会合では主に論点の整理を実施。同省が提案した4つの論点に加え、「修理のしやすさ」の向上を含めた製品設計段階での政策検討をすべきという案が複数の委員から支持された。
8月に閣議決定された第五次循環型社会形成推進基本計画では、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済・社会様式につながる一方通行型の線形経済から、持続可能な形で資源を効率的・循環的に有効利用する循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を推進するという方向性が示された。その具体策の一つとして、製品の適切な長期利用やリユースを促進しながら、各地域で生まれた循環型のビジネスモデルを全国各地に普及させていくことが求められている。同検討会は、検討会では、リユースをはじめとした2Rビジネスを取り巻く状況整理をもとに、適正な使用済製品リユース促進に向けた方向性について幅広く検討していくことを目的として発足した。
会合では、環境省担当者がリユースを取り巻く環境や政府の取り組みについて説明をした後で、検討の論点として、①リユース品の回収・買取促進に向けた取り組みについて②リユース品の販売促進・より付加価値のある販売に向けた取り組みの促進について③リユース促進の観点で今後注目すべき分野・品目について④消費者が安心・安全にリユースできる環境整備について――の4項目を提案した。
これに対し、田崎智宏委員(国立環境研究所資源循環領域資源循環社会システム研究室室長)は新品の製品設計の段階での検討を5つ目の論点として加えるべきと指摘。「欧州では修理のしやすさや耐久性が重視されている」と考えを示した。
山川肇委員(京都府立大学大学院生命環境科学研究科環境科学専攻教授)はこれに賛同する形で、リペア(修理)の促進もリユース拡大に向けた重要な政策の一つとして位置づけた。さらには、「生活文化としての金継ぎやパッチワークを奨励し、リペアに注目してもらうことで、裾野を広げてはどうか」と考えを述べた。
また、リユースやリペアの障害となっている規制の緩和などを求める意見も複数見られた。同会合では冒頭に実施された業界関係者・地方自治体のヒアリングは非公開だったものの、その場でもリペアやリユースに関する規制の緩和・整備を求める声が多くあがったという。
EUでは今年7月に「修理する権利」を導入する指令を発効。▽法定保証が切れた場合でも、技術的に修理可能な製品は、修理依頼を受け付けるよう製造事業者に義務付け▽修理業者がスペア部品を適正な価格で入手可能とすことを義務付け――などを要件として定め、国主導でリペアをリユースを推進している。
国内でも現在の住環境やニーズに合致した制度の見直しが求められているといえる。委員からは「消費者の年齢に合わせたリユース環境をそれぞれ整備すべき」とする意見も聞こえた。
同検討会はこの後、25年3月までに2回の会合を経て取りまとめが発表される見込み。次回から本格的な議論に入ると想定される。
(IRuniverse K.Kuribara)
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