理化学研究所や東北大学、東京大学、住友化学らの研究グループは23日、強誘電性を示す鉛フリーハライドペロブスカイトの薄膜において、可視光域での巨大な光電流応答を観測したと発表した。同研究成果は、環境調和性の高い、次世代の光電変換材料の開発を加速するものと期待されるという。
今回、共同研究グループは、強誘電性を示すハライドペロブスカイトCsGeI3の高品質な薄膜の作製に成功。さらに、この薄膜において、電子波動関数の量子幾何学効果に由来する「シフト電流」が、既報物質を1桁以上上回る巨大な光電流応答を示すことを明らかにした。
具体的には、作製した薄膜試料に対し光を照射し、外部電圧を加えない条件で発生する光電流(無バイアス光電流)を測定。光電流は、CsGeI3 のバンドギャップに対応する約 1.6 電子ボルト(eV)から立ち上がり、2.9eV付近で符号が正から負へと反転。その後 3.0eV 付近で負のピークを示した。このような光電流の符号反転は、電極近傍の電場などによって生じる通常の光電流では説明できず、シフト電流に特徴的な振る舞いだという。
さらに、先行研究での第一原理計算によって得られたシフト電流のスペクトルと比較したところ、符号反転や負のピークなどの特徴が実験結果とよく一致。これらの結果から、本研究で観測された光電流がシフト電流であることが明らかになった。 また、薄膜に電場を加えて強誘電分極の向きを制御すると、電場の向きに応じて無バイアス光電流の大きさが可逆的に変化することも確認した。この結果は、観測された光電流が CsGeI3 の強誘電分極と密接に結びついたシフト電流 であることをさらに裏付けるものとなる。
今後は、薄膜の結晶性、歪み、強誘電ドメイン構造を精密に制御することで、シフト電流のさらなる増強や電場による光電流制御が期待される。鉛を含まない環境調和型材料としては、次世代太陽電池、次世代高速通信用検出器、テラヘルツ帯高速光電変換デバイス、非線形光学素子への応用展開も見込まれる。


(IRuniverse K.Kuribara)