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「和風サーキュラーエコノミー」で三方良し! サイクラーズ(株)福田社長

 120年の歴史をもつ東港金属の福田隆社長は、サイクラーズ(=循環するものたち)と名づけた持株会社を9月に設立。グループ体制をホールディングス制に移行させた。従来型のリサイクルから脱皮したサーキュラーエコノミーを実現するために本格始動する。同氏のリサイクル業界を俯瞰した新しい視野からのサーキュラーエコノミーや、サイクラーズが目指す戦略を聞いた。

 

 

■マルチサークルの時代へ

 福田氏は、これからのリサイクルは単体ではやっていけない。業界を超えて持てる資源と技術、アイデアをシェアしていく時代だと語る。それを裏付けるデータがある。2000年以降の市場規模を表す下図によると、リサイクル系業界は青線で示す通り無成長市場。対するリユース系は10倍以上の市場規模で成長している。

 

 

グラフ

 

 

 その上、国内の廃棄物は、産業廃棄物と一般廃棄物ともに減少傾向にある(下図)。

 

 

グラフ

 

 

 同氏は「減少傾向のリサイクル市場で同じパイを奪い合っても成長はない」としたうえで、リユース市場へ参入し、廃棄物を再利用(リユース)することでゴミを減らしCO2排出削減もできるとの考えを示した。

 

 そこで打ち出したのが、同社のホールディングス体制だ。同氏は「東港金属の老舗のイメージを一新し、自社にない技術力をもつ企業にも参加してもらいたい」と、AIやプログラミング、ケミカルといった技術をもつ企業との連携を視野に入れているという。

 

 

図

(東港金属を含む5つのリサイクル企業による持株会社)

 

 

 ただしそのやり方は、ホールディングス制の傘下に入るというものではない。「シェアリング経済」や「副業」といった新しい時代にマッチした形で、協力できる部分で連携し、他の企業とも自由に連携しあえる風通しの良いイメージだという。

 

 減少している廃棄物を横目に激増しているのが情報量。インターネットのトラフィック量とネット企業の時価総額ともに2000年と比べて1000倍以上に成長しているから驚きだ。同氏はAI技術をリユース業界にも組み込んでいく必要性を強調する。

 

 

グラフ

 

 

■和風サーキュラーエコノミー?!

 福田氏はAI技術と江戸時代を掛け合わせる「和風サーキュラーエコノミー」のような構想をイメージしている。

 

 欧州で先行するサーキュラーエコノミーについて同氏は、かねがね日本に合う方法は別にあるのではと考えてきたという。良く知られる話に江戸時代のリサイクル文化がある。モノを捨てず徹底的にリペアやリュースがなされ、排泄物まで捨てることなく活用されていた。当時の農家のことを言う「百姓」も、畑以外に多く(百)の副業(姓・屋号)を営んできたためといわれる。

 

 

図

 

 

 同氏は日本では副業でリサイクルに携わる人が増えて、それを現代のIT技術でつないだりするイメージを描く。欧州風の規制やルールによるものではなく、人々の生活の中に入り込むような「和風サーキュラーエコノミー」であれば、確かに身近に感じられそうだ。

 

 

■有望なリユース市場

 

 

図

 

 

 リユース市場についても開拓の余地が大きいという。CtoCのリユース市場はゲームやブランド品をメインに動いてるが、アプリを使ったメルカリの登場で市場規模が2倍近い2兆円にまで拡大した。BtoBの中古品市場では、中古品の新品比率が1~2%と低く、チャンスが眠っている可能性が高い。

 

 

図

(富士通総研HPより転載)

 

 

 同氏は、アマゾンがロングテールのマーケティングで成功したように、サーキュラーエコノミー業界でも、売れ筋だけでなくニッチな品目についても取り扱うことでゴミを減らせると説明する。

 

 「今よりもリユース量をもっと増やすことで、最終的に廃棄するものを減らす。どうしても出る廃棄物についても再資源化の技術力を高め高品質な再生材にしていきたい。そのためにケミカルなどのこれまでにない技術も取り込んでいきたい」と福田氏は展望を語る。

 

 新型コロナで事業縮小や廃業増えておりオフィス家具や厨房器具などのビジネス系の供給は増えている。需要は元々高いところでこのミスマッチを解消する試みが、同社の新たな事業展開となった。

 

 

■リユース業で気づいた強み

 福田氏は2019年、リユース事業を行うトライシクル(株)を立ち上げ、千葉の広大なヤードを拠点に着手した。トライシクルではオフィス家具や業務用機械など月間1000点を回収・整備し、アプリで再販するBtoBのリユース事業「ReSACO(リサコ)」を展開している。

 

 その中で福田氏は「自社にシュレッダーをもつ産廃業者はたいへん有利」ということに気づいたという。リユース品を販売しても販売できないものや売れないものは膨大で、通常は多額の処理費を払うことになるが、シュレッダー処理が自前でできれば物理コストを低く抑えることができる。資源リサイクラーや産廃処理業者がリユース業を行うメリットは大きいと語る。「古紙業者や非鉄商社も大きなポテンシャルがある。必要なのは始める勇気だけ」と同氏は述べる。

 

 

図

 

 

 人々の価値観がが“モノ”から“コト”へ移行する時代、モノを買って使って捨てるのではなく、また単なる3Rから脱皮した発想で、使用価値のあるものをリユースまたはシェアすることで、モノの稼働率を高めて無駄をなくすことができる。自動車業界でいわれるMaaS(Mobility as a Service)のように、AI技術を組み込めば、集めものからシェアやレンタル、リペア、転売などがオンライン上で展開するのも夢ではない。

 

 令和の時代に再び江戸時代を彷彿とさせる「和風サーキュラーエコノミー」が実現すると、廃棄物を減らして経済成長が可能になる。もちろんCO2排出も削減への貢献もできて三方良しとなる。

 

 持てる技術をITで結んでシェアする新時代へとGoToしよう! 福田氏の提唱する「和風サーキュラーエコノミー」がサイクラーズと一緒に展開することは間違いなさそうだ。

 

 

(IRUNIVERSE FukuiN)

 

 

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