近未来? 英企業、ロボシェフこと世界初の台所ロボットをお披露目

英国ロンドンに拠点を置くロボティック企業Moley Robotics社は、昨年末、世界初となる台所ロボットをお披露目した。Moley Robotics Kitchen(単にMoley、あるいはThe Kitchenとも)と呼ばれ、天井から設置されるこのロボット装置は、シェフの役割をこなす。そのレシピ数はなんと5,000以上にも及ぶとのことで、さらには、調理後の後片付けまで担当してくれるという。様々なメディアが驚きをもって報道している。
この革新的なロボットの開発者はMark Oleynik氏、49歳。Moley Robotic社のCEO及び創設者だ。ロシアのサンクトペテルブルグ出身で、2008年にロンドンへ移り、Moleyの特許は2014年に取得したそう。同氏はこの発明の背景について、「私のアイディアは、私自身が面白い料理が好きで、様々な国の料理を試してきたものの、十分には新しい食べ物を試せていないことに気付いたところから来ています。自分の選択肢は限られているのです。記憶力は良いのですが、その記憶を再現したいと思ったのです」と述べている。
「想像してください。ある日、ブラックボックスが出来たら、と。片側にお皿を入れると、もう片側から鶏肉料理が出てくるのです」と壮大な夢を語る同氏。ただし正確には、6年の歳月をかけて開発された今回のロボシェフは、まだ彼の究極の夢までは追いついていないようだ。「シェフのプロセスを再現することは非常に困難である」と語る同氏は、「準備の一連の流れは非常に複雑で、機械には感覚や匂いを感じることはできない」のだと言う。ただし、「非常に高い精度で指示に従う」ことは実現したのだそうで、つまり、即興でなんでも作れるというわけではないが、高度なプログラミング技術を使い、2017年時点ではカニのビスクしか作れなかったこのロボットは、今では5,000以上ものレシピの再現を達成している。
具体的には、使用者がタッチスクリーン上で食べたいものを選択すると、ロボシェフが仕事に取り掛かる。ただしこのロボシェフが行える下ごしらえは現時点では限られているため——例えば卵を割ることはできるが、ジャガイモの皮を剥いたり、人参をサイコロ状に切ったりというスキルはまだない——、こうした準備の一部は、ロボットが調理に取り掛かる前に、我々人間が行う必要があるとのこと。こうして食材を準備し、カウンターや、ロボシェフと連動しているスマート冷蔵庫(各食材をシステムが徹底管理、それぞれにとって完璧な方法で保存してくれるという)にセットするところまでが、我々人間に求められる部分だ。ちなみに、英テレグラフ紙には、「ロボットは料理の下ごしらえをしないのですか?」との記者の質問に対し、Oleynik氏が「下ごしらえをしてくれる会社は他にありますよ」と返答する様子が掲載されている。どうやらMoley社では、食材の下ごしらえのアイディアは現在開発中であるようだ。
それはともかく、Moleyチームは、尊敬するシェフにレシピを依頼するだけでなく、実際にそれらのシェフが調理している様子を撮影することで、例えば鍋を掴んで水を入れたり、材料を入れたり、かき混ぜたり、というような全ての動作をロボットが真似できるようにプログラミングしたという。
英テレグラフ紙の記者が実際に体験したところによれば、彼の選んだ魚のシチューの調理は、55分で出来上がったとのこと。ロボシェフはキッチンを上下左右に動き回るが、その動作は落ち着きはらっていて、丁寧かつ静かであったという。そして先に述べた最初の準備を除けば、調理中は我々人間が関わる必要はなく、調理過程を見ることなく全く別のことをしていても問題ないという。実際に出来上がった魚のシチューは、味も非常によく、魚、野菜の調理され具合も完璧であったと書かれている。ただし、人間のように一度に複数の調理を同時進行させることは、少なくとも現時点ではできないので、例えば前菜、メイン、副菜、デザート、というようにオーダーしたい場合には、食事が何時間にも及ぶ覚悟が必要だ。
もう1点、このロボシェフについて知っておくべきことは、彼はまだ完璧な洗い物(手洗い)はできないということだろうか。ただし、Oleynick氏によれば、「(お皿などの)表面をきれいにすることはできる」そうで、それを「食器洗い機に入れることもできる」というから、大きな問題はなさそうだ。
問題は、それよりも値段かもしれない。ロボット1体というよりは、家具、調理機器なども含めたこのキッチン設備そのものを購入する形になるようだが、お値段は24万8,000ポンド(約33万5,000米ドル)から。同社は今年後半からこのロボシェフの販売開始を予定しており、まずは10台の販売を考えているという。また、“資格のある販売の問い合わせ”に関しては1200件もあるといい、Oleynick氏は、価格を下げて低価格モデルを作る必要があると述べている。はじめは、その高額な値段から、客層が一部の新しい物好きな大金持ちに限定されることが想定されるが、同氏によれば、将来の顧客には、料理ができない人、あるいは本当に新鮮な食事へのアクセスを必要とするシニア層を考えているという。
以下リンクは、同社のロボシェフ紹介公式映像である。ご参考までに。
→ https://www.youtube.com/watch?v=ZUNdabZxY6w&fature=youtu.be
(A. Crnokrak)
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