国際海上輸送、海運会社好調も港のコンテナ滞留問題はまだ解消せず
海運大手の㈱商船三井(本社東京 橋本剛社長)は1月31日、2021年度第3四半期の決算を発表し、通期の売上見通しを400億円上方修正した1兆2600億円とした。これにとない配当も1株あたり150円上方修正した1050円となった。好調要因のひとつとして同社は、「コンテナ船事業における季節要因とサプライチェーン混乱の継続による積高の減少」をあげ、「運賃水準の下落は限定的」としている。荷物の取扱量は今後も増え続け、増益につながるとみているようだ。
海運会社が好調なのは、コンテナの滞留や船舶の遅延など、世界的な国際海上輸送がひっ迫しているからだ。コンテナ輸送のサプライチェーンにおけるリードタイムに乱れが生じる中、荷主は買い手の納期に間に合わせるため、通常より高いメニューを選ぶ傾向にあるという。
国際コンテナ輸送は2019年、米中貿易摩擦により新規コンテナの製造量が前年比で約40%減少していたが、追い打ちをかけるようにして2020年前半にはコロナウイルスの感染拡大により中国の生産活動が減少。これにともない米国向けの荷動きが低迷し、新規コンテナ製造量が大幅に減少した、しかし、年後半になると、感染対策を早めに実施した中国の生産活動が回復し、同時に米国も巣ごもり需要により生活雑貨品の需要が増加し始める。両国の影響により米国のロサンゼルス港とロングビーチ港では、コンテナヤード、トラック・鉄道内陸輸送などで人手不足や積み出し遅延などの混乱が起き始める。これが貨物や船舶の滞船や運行遅延に波及して、海上輸送運賃が増大。世界規模で海上輸送需給のひっ迫が始まった。
2021年になっても米国では、トラックドライバーやシャーシ、倉庫の空きスペースの不足が解消せず、滞船・船舶運航遅延が継続した。これを受けバイデン政権は同年10月、ロサンゼルス港とロングビーチ港の管理者に対し、港の24時間・週7日操業および、長く滞留しているコンテナに対してはペナルティを与えるよう要請した。だがこの要請は1月時点でまだ実施されていない。
野村総研の担当者によると、2020年末の世界の船腹量(船舶の輸送能力)は2350万TEU(20フィートで換算したコンテナの個数)となり、過去最高を記録した2015年を超える勢いだ。加えて国際航空貨物もコロナ以前と比較し20~30%増加。自動車、半導体、電子機器を中心に輸送転換が進んでいるという。
海上運賃は、先述のとおり2020年夏以降アメリカの西岸航路から運賃上昇がはじまり、11月に東西航路の混雑が発生し、世界的な運賃高になった。特に価格上昇が大きかったのは欧州航路で、後に日本航路、韓国航路にも影響を及ぼしていく。
コンテナ船の遅延により、電気・電子機器メーカーでは、取引先に対して納期の回答できず販売に影響が出るだけでなく、在庫調整も厳しくなっているという。自動車メーカーも同様だ。輸送遅延による部品不足を生産調整や在庫の積み増しでカバーせざるを得ず、場合によっては、航空輸送やスポット取引に頼ることもあるという。実際、2020年の全産業平均の売上高物流コスト比率は、前年より0.32ポイント上昇と過去最高の伸び高を示している。
JETROの担当者によると、現在のロサンゼルス港では、バース待ちが平均17.6日、荷降ろしで8日から9日、ターミナルからゲートを出るまでトラックで6日を要するという。ヤードには空コンテナが積み上げられ。ブッキングしても使用できない状況が続いている。
このような現状についてエネルギー取引の指標を提供するリム情報開発㈱の担当者は「ロサンゼルス港の1月末時点での滞船は50隻と一時の混雑は収まる傾向にあるようです。とはいえ、まだ多くの港ではコンテナの積み出しができておらず、在庫を大量にかかえています。この問題を解決するには、例えばどこか一つの港が一年間を通じて取り扱いが円滑に進むという実績を残す必要があります」と述べた。
JETROが示したロサンゼルス港2020年の取扱量:
年間取扱量は1732万6710TEU。月平均146万TEUに対し、12月21日は165万TEU。2020年の1月から4月にかけて減少したものの、5月以降はコロナ禍により予想外の上昇を見せている。この傾向が2020年の後半まで継続し海上運送のひっ迫がはじまった。
(IRUNIVERSE ISHIKAWA)
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