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イランの弾道ミサイル発射…核合意めぐりアメリカを恫喝か

 

 

 13日、イランが、突如、12発の弾道ミサイルをイラクのクルディスタン地域の中心都市・へウレル(エルビル)に撃ち込んだと伝えられた。住宅などが破壊され、現地のメディア、クルディスタン24は社屋が損傷したことを明らかにしている。

 

 アメリカ国務省は、抗議の声明を発表し、アメリカ側に施設への被害、負傷者などは生じていないとしつつも、このような攻撃の即刻中止を求めた。

 

 イラン側は、イスラエルの戦略的基地を攻撃したと発表した。”イスラエルの基地”はイランがこれまでも口実としてきたもので、クルド側は過去も噂の火消しに追われていた。今回も、クルディスタン地域前大統領マスード・バルザニは、シーア指導者にしてイラク政界の大物ムクタダ・サドルに”イスラエルの基地”について調査を約束した。イスラエルはクルディスタン地域産の石油などを輸入していることもあり、様々な支援を行っていることは事実だ。しかし、クルディスタン地域内に攻撃に値するイスラエルの拠点があるかは明らかにされていない。

 

 イランはこれまでも、クルディスタン地域内にミサイル攻撃を実施してきた。主な狙いはイラク領内に潜伏するイラン反体制派のクルド人とそれを匿うクルディスタン地域政府への恫喝であった。トランプ政権が革命防衛隊の対外工作部隊ゴドス司令官、ガーセム・ソレイマニを殺害してからは、その報復など、イラク領内のアメリカ関係施設を狙ったミサイル攻撃を実施してきた。そのため、今回もイスラエルを名指ししつつも、アメリカ領事館が狙われたことから、実際の標的はアメリカとみられる。

 

 折しも、アメリカなどはイランと核合意の再建を目指し協議を続け、合意まであと一歩というところまできていた。しかし、ロシアがウクライナ侵略という暴挙に出たことで状況は一変、EU外務・安全保障政策上級代表ボレルが”外的要因による中断”を発表した。合意文書の用意もほぼ完了したとされるところであったという。

 

 一方で、ロシアのウクライナ侵略は、欧米側の関係者が事態収拾に忙殺されることを除けば、直接、核合意を巡る交渉に影響を与えるものではない。事態を複雑にさせたのはロシアとイランの関係だ。ロシアはイランの仇敵の一つであったが、アメリカとの対立が深まる中、「敵の敵は味方」論理で同じくアメリカと対立する同国と接近していた。

 

 制裁により世界経済から切り離されようとするロシアは、戦費・物資調達のため、制裁不参加国との取引を加速させる。5日、ロシア外相ラヴロフは、イランとの貿易、軍事協力を制裁の対象外とするよう求めたと伝えられた。アメリカは、中国によるロシアへの武器支援疑惑に厳しい目を向けているように、対ロ制裁を無力化しようとする動きには断固とした態度で臨む構えだ。米メディアが、「核合意再建を危機にさらす要求」と論じたように、ロシアの動き次第では、欧米とイランとの交渉は水泡に帰す可能性もある。ロシアが欧米の痛いところを突いた形で、これが”外的要因”なるものの真意だ。

 

 ロシアが今味わう辛酸を数年に渡り味わってきたイランは、何としても核合意再建、その先の制裁解除に一刻も早くこぎ着けたいと必死である。今回、攻撃を実施したと明らかにしたのは革命防衛隊であり、外交交渉中の軍事挑発には前科がある。

 

 2019年、当時の日本の首相安倍がイランを訪問しているその時に、日本船籍のタンカーが攻撃を受けたのは記憶に新しいが、アメリカはその首謀者を革命防衛隊だとしていた。この時の大統領は”穏健派”のロウハニであったが、現在のイラン大統領は”保守強硬派”のライシだ。革命防衛隊の行動にはより寛容になっている。今回の攻撃後、政権に近いイランの学者は「これは始まりだ」と英語でツイートした。さらなる軍事挑発が続くのか注視される。

 

 攻撃目標として名指しされたイスラエルは、危機感をもって事態の推移を見守っている。前首相ネタニヤフは、このような攻撃の後に交渉を続けるなどばかげていると述べた。イスラエルは、イランが武力でアメリカに要求を呑ませた、という実績を作るのではないかと危惧しているとみられる。アメリカ共和党は、ミサイル攻撃を受け、イランとの交渉に復帰することないよう求めている。ミサイルを抜きにしても、イランは強力な交渉のカードを有する。アルジャジーラは、ロシア以外からのエネルギー調達の必要性は、イランを有利にすると論じた。バイデン政権は、ウクライナ危機の最中に難題を突き付けられた。ロシアの暴挙は、国際社会に思わぬ影響を広げ、安定を脅かしている。

 

 

Roni Namo

 東京在住の民族問題ライター。大学在学中にクルド問題に出会って以来、クルド人を中心に少数民族の政治運動の取材、分析を続ける。クルド人よりクルド語(クルマンジ)の手ほどきを受ける。日本の小説のクルド語への翻訳を完了(未出版)。現在はアラビア語学習に注力中。ペルシャ語、トルコ語についても学習経験あり。多言語ジャーナリストを目指している。

 

 

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