新着情報

2024/05/07   石原産業 運送費上...
2024/05/07   愛知製鋼:24/3...
2024/05/07   東京鉄鋼:24/3...
2024/05/07   中国 大原鋼鉄(T...
2024/05/07   加ファースト・クォ...
2024/05/07   東京製鐵の鉄スクラ...
2024/05/07   銅板輸出Repor...
2024/05/07   銅条輸出Repor...
2024/05/07   ニッケル輸出入Re...
2024/05/07   ニッケル輸出入Re...
2024/05/07   銅鉱石輸入Repo...
2024/05/07   コンテナ運賃動向(...
2024/05/07   精製銅輸出Repo...
2024/05/07   日中コンテナ荷動き...
2024/05/07   2024年3月(速...
2024/05/07   LME Weekl...
2024/05/07   5/29開催 第2...
2024/05/07   LME銅相場軟調も...
2024/05/07   2024半導体動向...
2024/05/07   2024半導体動向...

プラスチック諸問題解決に正答はない‥のか?④欧州ルールへの全乗っかり、待った!

プラスチック諸問題解決に正答はない‥のか?③根拠(原単位)なきリサイクル率」からの続き。

 

 EU(欧州)は、プラスチックに関して、海洋戦略枠組み指令や新循環経済行動計画、欧州プラスチック戦略など、さまざまな政策的枠組みを打出している。これらは時代を先取りした内容で、かつまたそこに高い目標値を設けて果敢にチャレンジしている。こうした姿に世界は畏敬を感じると共に、その苛烈な猛進に脅威さえ感じている。ある意味ガラパゴス的な思考の日本人にとって、それは顕著かもしれない。

 

 

サーキュラーエコノミーとプラスチック再生

図 欧州は非常に、概念的・観念的な事柄を言語化、ルール化するのに優れているといわれている。そんなEUが2015年12月に政策パッケージとして公表したのが「サーキュラーエコノミー(CE)」だ。これに関してはいまさら説明する必要はないと思うが、従来までの製造→使用(消費)→廃棄という線形経済から脱却し、使用済み品をリユース・リサイクルすることで、貴重な資源の無駄遣いを止め、再生利用(循環利用)を進めるというものだ。全世界は、いまこの経済モデルの構築へ向けて動いているといっていい。

 

 とはいえ、資源の再生・循環利用ということは、さほど目新しいことではなく、価値のあるマテリアル、特に金属関係は長い産業の歴史の中で連綿と続けられてきた。図は、有名なCEの概念図「バタフライ ダイアグラム」だが、この右側のループ(枯渇性資源)が主に金属類で、CEではリユースやリペアなどをより徹底する経済モデルとなっている。この部分には、これまで多くの研究と投資が行われ、確固とした市場(静脈産業)が確立されているが、問題は製品として資源の分離が困難なもの、そして低価値なものだ。

 

 プラスチックは、その特性や廉価性から、多くの用途に供されてきた。エンジニアリングプラスチックなどという高度な物性を示すものは高価だが、単純なプラスチックは大量生産、大量消費商材の素材に最適で、使い捨て製品の多くはプラ素材である。いわゆる容リプラを含む「ワンウェイプラスチック」がそれだ。

 

 そんな低価値の使い捨てプラスチックを、わざわざ循環利用する意味があるのか?原料である石油資源の枯渇を叫ぶ向きもあるが、再生利用するよりもバージン材を用いた方が、経済的には絶対的に優位だ。そのため使用済みプラスチック(PETのぞくプラごみ)は、日本であれば焼却(多くは発電・熱回収が行われる=エネルギーリカバリー)、アメリカや欧州の一部では埋立て処理されてきた。しかし、ここへきてプラごみは、絶対的に陸上で適正処理を行わなければならない必要性が出てきた。それが海洋プラ問題である。

 

 これもまた説明する必要はないと思うが、2016年のダボス会議で示された「なんの手も打たないと2050年には海洋プラは魚の量を超える」という衝撃的な報告と、さらに海洋プラはマイクロプラスチック化し、生態系を破壊するという問題がクローズアップされ、プラスチックの海洋流出を抑制するという機運が急激に高まった。

 

 加えて、脱炭素社会に向けた世界の大きな流れの中では、廃プラスチックを「単に」焼却するという選択肢も縮退せざるを得ない。廃棄物を徹底して削減しようとするCEは、これらのプラスチックの問題の解決にも大きく寄与するものと考えられた。

 

 

CEへの妄信は禁物

図 右図は、前記のバタフライ ダイアグラムの右側のループをプラスチックに当てはめた図をもとに、東京大学 中谷隼氏が一部加筆したものだ。

 

 「CEでは循環させるのに、なるべく内側のループが価値を維持できるものとしています。つまりプラスチックだと、まずリユース、その次にマテリアル(メカニカル)リサイクル、その後にケミカルリサイクルと続きます」(中谷氏)

 

 このリユースやリサイクルにおいては、なるべく同じ業種の中(内側)で繰り返し使うことが良いとされている。それは、すなわちPETのボトルtoボトルなどの水平リサイクルということになる。しかしこれを現実的に行うためには品質劣化の問題がネックとなり、それを防ごうとすれば使用エネルギー量が増えるため(PETのケミカルリサイクルなど)、 LCAを行った場合、そのリサイクル法がベストなのか、疑わしい場合もある。

 

 しかし、CEでのループはあくまで同業種内での再利用を前提としているため、エネルギーがかかってもケミカルリサイクルは「是」だが、他の形での有効利用、つまり焼却でのエネルギー利用は「否」ということになる。

 

 「樹脂(プラスチック)においては、EUが掲げるCEはそぐわない面も多いと思います。無理に内側のループを回そうとうれば、LCA的にはネガティブなケースも出てきます。そもそもEUのCEと日本が掲げてきた循環型社会というものは、少々性格を異にするものなのです」(中谷氏)

 

 この性格の違いというのは、EUのCEは「経済政策」という側面が大きいということだ。EUはこの新たな政策パッケージにより、より強い経済体制を築き、世界でのプレゼンスを高めようとしている。

 

 例えば、CEを行うことで、リサイクル施設数を4倍に増やす、また雇用を20万人生み出すなどの目標をたてており、これは循環経済推進による成長戦略といえる。EUは、なにも闇雲に環境ばかりを考えて政策を作っているわけではなく、その裏では、強い経済を作る、儲けることを前提にさまざまな施策を打ち出しているのだ。

 

 しかし、日本はといえば、やや宗教じみたCEの表の顔を見て、そのバスに乗り遅れまいと追随しようとしている。

 

 「産も官も、もしかすると学も、みなこのCEという新概念やEUの目標の高さに翻弄され、これに追随し同調していくことに必死のようです。というよりも弱気になり、腰が引けているようにも思えます。日本には日本のやり方があるのだから、政府も業界も自信を持って自分たちのやり方を模索してもいいと思います」(中谷氏)

 

 この4月から始まった「プラ新法(循法とも)」も、元はといえばEUのプラ処理に倣ったものだ。PETを除くプラ製品の一括回収が義務(努力義務)になったが、これはかなりな負担となって自治体にのしかかる。

 

 欧州では、資源物を一括回収して、それを種類ごとに機械的に選別する大規模な「ソーティングセンター」が一般的であるという。かたや日本では、資源物も消費者が分別を頑張っているから、そういった施設は不要になっている。

 

 また、仮に分別されず可燃ごみに混入して焼却されたとしても、その際に熱回収や発電という形でエネルギーリカバリー(ER)はされる。CEの概念では「焼却は悪」と刷り込まれているが、実は欧州でも多くERは行われているのだ。それでは何のための分別で、何のためのリサイクルなのだろうか。その資料はまた次回に示すとしよう。

 

 

(IRuniverse kaneshige)

 

 

関連記事

関連記事をもっと見る