帝人フロンティア、リサイクルシステム構築の取り組みを開始
~廃棄衣料品から再生ポリエステル原料へ~
帝人フロンティア株式会社(本社:大阪市北区、社長:平田 恭成)は、中古衣料品のリユースおよびリサイクル事業を展開するファイバーシーディーエム株式会社(本社:大阪府泉南市、社長:泉谷 康成)と共同で、古着の回収および選別と、廃棄衣料品の効率的なリサイクルによる、サーキュラー(循環)システム構築に向けた取り組みを開始する。
今回の取り組みは、ファイバーシーディーエムが有する国内外の古着の幅広い回収ネットワークと、リユースおよびリサイクルのための選別技術と知見に加え、帝人フロンティアが長年培ってきたポリエステルのリサイクル技術を活用し、廃棄衣料品から再生ポリエステル原料を作り出すリサイクルシステム構築を目指すものだ。
両社は、今回の取り組みを足がかりに、カーボンニュートラルに向けた衣料品のサーキュラーシステム構築と廃棄衣料品「ゼロ」の実現を目指す。
ファイバーシーディーエムのりんくう工場の内観
生産するリサイクルチップ
1.背 景
(1)国内では、年間約50万トンの衣料品がごみとして出されているが、そのうち再資源化されているのは約5%の2.4万トンのみで、ほとんどが焼却・埋め立て処理されている。(*) そのため資源の無駄使いや環境汚染の一因として問題となっている。(*)出所:環境省「サステナブルファッション」
(2)このような中、ファイバーシーディーエムは1982年に古着の小売りとして創業し、2004年には古着の受入から選別・出荷までの一貫した体制の工場を大阪府泉南市に立ち上げ、現在では年間約2億着(約5万トン)の古着を取り扱っている。また、古着のリテールショップを国内に展開するほか、アジアやアフリカ、中南米およびヨーロッパなどのリユースマーケット向けに古着販売事業を展開するとともに、ウエス(工業用雑巾)販売や、自動車内装材などに利用される反毛原料の供給といった再利用事業も手掛けている。しかしながら、培った技術・ノウハウを駆使しても、一部は廃棄せざるを得ないため、その廃棄衣料品の削減を目指していた。
(3)一方、帝人フロンティアは、1995年にリサイクルポリエステル繊維「ECOPET」の販売を開始するなど、長年にわたりポリエステルリサイクル技術を磨いてきた。本年5月には着色されたポリエステル繊維を石油由来の原料と同等の品質に再生することが可能で、かつ、環境負荷も低減した新しいケミカルリサイクル技術を開発するなど、循環型社会を実現する技術を構築している。しかしながら、効率よく廃棄衣料品から再生ポリエステル原料を作り出すには、回収からポリエステル製品の選別に至るシステムが必要だった。
(4)こうした中、両社は協議を重ねた結果、目指す方向性や課題が合致したためパートナーシップ契約を結び、回収した廃棄衣料品からポリエステル素材を使用した衣料品を選別して効率的に高品質な再生原料を作り出す取り組みを開始した。
2.今回の取り組みについて
回収した衣料品には、さまざまな素材が複合使用されていることも多いため、選別が難しく、また、染料などの異物が含まれていることが衣料品リサイクルの課題だった。これらの課題を解決するために共同で以下を実施、検証する。
(1)ファイバーシーディーエムは、契約するアパレルや小売りによる店頭回収に加え、自治体・企業からも古着を回収し、リユース・リサイクルヘ活用できない廃棄衣料品を選別する。その後、廃棄衣料品からポリエステル素材を使用している衣料品の効率的な選別方法を開発・検証する。また、回収した衣料品のリユース・リサイクル利用や廃棄衣料品およびポリエステル衣料品などへの選別の内訳を自社ウエブサイトで公開する。
(2) 帝人フロンティアは、ポリエステル素材が使用された衣料品からリサイクルチップを生産し、リサイクルポリエステル原糸・原綿の品質評価を実施する。
今回の取り組みのイメージ図
3.今後の展開
(1)2022年秋から、ファイバーシーディーエムが小売店などに衣料品の回収BOXを提供するなど、さらなる回収プロジェクトを開始。
(2)2025年までに、廃棄衣料品の選別と、その廃棄衣料品から再生ポリエステル原料生産への技術確立を目指す。
(3)将来的には、ナイロンや綿、ウールなど他の素材を使用した廃棄衣料品についても、持続可能なリサイクルを実現する仕組み構築が可能となるように、パートナー企業や国内外のコンソーシアムなどへ幅広く働きかけ、廃棄衣料品「ゼロ」の実現を目指す。
(IRuniverse.jp)
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