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日本化学会秋季事業 第12回 CSJ化学フェスタ2022 ノーベル化学賞解説

 公益財団法人 日本化学会主催によるCSJ化学フェスタ2022[実行委員長・加藤隆史(東大院工)/矢作和有行]が、2022年10月18日(火)〜20日(木)までタワーホール船堀で3年ぶりに対面で開催された。

 

 後援は文部科学省 / 独立行政法人国立科学博物館 / 国立研究開発法人科学技術振興機構 / 一般社団法人日本化学工業協会 / 公益社団法人新化学技術推進協会 / 国立研究開発法人産業 技術総合研究所 / 国立研究開発法人理化学研究所 / 国立研究開発法人量子科学技術研究 開発機構 / 国立研究開発法人物質・材料研究機構 / 江戸川区である。

 

 有料のフェスタ企画及び無料の公開企画で構成された。

 

 初日の10月18日(火)は、10:30からの開会式の後、ノーベル賞解説講演会が行われた。2019年のノーベル賞解説講演会では、吉野先生が自ら解説を行われたとのこと。

 

 

写真

 

 

 2019年後、2回はWEBでの開催となったが、第12回は3年ぶりに対面で行われた。しかしまだまだ制約があり、アクリル板を使用しているにも関わらず、マスクを外さないと決定をされたようで、写真撮影に苦労した。次の写真にあるように、なんとか、アクリル板がないかのように撮影できた。

 

 加藤 隆史教授(化学フェスタ実行委員会・委員長/東京大学 大学院工学系研究科)教授による主旨説明後、濱地 格(いたる)教授(京都大学 大学院工学研究科 合成・生物化学専攻)によるノーベル賞の解説がされた。

 

 CSJ化学フェスタは「産学官の交流深耕」と「化学の社会への発信」を趣旨として、東日本震災後の2011年から開催されている。第1回開催以来、会員はアカデミアとインダストリーが半々の新タイプの組織であり、昨年はオンラインで開催したが約3,500名が参加した。3年ぶりに開催される今年も、最新のトピックスを多数用意し、研究の進捗状況や課題、ビジネスへの発展可能性などの発表が行われている。今回は企画数34企画、企業ブース32社が出展した。

 

 

ノーベル化学賞2022『クリック反応の開発と生体直交性有機化学への展開』

濱地 格教授(京都大学 大学院工学研究科 合成・生物化学専攻)

 

写真

写真 右端:濱地 格教授  遠目には、棚町社長に似ている。

 ノーベル賞受賞者

 左からキャロリン・ベルトッツイ、モーテン・P・メルダル、バリー・シャープレス

 Carolyn R.  Bertozzi、 Morten  P.  Meldal、 K. Barry  Sharpless

 

 

 2022年のノーベル化学賞の受賞者に、さまざまな分子の結合を効率的に行う「クリックケミストリー」と呼ばれる手法の開発などに携わったアメリカの大学の研究者など3人が選ばれました。

 

 受賞が決まったのは、上記写真左からアメリカ、スタンフォード大学のキャロリン・ベルトッツィ教授、デンマーク、コペンハーゲン大学のモーテン・メルダル教授及びアメリカ、スクリプス研究所のバリー・シャープレス教授の3名である。

 

 濱地 格教授は、クリック反応の開発と生体直列性化学への展開というタイトルで講演された。

 

 分子の結合には、共有結合(covalent bond)と相互作用(interaction)があるが、シートベルトの“バックル”を締めるように、“クリック”と2成分を無駄なく、共有結合で簡単につなぐ反応とのこと。

 

 クリック反応は、二つの分子を一段階で簡単につなぐことの出来る画期的な化学反応として、開発から20年で幅広い分野で重用されるに至っている。熟練の化学者でなくても、単純な方法で複雑な分子を合成することができるようになったことが大きな成果だそうだ。

 

 ノーベル化学賞受賞の一人目のバリー・シャープレス教授の業績であるクリック反応は、発熱反応であり、80℃〜120℃で反応に長時間を要する。この反応の先駆者は、バリー・シャープレスではなく、分析化学に強いドイツの有機化学者であったロルフ・ヒュスゲン(Rolf Huisgen;1920年6月13日-2020年3月26日)が開発した1,3-双極子環化付加反応(ヒュスゲン反応)が、クリックケミストリーの中心的反応とされるアジド-アルキン環化付加反応の原型であるとのこと。ヒュスゲンは残念ながら2020年に亡くなられていることから、ノーベル賞にノミネートされなかったものと推定されている。

 

 バリー・シャープレス教授は、2001年に当時、名古屋大学大学院の教授だった野依良治(のよりりょうじ)氏と一緒にノーベル化学賞を受賞していて、今回が2回目の受賞となる。ノーベル賞を2回受賞した人はラジウムを発見した科学者で、「キュリー夫人」として知られているマリー・キュリーさんを含めあわせて4人でシャープレス教授は5人目となるそうだ。受賞理由は「キラル触媒による不斉反応の研究」であった。

 

 また、それを細胞などの生体系で適用できるレベルまでアップデートした生体直交性化学は化学と生物学の境界領域に応用され、新しい発見や分子ツール開発が相次いでいる。本講演では、シャープレス、メルダル教授によるクリック反応の開発がベルトッツィ教授の生体直交性有機化学へと発展した経緯を、解説した。

 

 ノーベル化学賞受賞の二人目のモーテン・メルダル教授は、デンマークの有機化学者である。コペンハーゲン大学教授。有機化学や生物有機化学、特にコンビナトリアルケミストリーやペプチドケミストリーにおける研究を行っている。クリックケミストリーの主反応である銅触媒下アジド-アルキン環化付加(CuAAC)反応の開発者である。しかし、濱地 格教授によると、彼も先駆者ではなく、これもドイツの二人の化学者が先駆者とのこと。これらを濱地 格教授は“温故知新”として表現し、古い反応であってもアップデートすれば、ノーベル賞をもらうことができることを、若手の研究員及び学生に伝えたいとした。温故知新とは、以前学んだことや、昔の事柄を今また調べなおしたり考えなおしたりして、新たに新しい道理や知識を探り当てることを言う。

 

 これらの技術は、プロテアーゼ阻害薬(抗HIV薬)、抗ウイルス薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤などに用いられているそうだ。

 

 ノーベル化学賞受賞の三人目ベルトッツィ教授は、クリックケミストリー・SPAAC反応の報告以前から「生体関連分子をつなげる化学反応」の重要性に注目しており、そのプロトタイプとして、3価リンとアジドの組み合わせに基づくシュタウディンガー・ベルトッツィ反応を報告しているとのこと。これをマイルストーンとして、生体分子がひしめき合う夾雑環境から影響されず、望ましい化学反応を実現できるような系を生体直交化学(bioorthogonal chemistry)と呼称し、新たな学術分野として発展させた。

 

 この生体直交化学反応を用いて人工色素を繋げることで、生細胞や生物の特定部分だけを、狙って染めあげることができる。2008年ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士による「緑色蛍光タンパク質 GFPの発見と開発」を使っても、生体分子の可視化(分子に目印タグを付ける。)そのものは可能です。しかし、遺伝子操作を必要とするため人体応用はしづらいこと、蛍光タンパク質のサイズに起因する機能影響を考慮しなくてはならないことなどが、懸念として指摘されていた。この欠点を、革新的反応化学の創出によって解決しようとした研究で、受賞した。クリックケミストリーの主反応である銅触媒下アジド-アルキン環化付加(CuAAC)反応は、銅によって活性化エネルギーを下げることを目的としたが、クリックケミストリー・SPAACでは、反応物のエネルギー状態を上げることで、反応を促進した。

 

 ノーベル賞は、何かの実験の失敗により現象を大きな発見をした例も多いが、ベルトッツィ教授は、最終目的を決め、20年間をかけ、生物学、その目標に向かって進んでいった一途の研究者であった。濱地 格氏が若いころ、もちろんベルトッツィ教授も若かったが、ポスターセッションで隣り合わせであったことがあるとのこと。当時から、存在感のある魅力的な女性だったそうだ。反応に1年以上かかったものを、短縮化した成果は大きい。

 

 最後に濱地 格教授は、学生及び若手研究員にメッセージを送った。

 

生物学・医薬学で活躍する有機化学

 There are plenty of spaces in multi-molecular and crowding biosystem which be explored by chemical biology.

 I believe such efforts should create a new research field of chemistry.

 

 

(IRUNIVERSE tetsukoFY)

 

 

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