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CSJケミカルフェスタ・産総研プラスチックのケミカルリサイクルへの挑戦

 日本化学会のケミカルフェスタが10月20日開催され、「10年後の有機化学を予測せよ」との講演ブースを午前中拝聴したが、何しろ聴講生は有機化学の国内のエキスパートの先生達のお話のレベルが高く、無機化学の筆者には非常に理解できない高度な内容であった。そんな中で産総研の中島裕美子さんのお話はプラスチックリサイクルで興味もあり、理解できる講演内容で、しかも現在世界中が抱えている廃プラの再生に関する講演であった。

 

 

図

産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センターが掲げる戦略課題

 

 

 日本の廃プラの処理法は、①マテリアルリサイクル、②ケミカルリサイクル、③サーマルリサイクルの3つが実際に行われている。但し日本がリサイクルしている3つの方法の内、サーマルリサイクルは、EUなどではリサイクルの定義としても評価されない手法である。

 

 にも拘わらず、最大のリサイクルがサーマルリサイクルと言われている焼却法が廃プラの何と60%を占めている。次のマテリアルリサイクルは22%で、ケミカルリサイクルは何と3%しか行われていないと中島さんは冒頭で説明した。

 

 今年新たにプラスチック資源リサイクル法が制定され、プラスチックのケミカルリサイクルの必要性が高まり、日本は2035年までに廃プラの100%リサイクルを目指している。その為には、現在僅か3%しか実施されていない廃プラのケミカルリサイクルの重要性を掲げて産総研は触媒化学融合研究センターが中心となって、PETの常温ケミカルリサイクルや難処理プラスチックのリサイクル技術開発を促進している。

 

 中村さんは、触媒化学融合研究センターのケイ素化学チームの研究チーム長で、HPでそのチームを紹介している。

 

 ケイ素化学チームでは、有機ケイ素材料を高効率・高選択的に製造するための触媒技術開発を中心に取り組んでいます。特に、平成24年度より10年間の計画で開始された経済産業省未来開拓研究プロジェクト「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」の推進を中心に研究を進めています。

 

 本プロジェクトでは(1)砂を原料に効率的に有機ケイ素原料を製造する触媒技術の開発、(2)有機ケイ素原料から高機能材料を製造するための、高効率・高選択的触媒技術の開発、の2つの課題に取り組んでいます。当チームは、ケイ素以外のヘテロ元素反応化学やベースメタル触媒の開発にも取り組んでおります。

 

 

テトラアルコキシシランを原料とする有用ケイ素化合物の合成

図

 

 

高機能ヒドロシリル化触媒の開発

図

 

 

 話をケミカルリサイクルへ戻すと、中島さんの説明では現在国内で実施されているPET to PETは不純物が含まれるため、将来困難になると説明している。その為PETのケミカルリサイクルを研究している。PETのケミカルリサイクルにはPET分解酵素が検討されている。具体的には、炭酸ジメチルを使って金属アルコシドを触媒として、65℃で80~90%分解できるとしている。

 

 また難分解プラスチックに関しては超臨界水を使用して220℃で分解する試みが川崎地区で年間2万トン処理が行われているとの紹介があった。

 

 難処理プラスチックのエンジニアリングプラスチックPPSは、年間1,000万トンの0.4%で4万トンと少量であるが、ヒドロシランとパラジウム触媒を使って150℃で89~99%分解が可能になると開発成果を示した。今回の講演は30分と短い発表時間の制約があったが、産総研を挙げて現在世界的にも遅れているプラスチックのケミカルリサイクル問題の解決に貢献すべく、研究開発を促進していると力強い講演内容であった。

 

 産総研のケミカルリサイクル技術領域では、固体触媒チームの他に触媒固定化設計チームと言う耳慣れないチームのあり、技術開発成果から実用化に至る過程の研究開発チームも活動している点が、研究所の研究成果を製造技術や実用化課題抽出にまで繋げないと社会のリサイクル要請に応えられないとの意識が国研を動かしていると感じた。

 

参考講演:「資源を有効活用する触媒合成化学」

中島 裕美子(産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センター・研究チーム長)

 

 

(IRuniverse Katagiri)

 

 

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