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アジア合成樹脂市況の近況(No15) 市況軟化基調が続く 国産ナフサは軟化

 アジア合成樹脂市況は5月に入り軟化基調にある。OPECプラスの協調減産の公表も原油市況が弱含みとなり、世界景気の不透明感や中国内需の弱さが影響している。アジア合成樹脂市況は当面、底這い基調となろう。国内市況に影響を与える原料ナフサ市況も下落基調にあり、国産ナフサ価格は4-6月に一旦、下げ止まるも7-9月には前四半期比15%前後の下落となる公算が高まっている。

 

ポリスチレンの横ばい以外は弱含みの展開

 

 アジア合成樹脂市況は2月中旬かけて中国の旧正月明け後の需要回復期待から、4月2日には「OPECプラス」が追加減産(5月から日量115万バレルへ)を発表したことで原油市況がバレル80ドル前後を回復したことが下支えに上昇に転じる時期もあったが、市況上昇は長続きせず、5月に入っては軟化基調が続いている。

 

 ポリスチレンの市況が唯一、3月末にトン1,260ドルと旧正明け後から約2.9%上昇した水準を維持している。原料のスチレンモノマーメーカーが定期修理も含め稼働調整をしていることを背景にエチレンやプロピレンなどの市況に比べ堅調に推移していることが要因となる。

 

 低密度ポリエチレンは3月末にはトン1,030ドルと高値から6.4%の下落となり、4月末にはトン1,000ドルまで下落、5月に入ると1,000ドルを割れ、直近ではトン960ドルに下落している。前年同期の水準と比較すると36%強安い水準にある。

 

 ポリプロピレンは1月末の直近高値のトン990ドルから3月末にはトン925ドルまで6.6%の下落した後、4月末にはトン950ドルとやや持ち直しとなった。ただ、5月に入ると軟調となり、直近ではトン895ドルと4月末比5.8%の下落となっている。中国での新エネルギー車の購入に対する補助金が打ち切りなど内需の低迷が影響しているが、前年同期と比べると23.2%の下落であり、ポリエチレンなどと比べると下げ幅は小さい。

 

 塩ビ樹脂のアジア市況は3月中旬以降、軟調な展開にあり4月末では850ドルと3月末比2.3%の下落となった。直近ではトン825ドルと緩やかな下落基調にある。市況軟化の背景は中国のインフラ需要の低迷があり、インフラ関連需要の堅調なインドがモンスーン期の不需要期に入る季節性もある。北米では春の需要期が2ヵ月程度遅延していたこともあり、今後のアジア市況への輸出圧力は限定的とみられる。

 

 

(注) IRUではアジアの合成樹脂市況インデックスは、多様なグレード取引形態や地域で異なるため、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂の価格を2020年の年初の平均価格を100として指数化している。2020年12月までを毎月末近辺の市況を対象に指数化し、2021年以降は週間ベースの市況を対象に指数化としている。新型コロナウイルスの蔓延の前と後での樹脂市況の違いを示すために基準時を2020年1月としている。

 

 なお、直近値は2023年5月第3週の市況となる。

 

国産ナフサ価格は4-6月には再上昇も、その後は急落の可能性も

 

 国内の樹脂価格は輸入ナフサ価格に2ヵ月遅れの平均価格となる国産ナフサ価格をフォーミュラとするため、市況上昇のタイムラグが生じる。国産ナフサ価格は22年4—6月にキロリットル86,100円と2008年7—9月期の同85,800円以来の過去最高値を約14年ぶりに更新した。その後、22年10—12月が72,500円とピークから15.8%の下落となり、23年1—3月は66,500円と前四半期比では8.3%の下落となった。

 

 海外ナフサ市況は「OPECプラス」が追加減産を表明した後もトン700ドル割れと上昇圧力は限定的であり、5月初め(7月入着分)にはトン600ドル割れとなり、5月中旬以降はトン570ドル~590ドルでの軟調な展開にある。

 

 4—6月の国産ナフサ価格は4月、5月入着分の高値が影響しキロリットル67,700円と前四半期比1.8%の上昇に転じると試算される。前年同期比では史上最高値からの比較となるため、21.4%の大幅な下落が予想される。7月の入着分の輸入ナフサ価格の平均価格、円相場ベースに試算した国産ナフサ価格はキロリットル当たり5.6万円前後と前四半期比17.2%の下落となる。5月中旬以降、円相場が1ドル138円台への円安が進行しており、ドルベースがトン590ドル前後の安値で推移しても、足元の市況ベースの国産ナフサ価格はキロリットル当たり5.96万円と試算される。いずれにしても足元の石化原料市況は先行き弱含みとなる公算が高い。

 

 国内樹脂価格は国産ナフサ連動のフォーミュラ(市況連動制)を採用しているが、エネルギーコストなどの付帯コスト高はまだ反映されていない。国内樹脂メーカーは3月以降、現在でも過去の未転嫁分に付帯コストを含めた価格是正交渉が続いている。海外市況が弱含みであり、樹脂加工サイドからは値下げ圧力があり厳しい価格交渉が続きそうだ。

 

 

 

 (叶 一真)

 

 

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