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Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.76最近の中古車輸出のデータから(6)ロシア

 前回(Arata AbeのELV RECYCLE Report vol.75最近の中古車輸出のデータから(5)主要仕向地の数量と単価)は、最近の中古車輸出台数について仕向地別に見て、ロシア向けが好調であること、ロシア向けやケニア向けの単価の変動が激しいことなどが示された。今回はロシアに焦点を当てて、最近の変化を見ておくこととする。

 

 まず、図1はロシア向けの中古車輸出台数の月別推移を見たものである。これを見るとロシア向けは常に好調だったというわけではなく、2022年3月から5月までは前年を下回っていたことがわかる。その後は前年を大きく上回る勢いである。直近の2023年5月は前年が少なかったこともあり、対前年比が201%となっている。

 

  

図 1 ロシア向け中古車輸出台数の月別推移

出典:財務省貿易統計より作成

 

 前々回では、仕向地全体の中古車輸出台数について品目別に見たが、そこでは3品目のガソリンエンジン車(1000cc超1500cc以下、1500cc超2000cc以下、2000cc超3000cc以下)にハイブリッド車を加えた4品目で70%強のシェアを占めていること、このうち現時点では1000cc超1500cc以下のシェアが最も高く、それにハイブリッド車が追い付く勢いであることなどが示された。

 

 これについてロシア向けでは、4品目の合計は仕向地全体よりもさらに高く、70%台後半~80%となっている。また、このうち、ハイブリッド車のシェアが2021年の時点で既に最も高くなっている。

 

 図2はこの4品目のシェアについて月別の推移を示したものである。これを見るとハイブリッド車は2020年11月の時点で1000cc超1500cc以下のシェアを上回っており、最多となっていることがわかる。しかし、その後のハイブリッド車のシェアは30%程度にもなることもあったが、前々回見たような右肩上がりではなく、直近は25%程度に下がっており、1000cc超1500cc以下と同程度となっている。年ベースで見ると、ハイブリッド車のシェアは2020年、2021年、2022年でそれぞれ23%、27%、28%であるが、2023年1月~5月は26%である。

 

 一方、1000cc超1500cc以下のシェアも前々回見たような減少傾向というわけではない。年ベースで見て、確かに2020年から2021年にかけてそのシェアは27%から23%に減少したが、2022年は26%と回復しており、2023年1月~5月も25%である。

 

 また、1500cc超2000cc以下のシェアは近年は減少傾向どころか、増加傾向にある。これらを考慮すると、ロシアの傾向は前々回示した仕向地全体の傾向とは若干異なっている。

 

  

図 2 ロシア向け中古車輸出台数の品目別シェアの推移(主要4品目)

出典:財務省貿易統計より作成

注:シェアは全体(バス、乗用車、貨物車)の中古車輸出台数のうちの各品目の割合を算出したもの。図中の4品目ともに乗用車である。「ハイブリッド車」はガソリンエンジン搭載のものである。

 

 図3はこの4品目についてロシア向けの月別の単価(金額/台数)の推移を示したものである。これを見ると、2000cc超3000cc以下のガソリンエンジン車の単価の急上昇が目立つ。具体的にこの品目は2022年4月に63万円であったが、同年10月には4倍を超える265万円となっている。この品目ほどではないが、これ以外の品目も同様の時期に急上昇しており、半年程度で2倍前後の上昇となっている。その後は2022年末頃から4品目ともに下降傾向に転じているが、元の水準に戻っているわけではない。

 

  

図 3 輸出中古車の品目別単価の推移(主要4品目、全て乗用車)

出典:財務省貿易統計より作成

注:「ハイブリッド車」はガソリンエンジン搭載のものである。

 

 中古車輸出台数の増加および単価の上昇の背景としては、日本国内の新車供給不足とそれに伴う中古車市場の需給ひっ迫、および円安ルーブル高の影響が考えられる。通貨ルーブルについては図4のように2022年2月下旬から3月にかけて一時的に下がった(円高ルーブル安となった)が、その後は上昇し、同年6月末には1ルーブル=3円ほどにまでなった。それ以降は緩やかに下がってきており、2023年6月は1ルーブル=2円ほどになっている。直近の7月はさらに下がっているようだが、いずれにしろ、中古車輸出台数の増加にはこの円安ルーブル高の影響はあるだろう。

 

 また、ロシア向けの中古車の輸出は増加傾向にある一方で、新車の輸出は止まっている。それまでロシア向けに毎月7千台前後の新車の輸出がされていたが、2022年4月以降は一部の月でわずかに計上されていたものの(2022年4月:957台、6月:17台、7月:1台、8月:1台)、新車の輸出台数は基本的にゼロであり、それは2023年も続いている。このようなロシア国内での新車不足が中古車輸出台数の増加に影響を与えていることが予想される。このようなことは自動車のみならず、家電など他の物品も想定されるだろう。

 

  

図 4 ロシアルーブル・円相場の推移(TTS、単位:円)

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「三菱UFJ銀行公表の対顧客外国為替相場」より作成

 

 

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阿部新(Arata Abe)

山口大学 国際総合科学部・教授

2006年一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。

同大学研究補助員を経て、2008年より山口大学教育学部・准教授

2020年より同大学国際総合科学部・教授

                                                                         

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