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自動車業界動向#9月  激震の中古車市場とウクライナの中古車最前線

 昨今叫ばれて久しい少子高齢化の影響はじわじわと足元を脅かしており、特に今後において市場を担うであろう若年層の人口減少はかなり厳しい状況となっている。

そんな中で激震を与えたのは、7〜8月に掛けて大きく報道された株式会社ビッグモーターの一連の不祥事であろう。
一方海外に目を向ければ、ロシアをよそに日本の中古車が受け入れられる近隣の国家があった。こういった諸々の事情を執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所のレポートを見ていく事にする。

 

押し寄せる市場縮小の流れ

 

 厚生労働省より2022年の人口動態統計が発表された。

それによれば、令和4年の出生数は770,747人と人口動態統計計測以来初めて80万人を割る事になった。

一方で死亡者は1,568,961人であり、出生数と死亡者の差は798,214万人となっている。

この数はほぼ佐賀県の人口と同じ程の数であり、一年の間にこれだけの人口が消え去ってしまったのである。

 

 

 この強烈な人口減少は、少子化問題もそうであるが日本全体の人口にも大きな影響を与える事となる。

例えば2000年には8622万人であった生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の数は、2022年には7496万人と1126万人、割合にして13%の減少である。

この年齢の偏りは免許の取得率にも現れており、2001年と2022年を比較し16歳から24歳の免許人口は303万人減少している。

その一方で65歳の免許人口は同期間で1180万人も増加している。

前者は5,475,823人、後者は19,462,156人。これだけ高齢化が進んでいるのだから、市場における若年層向けの訴求力はますます減っていく。

そもそもの人口減少もそうであるが、自動車産業に絞っても若年層のカルチャーとしての自動車が消えつつある。非常に由々しき事態と言えるだろう。

 

 

広がる中古車市場への不安

 

 中古製品というのはその大半が人の手で一度は使われた製品である。その為中古車というものは基本的に「誰かが使った車」である。

以前に利用者が居たからこそ、事故や欠陥があれば即座に命の危険に晒される可能性のある自動車という乗り物に対する安全性の確認は徹底的に行わなければならない。

中古車販売事業者はそれだけの業務上の責任を負っているのだが、それに強烈な冷水を浴びせる形となったのが株式会社ビッグモーターの一連の不祥事である。

(関連記事)ビッグモーター不正・不祥事総まとめと自動車リサイクル業界

 

 株式会社ビッグモーターは元をたどれば1976年に創業した「兼重オートセンター」という小さな自動車整備工場をルーツとしている。

1978年に法人化し、1980年に現在の株式会社ビッグモーターへと社名を変えているのだ。

その後は鈑金塗装工場、外国車販売店舗等の開設を経て2005年に大きな転機が訪れた。

関西地区の老舗の中古車ディーラーである株式会社ハナテンに資本参加する形で協力を申し出、これを機に全国各地のディーラーを吸収・合併、あるいは子会社化という形で傘下に収めていく。

その結果、株式会社ビッグモーターは従業員数6000名、全国300店舗以上(2023年5月時点)を抱える巨大企業に成長する事となった。

 

 しかし急激な店舗や事業の拡大というのは、ともすれば事業の破綻を招きかねないのも事実である。

店舗数や社員数を急速に増やしていけば、結果としてその市場規模を維持するだけのコストが発生する。

そのコストを維持する為、ハラスメント行為や強引な営業、あるいは保険会社との癒着の様な関係が半ば公然と見逃される事になってしまったのだろう。

先述したように市場が先細りしていく中での事業拡大ともあれば、尚の事苛烈な行為があったとしても何ら不思議ではない。

 

 

 そんな同社の今後の見通しについては、どこも不安が拭えない状況だ。

これまで通りの買い取り体勢が維持されるとは到底見通せない段階で、その状況で競合他社の株式会社プロトコーポレーションが運営するWebサービス「グーネット」や株式会社リクルートホールディングスが運営する中古車販売サービス「カーセンサー」といったサービスとどれだけ競り合っていけるかは非常に暗い見込みとなっている。

 

 経営体力については前期の売上は5800億円あるとの事であり、即座に同社が倒れるという事はなさそうである。

しかし約90億円の借入金の借り換えを、銀行等の金融機関に要請していることが報じられた。

銀行団側からその要求が突っぱねられる形で支払いに応じる形で決着した流れから見ても、同社の先行きは関係各所が総じて非常に不安視しているのが実情だろう。

こういった中古車が売れない状況で発生するのが、中古車の放出である。

系列のオークション企業等に売れないクルマを放出して資金に変えるという手段が現状どれだけ有効打となるかは未知数であるものの、中古車売上市場の15%を占める大企業からの放出ともあれば一定の効果は見られるものだと予想されている。

 

 今後の中古車業界が採るべき道は、今回の件を受けてより一層見えにくくなっている。

10 月から導入される「中古車支払総額表示ルール」の見直し等も含めて、より誠実な対応を行う事で中古車販売事業全体のイメージを取り戻していくしかないのだろう。

 

戦火広がるウクライナに走る日本車

 

 ロシアへの中古車輸出が低迷し、ウクライナへの侵攻は泥沼の様相を呈している。

そんな中で日本からの中古車輸出が通年最高記録を更新している国がある。

それが現在戦火の真っ只中に晒されている国、ウクライナである。

 

 戦場における車両移動の問題として、攻撃を受けたり元々の環境がそうである様な悪路を走る可能性が大幅に上がる点が挙げられる。

そういった中で軍用車両を除けば自動車は民間の車両を用意するしかないが、そこで問われるのが車両そのものの頑健さや信頼性といったポテンシャルに絡む部分である。

この点において日本車は非常に評価が高く、戦時下のウクライナでは非常に役立っているとの事である。

 

 

 また左ハンドル車が一般的な欧州圏において、右ハンドル車は運転席が逆側にあるため敵からの射撃、特に狙撃において走行不能になるリスクを抑えられる意外な面が発見されている。

 

 ウクライナは2019年に17台の中古車を日本から輸入しており、それと比較し今年はすでに18台が出荷の予定となっており今後も増え続ける見込みとされている。

オデーサにおける海上封鎖が長期化しているおかげで、バルト海経由でポーランドやリトアニアへ車両を運ぶ必要があるという。

また一部地域では輸入される中古車が通行するためには自走は不可能でキャリアカーでの輸送が必須となっているため、戦時下のウクライナでは調達するのが困難な状況となっている。

その為大量のキャリアカーの調達、ならびに今後も導入が見込まれる中古車の調達は急務となっている。

現在も悪影響をもたらしているロシアのウクライナ侵攻が収まり、一刻も早くウクライナに自動車がのんびりと走る光景をまた見たいものである。

 

 

※画像出典:自動車流通市場研究所 自動車業界レポート Vol.46

 

 

(IRuniverse Ryuji Ichimura)

 

 

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