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2023年国際電池リサイクル会議、スペイン・バレンシアで開催②

 7日国際電池リサイクル会議(ICBR)2日目は、7月に施行となった新電池規則要件への対応義務が現実となったことを受け、電池リサイクル技術や原料回収技術に関連する話題に集中した。プログラムは午前・午後共に、テーマごとにセッションa・セッションbの二つに分かれ、15件のプレゼンテーションが行われた。

 午前初めのセッションaは、主に現在のリサイクル技術や機材開発の紹介、セッションbは研究機関や企業の研究部門におけるリサイクル関連技術の開発に焦点が当てられた。ドイツSiemensからは、同社が現在取り組んでいるデジタルツイン活用した電池リサイクルのオートメーション技術開発の紹介があった。EV用電池の解体は危険度の高い作業であるため、オートメーション化が高い注目を集めている。Siemensは、最新IT技術を採用することで、電池の危険性を事前に察知し対処法の準備を可能にする計画だ。研究機関による発表では、韓国の研究所によるEV用リチウムイオン電池のリサイクルにおける溶剤の摘出という、より焦点を絞ったオートメーション化についての研究が注目を集めた。

 

 午前後半セッションでは、中国のCyclewell Technologiesがリチウムイオン電池のリサイクル技術を紹介した。同社はLFPのリサイクルにも従事しており、SPR技術と呼ばれる同社のリサイクル技術により、LFPリサイクルの利益性の問題に取り組む。LFPは、コスト効率の問題から欧州ではほとんどリサイクルされていないが、同社の研究者によると、コスト問題の解決は技術により可能であるという。EU域内では、新電池規則によりリチウムのリサイクルターゲットが設置されたため、今後はLFPのリサイクルも避けて通れない。そのため、近年、BoTreeなどのLFPリサイクルを手がける中国系のリサイクル業者が欧州へ進出しているが、Cyclewell Technologiesも欧州での市場機会を狙う企業の一つのようだ。今回の展示会でも、中国リサイクラーやリサイクル機材メーカーなどのブースが目立った。

 

 午後の部は、プレゼンテーションとパネルディスカッションの2つのセッションに分かれたが、MIRUは欧州二次電池協会のメンバーを中心に、欧州における競争力の高い電池バリューチェーンのドライバーである安全性・サステナビリティ・トレーサビリティをテーマとしたパネルディスカッションを視聴した。参加パネルは欧州委員会の環境総局代表・Li-Cycle・Robert Bosch・Circulor・Veolia ・ACCと規制機関・リサイクラー、メーカー、電池パスポートの開発を手がける企業と文字通り電池バリューチェーン上のプレーヤーが集まり、それぞれの見地から電池の安全性・サステナビリティ・トレーサビリティをめぐり議論を交わした。欧州委員会の代表者は、電池規則が施行となった今要件をめぐるコメントについては、反映は不可能だが、今後発表される委任法令の中で検討することが可能であり、ステークホルダーから多くの意見を期待すると述べた。特に電池の安全性については、どのプレーヤーにとっても最重要取り組み事項であることが強調された。

 

 午後最後のセッションでは、英Fastmarkets がグローバルブラックマス価格についてのトークを行ない、将来的な展望にも触れた。その中で、ブラックマスが欧州に停滞しているとのコメントがあり、会場からは「欧州ではブラックマスが域外へ流出しており、それを域内に留めることが課題となっているのでは」との問いがあった。それに対しFastmarketsのアナリストは、「欧州でのブラックマスの生産量に対し、精製が追いつかないためブラックマスの余剰があるが、規制によって輸出ができないため欧州に留まっている」と回答。しかしながら、実際に業界の中で理解されている現状とは異なる感が否めない。そのほか、スイスのスタートアップLibrecからは、黒煙のクローズループ構築への取り組みが発表された。

 

 会議締めくくりでは、会議議長は、欧州における電池の重要性と政策・規制、市場および共同体全てにおいて循環性への移行が始まっている現状が強調した。また、技術・生産・リサイクル、EVなど電池業界における大きな事業機会が存在するとともに、将来的な電池の原材料であるクリティカルマテリアルの不足と安定供給の確保、電池の回収・リユース、リサイクルにおける革新の必要性、新規則への対応と多数の委任法令への対応など、業界が直面するチャレンジにも言及し、会議セッションを終了した。最後に、次回のICBRはスイス・バーゼルに決定したことが付け加えられた。

 

 なお、プレゼンテーションの詳細は追って報告する。

 

関連記事: 2023年国際電池リサイクル会議、スペイン・バレンシアで開幕①

 

 

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SCHANZ, Yukari

 オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。

 趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。

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