金融アナリストの川上敦氏の世界経済動向セミナー#7 イラク関与なら原油相場に影響か
金融アナリストの川上敦氏が定期的に開催しているセミナー「Chuck Kawakamiの金融経済Now」の最新オンラインライブが10月4日に行われた。いつものように各種データを駆使したセミナーで、川上氏は10月初旬のハマスによるイスラエル急襲から始まった中東問題について「もしイラクが関与すれば原油相場に影響してくる可能性がある」と話した。
■原油、今はボックス圏も
川上氏は現時点の原油を含むコモディティ価格については「横ばい」と指摘。米中をはじめとする景気の先行き懸念が厳しい中で、「よく言えば落ち着いているが、悪く言えば盛り上がっていない」と話した。原油相場は上下の動きが小さなボックス圏。金相場はドルの変動の影響を受けて比較的変動が大きかった。銅相場は中国需要の縮小傾向を受けて下落傾向が続く。
原油・金相場の推移
穀物価格も米国需要がそんなに増えておらず、作付面積も横ばいで変わらず。川上氏は「海運状況だけは中国の貿易増期待があるのかやや改善している」と述べた。
■景気予想は改善も債券に風向き変化の兆し
世界経済の成長率予測
米経済紙エコノミストなどは9月調査分2023年の世界の経済成長率予測で、米国の成長率予測を5月調査時の0.7%から1.8%に上方修正した。米国のインフレ懸念が下火になりつつあることが支えで、川上氏は「リセッションモードは緩和した」としながらも「世界全体で見るとあまり良くない」と曇り顔を見せた。原因は米景気を詳しく見た時に、やはりさえないこと。「企業景況感が下がっており、失業率も長期失業者数に増加の兆しが浮上している」と述べた。
米国の長期失業者数の推移
■中国、非金融セクターの債務は日本のバブル期越え
中国も景気回復の兆しは見られない。川上氏は「不動産の債務が重く、非金融セクターの対国内総生産(GDP)比での比重が165%と、日本のバブル期を上回る水準に達している」と指摘した。
世界の非金融セクターの対GDP債務
中国は各種統計を見てもやはりさえない。小売売上高、景況感なども頭打ち。発電量も低迷している。投資状況を見ると民間投資は低迷し、「公共投資で持っている」(川上氏)ことが分かる。
特に目立つのは事業債で1-3年間のうちに満期を迎える短期債の割合が多いこと。これは多くの企業が近く債務返済の期限に直面することを示す。払いきれなければ、債務不履行(デフォルト)が続々、という様相になりかねない。
■株は世界的に停滞
米中の不振を映し、世界の株式相場も頭打ち感が強まっている。米株は出来高が減っている。日本株は「ドルから見ればやはり安い」(川上氏)ことから比較的順調だが、日経平均株価には「頭打ち感も強まっている」(川上氏)。
セミナー参加者からは「日本が短期金利を上げれば株もさらに上がるのか」との質問があった。川上氏は「金利引き上げはこれまで世界にばらまいてきたお金を回収することになり、世界的な影響が大きい」と答えた。
世界株価指数の推移
川上氏は世界経済全体について、「株やコモディティ、景況感、債券などどれも停滞感が強い。特に債券はややマイナス傾向になっており、風向きが変わってきているようで心配だ」と警戒する。「すべては米国次第で、米景気がどうなるかによって世界経済の風向きも安定する」とも述べた。
(IR Universe Kure)
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