週刊バッテリートピックス EV向け電池で米中対立が先鋭化
2023年11月27日~12月3日のバッテリー業界では、電気自動車(EV)向け電池とその材料を巡る米中対立の先鋭化が浮き彫りとなった。米政府が同国のEV購入支援策について、中国企業が生産した電池部材や重要鉱物を使っている場合は除外する方針を発表。一方の中国は同日、電池材料の黒鉛(グラファイト)の輸出規制を始めた。
<国内>
●大日本印刷、米国でバッテリーパウチを生産へ
大日本印刷(DNP)は11月29日、自社ホームページ上で、リチウムイオン電池の外装材であるバッテリーパウチを生産する工場用に、米ノースカロライナ州に建設用地を取得したと発表した。100億円を投じ、2026年度に稼働する予定。
電池用包装材は「バッテリーパウチ」と呼ばれる。長年培った印刷技術の一つであるコンバーティング技術(材料加工技術)を活かし、リチウムイオン電池の外装材であるバッテリーパウチを開発し、1990年代後半に実用化に成功した。米国では電気自動車(EV)向けの電池需要が拡大しており、現地での生産体制を構築する。
プレスリリース: リチウムイオン電池用バッテリーパウチの工場として米国に建設用地を取得 | ニュース | DNP 大日本印刷
●東芝、コバルトフリーのリチウムイオン二次電池を開発
東芝は11月28日、自社ホームページ上で、コバルトフリーな5V級高電位正極材料を用いた新たなリチウムイオン二次電池を開発したと発表した。各社は電気自動車(EV)向けなどを期待して様々なタイプのバッテリーの開発を進めるが、足元の電池価格全体は下落している。2024年は価格競争が一段と激化する可能性がある。
関連記事:東芝、コバルトフリーのリチウムイオン二次電池開発 電池価格は下落、24年は競争激化か | MIRU (iru-miru.com)
●三菱自動車、12月21日に新EVを発売へ
三菱自動車は11月24日、12月21日からワンボックスタイプの新型軽商用EV「ミニキャブEV」を発売すると発表した。モーターや駆動用バッテリーなど電動系コンポーネントを従来のシリーズから新世代化し、航続距離の延長や急速潤伝を実現した。
<海外>
●米、EV支援策対象から中国製部材の使用品を除外
バイデン米政権は12月1日、EVを対象とした最大7500ドル(約110万円)の購入支援策について、中国企業が生産した電池部材や重要鉱物を使っている場合は除外する方針を発表した。供給網の安全保障強化が理由。電池は2024年から、重要鉱物は2025年から適用する。米企業の子会社も含め、中国などに本拠を置いていたり、政府による経営支配権が25%以上に及んでいたりする企業が除外対象となる。
●中国、黒鉛の輸出規制を開始
中国政府は12月1日、EV向け電池の主要材料の1つであるグラファイト(黒鉛)の一部製品について輸出を許可制にした。
関連記事:中国、明日から黒鉛の輸出規制 足元価格はやや軟調、先回り買い一巡か | MIRU (iru-miru.com)
●韓国ポスコ、水酸化リチウムの新工場が竣工
韓国のポスコグループは11月29日、全羅南道の栗村産業団地で、ポスコピルバラリチウムソルーションの水酸化リチウム工場とポスコ光陽製鉄所の高効率無方向性電磁鋼板(Hyper NO)工場を竣工した。
関連記事:POSCO 韓国の栗村産業団地で水酸化リチウムと電磁鋼板工場を竣工 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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