金融アナリスト川上敦氏の世界経済動向セミナー#1 選挙イヤー、目玉はやはり米大統領選
金融アナリストの川上敦氏が定期的に開催しているセミナー「Chuck Kawakamiの金融経済Now」の最新オンラインライブが2024年も始まった。今年1回目は1月9日に各種データを駆使したセミナーが行われた。世界的に注目選挙が相次ぐ2024年について、川上氏は「目玉はやはり米大統領選。経済政策が変更になれば世界に影響する」との見方を示した。
■能登地震はマイナス要因、円安は解消へ
川上氏は1月1日に起きた能登半島の大型地震による日本経済への影響について「マイナス材料ではある」と指摘。まずは「これから発表される日銀短観のうち、民間企業の投資状況の公表を待ちたい」とした。ただ、日本経済全体に対し「大きなマイナスにはならないのではないか」とも話した。
川上氏によると、足元の日本経済はやや足踏み状態。特に「商業の伸びがコロナ禍以上に伸びない」と指摘、消費マインドや小売売上高が伸び悩んでいるほか、住宅販売も意外に悪く、求人倍率も落ちてきているとした。貿易についても「数量の減速を円安で相殺している状態」(川上氏)が続き、民間投資も低迷している。ただ、それでも地銀などの頑張りで融資は堅調。2023年の成長率はプラスを維持した。
日米マネタリーベースの推移
気になる円相場については二国間のお金の行き来を表す日米マネタリーベースが2023年3月くらいから横ばい。円の実質的な使いでを示す実効為替レートは1970年代のレベルという低水準で、海外旅行に出て円の価値の低さに驚いた人も多いと思われるが、今後は「円安が進む要因が見当たらない」(川上氏)ことから、過度な円安は一定程度解消される見通しだ。
■米景気にやや陰り、欧州や中国も低迷
景気が今一つなのは日本だけではない。国際通貨基金(IMF)が2023年10月に発表した世界の2023年の経済成長率は予測前年比2.96%増。2024年は2.94%と予測した。
世界経済の成長率予測
まず、米国は2024年に1.48%成長と、2023年の2.09%から大幅に成長が鈍化する見通しだ。川上氏も米国の各種統計を子細に見たうえで、「ちょっとまずい」と指摘。雇用者数が減っているほか、製造業景況感指数も好不況の境目である50に近づいて低下していること、貿易赤字の改善が見られないこと、住宅販売の急激な悪化などを挙げて「景気後退(リセッション)」には陥らないとの見方が市場でも多いとはいえ、少し嫌な感じだ」と評した。
米新築住宅販売の推移
中国や欧州も低迷している。中国については固定資産投資の伸び悩みや発電量の頭打ち感が見られるほか、消費者物価指数もマイナスとなり、「不動産を中心に消費は相当悪い」(川上氏)状態。ただ、当局が引き下げを続けている実質的な政策金利である最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)について、川上氏は「国債利回りから考えるとまだ下げ余地がある」とし、景気刺激の手段が残されているとした。
中国のLPRの推移
そして、欧州は「景気が本当に悪い」(川上氏)。一時は持ち直した製造業の景況感指数は再び下落。失業率が何とか持ちこたえているものの、川上氏は「好転の兆しはまだ」との見方を示した。
欧州の景況感指数の推移
■インフレは落ち着き
一方、2023年初頭に懸念された物価上昇は落ち着いた。2023年秋以降は穀物価格も安定。川上氏も「ほぼ問題ない」とするとおり、食糧やエネルギーの混乱は収まったと言える。
世界の食糧価格の推移
ただ、金相場は注意が必要。川上氏がかねて指摘している通り、中国やロシアが米ドル建ての外貨準備を減らして金資産の保有に移行させている傾向が見られるためで、「外貨準備高に占めるドルのシェアは非常にゆっくりだが縮小している」(川上氏)という。
外貨準備の通貨別シェア
(IR Universe Kure)
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