金融アナリスト川上敦氏の世界経済動向セミナー#3 どこまで続く株高、相対的な強さ目立つ
金融アナリストの川上敦氏が定期的に開催しているセミナー「Chuck Kawakamiの金融経済Now」の最新オンラインライブが3月5日に行われた。その後3月8日発表の米雇用統計をはじめ最新データももとに、川上氏はついに4万円台に乗せた日経平均株価について、「もし調整局面に入ったとしても相対的に強いだろう」と予測した。
■多くの国で株価が過去最高値に
日経平均株価の推移
日経平均株価は3月4日に終値で史上初の4万突破を実現し、過去最高値を更新。その後も4万をはさむ水準で推移している。これについて川上氏は、「日本だけでなく世界の多くの株式相場が過去最高値圏だ」とし、米ダウジョーンズ指数やインドSENSEXなどが上昇していると指摘した。背景には未曽有の流動性の高さがあり、「世界的にお金が余っている状況」(川上氏)。米金利のピークアウト期待も背景に、世界的に投資家心理が楽観していることが背景にある。
日米株の内容比較
その上で川上氏は、「株価収益率(PER)を見ると米国株の30倍超に比べ日経平均株価は16倍となお割安。企業の業績堅調も期待されている」と買い要因を指摘。実際、日銀短観では設備投資が今後、大きく伸びるとの予測が示唆されたとし、「最新の法人企業統計でも企業の投資増が感じられ、マインドの好転がみられる」と紹介した。
日本企業の実質業績は米企業よりも好調
また、川上氏は「日本は1月に能登半島地震があったのにもかかわらず消費者心理も好調で、求人倍率も頭打ちとなり人が必要な状況になりつつある」として、日本の国内事情は悪くはないと話した。
株価にとってむしろ悪材料となりそうなのは米国などの海外要因だという。現在の株高を押し上げているのは海外投資家の買いとされるが、川上氏は「裁定取引が減ってきており、海外からの買いが鈍り始めたようだ」と指摘。米国で消費の可処分所得比がバブル水準以上に上昇するなど消費が過剰になってくる中、「米景気が危うくなれば日本株のリスクになりうる」としながらも、「相対的な強さは変わらない」と述べた。
■中国、消費者物価3%目標は「無理」
中国では3月5日-11日、年に1度の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開催された。李強首相は5日、「2024年の実質国内総生産(GDP)目標値を5%程度、消費者物価指数(CPI)を3%程度の上昇を目指す」と発表。川上氏はこれについて「GDPは本当の数字を発表していないですから」と苦笑。1月分までの直近で4か月マイナスとなっているCPについては「実態は相当悪いのではないか」と話し、3%プラスとした目標の達成は「無理でしょう」と首を振った。
中国GDPの推移
中国では投資も民間・公的投資も含めて横ばい。発電量もさえず、不動産は相変わらず悪い。国際市場では中国景気回復への期待が剥落し、バルチック海運指数(BDI)が下落している。
ただ、製造業景況感指数(PMI)は2月分がやや下げ止まり、サービス業の景況感指数は上向いた。データの不確実性もあって「どうなりますか」(川上氏)と見通しにくい状態になっている。
■インフレは完全鎮静、円安進行の兆候は見えず
他の国々の景気は総じて横ばい、ユーロ圏は景況感指数や投資状況などに動きはなく低成長が続く。川上氏はこれについて「リーマン・ショックの時も本格回復には4-5年の時間を要した。コロナ禍は2019年なので、回復はこれからとみても良いかもしれない」と期待を示した。
商品相場は小麦をはじめ穀物価格は下落を続け、インフレ懸念は沈静化。原油は供給過剰気味で、指標となる米国市場での価格も「上昇は息切れ気味」(川上氏)と話した。
為替も、お金の移動量を表す日米マネタリーベースは落ち着いており、川上氏は「一段の円安が進む兆候は見られない」とみる。新興国通貨も対米ドルで上昇しているとも話した。
日米マネタリーベースの推移
(IR Universe Kure)
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