レアアース市場近況2024#9 上昇 、EV減速懸念和らぐ 中国指数が回復
2024年4月下旬~5月上旬のレアアース市場全体は上昇。電気自動車(EV)需要の減速に対する過度な不安が一服し、中長期の需要増を期待する買いが入っている。中国のレアアース価格が3月に底を打ち、メーデー(5月1日)に伴う連休を挟み上昇を続けたことも気分を明るくしている。
■中国のレアアース指数、177台に回復
中国のレアアース業界団体である中国稀土協会が5月8日に発表した4月のレアアース指数は169.6と、3月の155.3から上昇した。最低が4月1日の156.1、最高が大型連休前である4月29日の177.0で、月間を通して上昇する展開だった。5月7日は177に上げている。3月19日に153.3を付けたのを底に反発基調が強まった。
中国レアアース指数の推移
(出所: 中国稀土協会)
■底打ち鮮明、テルビウム1110ドルに
中国市況の改善を背景に、磁石向けレアアース価格も好調が続く。代表格である金属ネオジムは5月1日に仲値で$69/kgと2月末の水準を回復した。3月21日に$60.5まで下げて節目の$60割れが警戒されたものの免れ、段階的に上昇した。
金属ネオジムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属テルビウムも似た動きで、5月1日には仲値で$1110/kgを付けている。4月11日に$1030と節目の$1000台を回復し、これも段階的に上昇した。1月以来の高値となる。
金属テルビウムの価格推移(99% FOB China)($/Kg)
金属ジスプロジウムも後を追う。5月1日に$343/kgと2月下旬以来の高値を回復した。3月半ばに$328に下げたのが底となった。
金属ジスプロシウムの価格推移(99.5% FOB China)($/Kg)
■ランタンは下落
唯一、金属ランタンは下落基調。4月25日に$3.57/Kgに小幅ながらも再び下げた。3月21日に付けた$3.58/kgを1か月以上も維持したものの耐えきれなくなった。2005年夏以来19年近くぶりの安値水準。超硬向け需要は相変わらずさえず、蛍光体や合金向けのランタンは価格回復のめどが立たずにいる。
金属ランタンの価格推移(99% FOB China)(S/Kg)
<Topic>
5月2日
日本と欧州連合(EU)は5月2日、フランス・パリで開かれた「ハイレベル経済対話」で経済分野の課題を話し合う閣僚級の会合を開き、レアアースや半導体、重要鉱物などの戦略物資の調達で協力することで合意した。これらの分野で攻勢を強める中国を念頭に、特定の国に依存しない供給網(サプライチェーン)の構築をめざす。
外務省プレスリリース: 日・EUハイレベル経済対話の開催|外務省 (mofa.go.jp)
4月30日
インド鉱山省は4月29、30日の2日間、ニューデリーで、グラファイトに関連する希土類(RE)を含む重要鉱物に関する大型会議「Critical Minerals Summit(重要鉱物サミット)」を開催した。
関連記事インド、「重要鉱物サミット」開催 国内関係者一堂、経済成長受け世界のリーダー目指す | MIRU (iru-miru.com)
4月14日
中国国家安全部は4月14日、2023年10月にレアアースの取引に関して国家機密漏洩および盗難の疑いがあったとして、日系商社と中国側資源企業のそれぞれの当事者2名に対して懲役11年と個人資産没収および罰金を課すとの措置をとったと発表した。
関連記事: 中国国家安全部 レアアース分野の国家機密盗難事件で日中企業双方の当事者に懲役11年の強制措置 | MIRU (iru-miru.com)
英語記事はこちら
(IR Universe Kure)
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