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自動車業界動向#5月 足踏みする国内中古車市場と海外における日本の中古輸出車事情

 2024年も5月に入り、世間では10日間という破格のゴールデンウィークを迎えた。

しかし浮かれた空気を他所に、国内ではEVの普及は進まず中古車市場においては国内で苦情が出る始末となっている。

なかなか先が見えない諸要素について、特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所のレポートを参照し掘り下げていくことにする。

 

国内におけるEVと国外のEV事情

 

 国際エネルギー機関(IEA)のレポートによれば、2023年に世界で販売された電気自動車(EV)は前年の1020万台を大きく上回る1400万台に達すると発表されている。
この数値は前年比で37%増、全体に対するEV普及率としては約16%と大きなものである。

しかしその一方で、日本のEV販売台数(PHEVとFCVは含まず)は8万8535台で、前年比では10%増加し

ているものの、普及率はわずかに1.9%と世界の進捗と比べ、大きくかけ離れている実情となっている。

 

 ドイツでは政府により、2023年12月17日にEVの購入を対象とする補助金が突然終了。
アウディ、メルセデス・ベンツ(MBGn.DE), opens new tab、フォルクスワーゲン(VW)(VOWG_p.DE), opens new tab、ステランティスの大手メーカー各社は、ドイツのEV購入者向けに購入資金の支援を継続する方針を表明している。

そのうちのメルセデス・ベンツでは「2030年までに、販売する全新車を純粋なバッテリー電気自動車(BEV)にする」という目標を2024年2月22日(欧州現地時間)の撤回を決算会見にて発表。

またフランスでも2023年12月15日より補助金の支給基準が見直され、欧米大手ステランティス(STLAM.MI), の24車種とフランス大手ルノー(RENA.PA), opens new tabの5車種や米テスラ(TSLA.O),の「モデルY」が対象となった。
この改定において中国車はフランスにおいては適用対象から外されている。

 

 さらにはEVの最先端を行く中国においても、昨年12月中旬から1週間に渡って見舞われた中国東北部一

帯を襲った大寒波と大雪で「電力の消費を加速させる」、「航続距離が急激に落ちる」、「スマートキーが動かない」といったEVの弱点が露呈する事例がこのところ相次ぐなど、ここにきてEV普及が一気に後退するのではと思われていた。

 

【関連記事】
大寒波に凍りつく電気自動車 EVの限界点と「死骸」(MIRU.com掲載 2024年1月)
 

 ところが直近の1月実績を見ると、前年同月比で中国が倍増、北米が41%増、EUが29%増と、あくまでも単月実績ではありますが、各地域とも後退どころか大きく前進している。

これは仮説の域を出ない話ではあるが、今回改めてEVの問題が明らかになったことで、ユーザーサイドが取れる対応と対策が明確になったからではないかと考えられる。

 

 具体的にはEVが低温環境下に晒された中国の一連の事例や、運搬時の発火リスクといったEVの弱点とされる要素は、搭載されている液状型リチウムイオン電池に起因していると見られている。

以前から言われている通り同電池は温度に敏感であり、低温下では性能が低下してしまうため、この弱点が今回露呈した形となった。

一方高温下では劣化が進むとともに、液体での電解質を使用しているため、揺れによる液漏れが発生すれば発火のリスクがあることが明らかになっている。

 

 このような弱点が明らかになったことで、ユーザーはその弱点をしっかり見極めることで対応を図ることができ、またメーカーにおいては、電池の中に液体が含まず、耐久性が高く、熱や環境変化にも強い全個体電池の開発に転換するなど方向性が見いだせたことが、背景にあると目されている。

 

 

 では翻って日本におけるEV普及における問題点と取り組むべき課題についても見ていく事にする。

世界のEV販売1月実績は予想に反して大きく前年を上回ったが、日本はわずか4658台で、前年同月比で45%の減少となった。
自動車全体におけるEV普及率も1.6%までに落ち込み、世界の動きに逆行する形となった。


 この事象の要因は、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の見直し時期に差しかかったことが大きい。
同制度は令和6年度の4月以降の額が見直され大幅に予算が増額されている。
その影響でEV購入の機運は徐々に回復していくと思われるが、とは言え飛躍的な拡大は望める程の規模ではない。

 

 というのも、現状を見れば根本的に日本ではEVが普及する環境にはないという点が大きい。

家庭内や拠点内の普通充電がメインの給電手段となっている現在のEV事情では、軽EVがわずかに普及していく程度しか期待できない状況なのである。

肝心の登録車EVを飛躍的に普及させていくには、普通充電ではなく急速充電を可能とするインフラが、最低限でも現状のガソリンスタンドと同等の3万箇所程度はなければ、普及は難しいと思われる。

ちなみに隣国である韓国では、22年時点で急速充電対応のスタンドは2万1000ヶ所設置されているとのことである。

翻って現在日本では1万箇所前後の急速充電スタンドが、今後どのような進捗を遂げるのか注視していく必要があると見て良いだろう。

 

 急速充電スタンドの数についてEV充電スタンド情報サイト「GoGoEV」によるとCHAdeMO(急速)

10,428件、200V(普通)25,574件、TESLA(テスラ)836件となっている。
まだまだ急速充電スタンドではなく時間の掛かる普通充電スタンドがメインとなっている現状、どれだけ普及を勢いづかせる事が出来るかは大きな課題となっている。
その上で急速充電を繰り返せば電池の劣化も早まる為、メーカー側がいかにユーザーサイドをサポートしていくかという点においても措置が必要だろう。

 

有名無実の支払総額表示制度

 

 昨年10月1日に、自動車公正競争規約・同施行規則が改正され、中古車の販売価格の表示が「支払総額」に変更となり、半年が経過している。

昨年は社会的に中古自動車販売業界の信頼が大きく失墜した一年となっており、今回の支払総額表示制度は重要な一歩になると思われていた。

しかし蓋を開けてみれば、残念ながら未だに「支払総額では購入できない」と言う消費者からの苦情が自動車公正取引委員会に多く寄せられているとの事である。今回はこの苦情のうち代表的なものを紹介する。

 

 苦情事例①「保証」を購入しないと販売しない
サイト上で「支払総額●●●万円」「保証なし」と表示されていたが、担当者から「保証を購入してもらわなければ販売できない」と説明され、支払総額よりも41万円高くなった。

「保証なし」で購入できないのはおかしいと抗議したが、担当者は応じてくれないという事例だ。
保証の購入が販売の条件である場合は「保証付き」と表示し、保証に要する費用は「車両価格」に含めて表示するべきである。

また「保証なし」と表示する場合、保証の購入については購入者の選択に任せるとともに、保証を購入しなくても購入できることや、購入者が保証を選択した場合はそれに要する費用の額を表示、説明する必要がある。

 

 苦情事例②「オプション」を購入しないと販売しない
担当者から「ポリマーコーティングやマフラー錆止めを購入してもらう必要がある」と説明され、サイトに表示されていた支払総額より40万円も高額になった。

表示されていた支払総額で購入したいと言ったが、担当者は応じてくれないという事例である。
こういった案件に関してはオプションを購入するかどうかは、購入者の選択に委ねるべきものである

ため、その購入を販売する際の条件としないことが求められる。

 

 苦情事例③「支払総額」に、購入の際に最低限必要な「諸費用」が含まれていない

サイトに表示されていた支払総額よりも見積額が高いので確認したところ、同サイトに表示されていた支払総額には「環境性能割」が計上されていなかったことが分かった。

担当者からは「『環境性能割』を計上し忘れた」と説明されたが、問題ではないかという案件だ。

「諸費用」には、保険料、税金(法定費用含む)、登録等に伴う費用(新規又は移転登録を行う場合の検査登録手続代行費用及び車庫証明手続代行費用)を含めて表示することが適当とされる。

 

 改正された自動車公正競争規約・同施行規則に違反すると、本来であれば厳重警告や社名公表、違約金の発生という厳しい罰則が科される事になるが、それが実行されたという話はなかなか聞こえてこない。

今一度徹底した対応が求められる時ではないだろうか。

 

世界を取り巻く新車の供給状況と高まる日本の中古車の存在感

 

 このところ、中古車輸出単価が異常な高値となっている。
要因としては20年以降、パンデミックによって世界各国での新車供給が低迷したことで日本の中古車への代替え需要が高まったことが挙げられる。

このことから、世界各国の新車供給の状況と日本の中古車輸出には強い相関性を見いだす事が出来る。

今回、事情は異なるものの、それが堅調に表れているロシアとニュージーランドの2ケ国にフォーカスしてみる事にしよう。

 

 直近5年間の世界の新車販売実績の推移からマクロ的に見れば、パンデミック以前の19年には、世界で9135万8457台の新車が供給されていた。

2020年に入ると新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るうようになり、各国は行動制限措置に踏み切った。

多くの産業が滞るなか、自動車業界も例外なく生産が鈍化。新車供給は7878万7566台と、実に1年間で1257万台も減少する事となった。

その後は回復傾向に転ずるも、半導体不足やロシアのウクライナ侵攻、大雨・豪雨などの自然災害によって、思うような回復には至らず、昨年23年の段階でも8650万台と19年に対し500万台近くも届いていないのが現状だ。

 

 また19年の新車販売についても、米中貿易摩擦や世界的な環境基準の強化によって2018年を大きく下回っている。
このことからも、現状が極めて低い水準にあることが認識される。

 

 このような世界的な新車供給不足とコロナ禍が重なるとともに、世界の富裕層は海外旅行などを制限されたことで“金の使いみち”がなくなったことも呼び水となった。

世界各国で滞っている新車の代替えとして、高年式、高額車の中古車を洋の東西を問わずに輸入する傾向が高まったのである。

ただその中でも、品質や性能、車両のコンディションにおいて日本車が群を抜いており、世界では現在も需要が高まっている状況だ。

 

 

 現在ウクライナ侵攻を行っている自国での新車供給が低迷し、日本からの中古車輸出が拡大した代表的な国は何と言ってもロシアが挙げられる。

ただしコロナ禍での影響は限定的で、大きな減少には至っていないという点は考慮する必要がある。

 

 22年2月のウクライナ侵攻以降、西側諸国からの経済制裁によって、ロシア国内で生産していた西

側の完成車メーカーが撤退。

西側からの新車輸入もストップしたことで、一気に新車供給が停滞する結果となってしまった。

もともと極東地域を中心に日本の中古車需要の高い国ではあったものの、このような事情からロシア全土に渡って代替となる中古車の需要が高まっているのが現在である。

侵攻以降、同国では中国メーカーの技術協力で自国メーカーが強化を図り、また直接中国メーカーが進出を果たした。

西側の撤退によって生じた大きな穴を埋める為に尽力したものの、到底その穴を塞ぐ程には至っていないのが実情だ。

この状況が改善される見込みは薄く、従って今後も非規制対象車を中心に規制対象車の再輸出も含め、日本からの中古車輸出は拡大していくと見られる。

 

 

 

 98年に自国での生産を停止し、自動車に関しては100%輸入に依存してきたニュージーランドは、日本からの中古車が大きな割合を占めていた。

ところが近年、同国政府の政策によって日本の中古車需要に変動が生じている。

2021年7月に同国政府は低炭素型自動車の購入を補助する払い戻し制度となる「フィーベイト(feebate)制度」を導入した。

これはCO2 排出量の多いガソリン車やディーゼル車の購入時に追加料金を課し、その税収で一定の CO2排出量基準を満たす電気自動車やハイブリット車にキャッシュバックを行うというものである。

新車EVには当時のレートで最大67万円の補助金が支給されるというもので、これによって、中国メーカーや中国で生産された米国車、また韓国車など新車EVの輸入が拡大していった。

それによって日本の中古車が減少し、さらにこの制度の財源として22年1月からガソリン車やディーゼル車を購入する際、最大で226千円の追加料金を徴収するようになった。

ニュージーランド国内における中古車、特にガソリン車取り扱いディーラーのダメージは拡がり、対象の車両が一気に減少。

同国の中古車輸入市場は辛うじてHVを中心に台数を確保していく状況となっていた。

ただ、この制度は23年12月をもって終了し、またEVの評判も今一つであることから、今後は再びHVを中心に日本の中古車輸出需要が上向いていくことが期待されている。

 

 

 ただし中古車輸出も盤石の布陣と言えるかは怪しい状況にある。

今後最も気になるところとして、日本国内流通における高年式高額車が減少している点が挙げられる。

また代替サイクルの長期化により、中古車そのものの発生率が減少している中、これだけ多くの車両が海外に流出してしまう状況である。

国内での高年式高額車が「枯渇する」とまでは言わないまでも、今後その絶対数はかなり減少すると思われる状況である。

 

 

(IRuniverse Ryuji Ichimura)

 

 

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