米アルカディウム、豪リチウム採掘を停止へ リチウム既存鉱で初、操業停止の波止まず 一覧
米化学大手のアルカディウム・リチウム(Arcadium Lithium)は9月4日、自社ホームページ上で、「西オーストラリア州のマウント・カトリン鉱山で手掛けるリチウム採掘事業を2025年上半期に停止する」と発表した。豪州では鉱山事業の停止や中断が相次ぐが、世界的資源大手によるリチウムの既存鉱山の操業停止の発表は初めてとなる。
発表によると、アルカディウムまず廃棄物のストリッピングと拡張投資を取りやめ、実行中の採掘と鉱石処理を完了した後で事業を停止する。ただ、鉱山を閉鎖するわけではなく、リチウム市況が回復した暁には操業を再開するとした。
■相次ぐ操業停止、価格は3年半低迷
豪州では、これまでコア・リチウムが新規事業を停止し、アルベマールがリチウム加工を停止するなど資源大手の操業停止が続いてきた。ほかにも施設老朽化に伴うアルミナ鉱山の停止や、同国資源大手のBHPのニッケル事業の停止なども発表になっている。
最近のオーストラリアでの世界の資源大手の事業停止
(注:各社発表をもとにIR Univweseが作成。企業名は通称、事業名は概略)
背景にあるのは、もちろん金属価格の低迷だ。リチウムの場合、ベンチマークとなる炭酸リチウムの価格は9月5日にRMB7万2500/mtと、2021年2月以来の安値を付けた。3年半にわたり回復しない市況に、アルカディウムのポール・グレイブス社長兼最高経営責任者(CEO)は発表資料中で、「マウント・カトリンでの生産は、現在のリチウム鉱石の価格環境では正当化できない」と述べた。
過去5年間の炭酸リチウム価格の推移(99.5% china)(RMB/mt)
■一部で投資増の動きもあるが…
豪州の場合、人件費や電力・物流などのインフラが他国に比べ相対的に高く、事業を続けにくいという事情もある。外資系商社の日本支社幹部は鉱山運営のコストについて「ともかく何もかも高い」と話す。
豪政府もロイヤリティの引き下げなどを検討するがなかなか身を結ばない。一部では危機こそチャンスとばかりに投資を増やす動きはあるものの、市況低迷に耐えられず音を上げる企業はまだ増えそうだ。
関連記事:豪鉱業が経済危機 業界団体が政府に支援要請、資源大手の事業見直しも相次ぐ | MIRU (iru-miru.com)
関連記事:相次ぐリチウム減産のなか世界最大のGrrenbushesリチウム鉱山は生産量増加の可能性 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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