ギリシャのメトロレン、ガリウム生産へ EU内で初、中国占有に対抗へ
ギリシャ金属企業のメトロレン・エネルギー・アンド・メタルズ(Metlen Energy and Metals)は1月16日、自社ホームページ上で、「2億9550万ユーロ(約477億円)を投じ、ボーキサイト・アルミナ・ガリウムの一貫生産ラインを建設する」と発表した。米ブルームバーグ通信の同日報道によれば、ガリウムの生産ラインは欧州連合(EU)内で初めて。
■2027年からガリウム生産
同社は中央ギリシャ地方のヴィオティア県アギオス・ニコラオスに所有するアルミニウム工場内に生産ラインを新設する。年産能力でボーキサイト200万トン、アルミナ126万5,000トン(現在は86万5,000トン)、ガリウム50トンを目指す。生産額は合計で約10億ユーロにのぼり、製品は欧州と北米に輸出する。ボーキサイトの生産部分は2026年内に生産開始の予定。2027年からはアルミナとガリウムの生産を順次開始し、2028年までにすべてのラインを本格稼働する計画だ。
■ガリウム価格は13年ぶり高値、脱中国依存急ぐ
メトロレンがライン申請に踏み切った背景には、中国によるガリウムの「武器化」がある。中国は2023年8月1日からガリウム・ゲルマニウムの輸出を規制し、輸出業者に対し税関での審査を義務付けた。さらに、2024年12月3日にはガリウムとゲルマニウムの対米輸出自体を禁止した。いずれも米国や西側諸国による半導体規制などに反発した措置とされる。
これを受け、ガリウム価格は供給ひっ迫感から値上がりを続けている。2024年12月19日には高値$640/kgと、2011年12月以来およそ13年ぶりの高値を付けた。
過去15年間のガリウム価格の推移(EU Spot market)($/kg)
メトロレンは発表資料中で、ガリウムについて、「アルミナの副産物だが、その生産はほぼ完全に中国に集中している」と指摘。中国の輸出規制により西側諸国のサプライチェーン(供給網)の脆弱さが浮き彫りになったとして、「新生産ラインの建設により、欧州はガリウムの輸入を完全に代替することができる」とした。
関連記事:【年末企画・ガリウム・ゲルマニウム】中国輸出規制で高騰、25年はトランプ登場で一段高か | MIRU
メトロレンはアテネに本拠を置く冶金・資源企業。1908年創業の老舗だが、2015年から多国籍の出資を受け入れてグローバルベンチャーに転身した。
(IR Universe Kure)
関連記事
- 2025/05/01 2025年4月マイナーメタルの平均推移(月平均)
- 2025/04/30 2025年2月 タングステンスクラップ輸出入統計分析 輸出は半減以下に、輸入も減少
- 2025/04/30 【貿易統計/日本】 2025年3月のタングステンスクラップ輸出統計
- 2025/04/30 【貿易統計/日本】 2025年3月のメタルシリコン輸入統計
- 2025/04/30 【貿易統計/日本】 2025年3月のコバルトくず輸出入統計
- 2025/04/30 【貿易統計/日本】 2025年3月の日本のインジウム輸入統計
- 2025/04/30 【貿易統計/日本】 2025年3月のチタン鉱石輸入統計
- 2025/04/30 【貿易統計/日本】 2025年3月のチタンスクラップ輸出入統計
- 2025/04/28 【貿易統計/日本】 2025年3月の酸化コバルト輸入統計
- 2025/04/28 【貿易統計/日本】2025年3月のスポンジチタン輸出入統計