米ボーイング 複合材を増やしチタン材料は減少傾向か?CFRPリサイクルは重要課題
航空大手ボーイング社の子会社であるボーイングリサーチ&テクノロジー社(BR&T)のマイケルアンダーソン氏は20日、東京ビッグサイトで開催された展示会(SAMPEjapan 先端材料技術展2022)にて、サステイナブルな航空機向けコンポジットに関する将来の動向、と題した講演を行い、今後び航空機はかなり複合材(CFRPなど)の使用量が増えていき、そのために大規模な投資も行っていることを明らかにした。シアトルの工場では主翼をすべて複合材で作っているとのことで、チタンサプライヤーからすると若干気がかりな話かと察した。
というのも航空機で最もチタンを使うのはエンジンを除けば主翼だからである。
→(関連記事)ロシアのチタン産業および航空機向けでのチタン需要の今後について
この点についてIRUNIVERSEの田中記者が「複合材の使用量を増やすことでチタンの使用量は減っていくのでしょうか?」とアンダーソン氏に質問したところ「その可能性はある。チタンの使用量を減らすことはできる」との回答であった。
ただ、航空機の場合、さきのエンジン部分ではいまもかなりチタンが使われているが(しかし一部でCFRP化も進行)、主翼では複合材を留めるビス、ナットでチタンを使っている。従って複合材が増えてもトータルではさほどチタンの使用量は減らないのでは?というごもっともな指摘もある。
先のBR&T社では航空機の電気駆動、水素燃料、SAF(#)、ハイブリッドな複合材という点を研究開発しており、材料面ではやはりCFRPを多用する方向。
(#)Sustainable Aviation Fuelの略称。廃棄材や食用油などを原料とする燃料で、従来の航空燃料と比べて80%程度の二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるとされるが、価格差も現時点では最大で10倍程度あるとされる。
空飛ぶタクシーとしてボーイングがWISK社と共同開発している航空機は全て複合材で製造しており、MQ25スティングレー(無人給油機)も複合材、ドリルを使わない製法。
BR&T社は世界13か所のテクノロジリサーチーセンターを擁しているが、日本では今年8月に開設。SAF燃料と複合材、複合材のリサイクルについて研究を行っているが、いくつか聞いたところ、CFRPのリサイクルはまだ研究段階で実用化には至っていないようで、担当氏は正直に技術支援できるようであればぜひ力を貸していただきたい、と話していた。また日本産のSAF燃料の商業化を狙っているとも。
ボーイングでは2050年までにネットカーボンゼロ、を目標に掲げている。ゼロカーボンのためのイノベーションは飛行ルートも含めてさまざまな観点から研究しているとのこと。キーワードはサステナブル(持続可能)。複合材の生産についても自動化で量産化することを企図している。ボーイングではCFRPのリサイクリングセンターにもかなり投資を行っており、いままさに研究開発を進めているところだが、そのリサイクリング技術もさることながら、二次利用の用途(リサイクル材の用途)についても検討を進めているとのこと。これは他でも航空機のCFRPリサイクル材を自動車に使う、というテーマでプロジェクトを進めている会社があるが(岐阜のCFRI)、自動車メーカーがCFRPのリサイクル材を使わなければこのリサイクルループは不可能。なかなか難しいところだ。
また会場でボーイングでは退役した航空機のCFRPのリサイクルはどうしているのか?との質問があったが、これについては検討を進めているという回答にとどまっていた。
(IRUNIVERSE Yuji Tanamachi)
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