ゆく年くる年① E-Scrap市場の2022年 量、質(品位)ともに更に低下の一途をたどる
「25年、基板(E-Scrap)を扱っているが、今年は過去最低。最盛期からすると扱い量は1/10まで減った」と告白するのは百戦錬磨の日系E-Scrap扱い業者。この一言に頷かれる国内の日系専門業者は少なくないだろう。減ったというのはいわゆるPCB(PrintedCircuitBoard)で基板の形をした、もっと具体的にいうならば金含有量がトン中50g以上、という高品位系の基板の扱いが劇的に減ったという。かつては高品位といえばトン中100g以上だったが、今はこういったものを探すことが難しい。
―なぜにここまで扱いが減ったのでしょうか?
「やはりこの市場でも中華系の力をもった方々が参入してきた影響が大きい。基板を装備した設備機器での輸出増、というのもあるが、高品位系の基板は悉く部品取りされて、小型家電とともに破砕粉砕してヤマ(銅、非鉄製錬所)行き、というルートが大きくなった。よって我々専門的に基板を扱う業者への入りは激減した」
―それはすべてのルートで?
「最も顕著に減ったのはスクラップ業者からの入り。ここにチャイニーズディーラーの買いが入り、根こそぎ持っていかれた感がある。高品位系の入札になると今度は大手の貴金属精錬メーカーでありE-ScrapリサイクラーでもあるM産業さんがかなりな高確率で落としている。手が出ない。我々からすると確実に赤字の高値だが、彼らは違うコスト計算があるようだ」
―輸出の影響もある?
「輸出はさほど影響ないかもしれない。部品取りの影響のほうが大きいのでは」
実際、E-Scrapの公式な輸出統計をみると、1年前にはKoreanzinc向けで月に1,000トンに迫る勢いだったが、ここ最近は300トン程度におさまっている。違うHSコードで出荷しているのかもしれないが、オフィシャルではきわめて少ない。
→2022年8月 E-SCRAP輸出入統計分析 輸入数量急増も、単価急落
またKoreanzincに出荷している元締めは日系の商社ではあるのだが、KZが特に良い品位のものを求めているのではないという。
―要するに国内でのE-Scrapのルートが変わったと?
「そういうことですね。日系の老舗のE-Scrap破砕業者もあまりの荷入りの少なさに嘆いている。小型家電系はかなり中国系リサイクラーが入っている。彼らは小型家電と低品基板も一緒に破砕していくので、いわゆる基板屋には流れない。それでも全体的に発生が少ないため、あらゆるE-Scrapアイテムは値上がりしている。特にOLDタイプの基板は金品位が高いので取り合い。OLDのHDD基板はキロ当たり4,000円前後で取引されている。今の新しいHDD基板は2000円程度」
―日系業者に勝機はあるのでしょうか?
「難しいところだが、日本人企業ならではの丁寧な選別、ごみから有価物を見出すような精緻な選別は日系企業の強みだろう。中華系企業は多くがとりあえず量を集めて全部破砕というパワータイプが多いので」
小型軽量化、低品位化が進むE-Scrap市場。かき集めても金品位は10年前からすると圧倒的に低くなっているため利益も薄くなっている。従って国内の銅、非鉄製錬メーカーでも高品位系E-Scrapの入りは激減している。対してもともと低品位系中心だったメーカーへの入りはさほど減っていない。というより、10年前に比べると今流通している基板の8~9割は低品位であるため、もはや高品位、低品位という区分けすら陳腐化しているのかもしれない。
数年前からこういう事態は予想されてはいたが、中華系ディーラーの台頭がなおも厳しい市場環境へと導いている。
また、今は月間1万トン以上のE-Scrapを輸入している日本ではあるが、2年前から言われている欧州からの輸出規制がかかてくれば国内の銅製錬所はさらに処理量が低下することは火を見るより明らかである。
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(IRUNIVERSE YT)
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