サウジアラムコ、油田からのリチウム抽出を計画か 23年は減益も増配、潤沢資金活かす
サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが、油田からのリチウム抽出に取り組み始めた。ロイター通信が3月8日に消息筋の話として、同社とアブダビ国営石油会社(ADNOC)が直接リチウム抽出技術(DLE)の初期段階を実施していると伝えた。3月10日に発表した2023年12月期は減益だったが手持ち資金は潤沢で、新たな挑戦の余裕があるようだ。
■塩水からリチウム、経済性は未知数
ロイターによれば、アラムコなどが計画しているのは油田の塩水からリチウムを抽出する方法で、アラムコは石油生産現場での石油のかん水と廃水の取り扱いに関する専門知識を活用できるとされる。既に米エクソンモービルなどの石油会社も取り入れ始めているようだ。ただ、この方法は従来の露天掘り鉱山などに比べると不確実性が高く、経済的に収支が均衡するかも未知数という。
■EV王国めざしリチウム生産へ
サウジアラビアは国を挙げて石油依存経済からの脱却を目指す。2024年1月には3回目となる国際フォーラム「鉱物資源未来フォーラム(FMF)」を首都リヤドで開催し、鉱業への大規模な振興方針を示した。同国のムハンマド皇太子は電気自動車(EV)産業の育成に意欲的で、同湖には独自ブランドのEV「Ceer」もある。2023年7月には岸田文雄首相がサウジを訪れ、ムハンマド皇太子と重要鉱物の探索などで連携することで合意した。
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■減収減益も配当増、潤沢資金背景に新技術に挑戦
アラムコはそんなサウジの基幹企業でもある。3月10日に発表した2023年12月期決算は、純利益が前の期比25%減の1213ドル(約17丁8400億円)だった。世界的なインフレに伴う原油高騰が一服した影響で減益となったが、純利益額は2019年のサウジ上場以降で最高益だった2022年12月期(1611億ドル)に次ぐ過去2番目の高水準となった。売上高は18%減の4950億ドル。
減収減益にもかかわらずアラムコは前期も配当を増やし、手持ち資金の潤沢さがうかがえる。ロイター通信は、こうした資金の潤沢さが経済性で不透明感の残る油田からのリチウム抽出に取り組む余裕につながっているとも指摘した。
(IR Universe Kure)
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