コバルト市場近況2025#3 急反発、コンゴのコバルト輸出中止で 背後に米中対立か
2025年3月のコバルト市況は急反発している。ベンチマークとなるLGコバルトが3月11日に仲値$12.5/LBに跳ね上がり、2024年6月以来9か月ぶりの高値を付けた。生産国であるコンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)がコバルト輸出を一時停止。コンゴ大統領は3月16日に米国側と会談しており、混乱の背後には米中対立が影響している可能性もある。
■LG、2週間で26%上昇
LGコバルトは2月26日には直近安値$9.95を付け、ほぼ10年ぶりに1ケタ台を記録していた。そこから2週間で26%上昇したことになる。
過去3か月間のLGコバルト (Co99.3%)($/LB)価格の推移
コンゴ大統領府は3月16日、「同国のフェリックス・チセケディ大統領が米国のロニー・ジャクソン議員と会談した」と発表した。
コンゴのチセケディ大統領と米ジャクソン議員
(出所:コンゴ大統領府ホームページ)
これに先立ち、英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)などは2月25日、「コンゴ政府が2月22日からコバルトの輸出を停止したと発表した」と伝えていた。
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コンゴでは中国レアメタル大手の洛陽モリブデン業(チャイナ・モリブデン、CMOC)やスイス資源大手のグレンコアなどが増産し、コバルト価格の下落につながっていた。特にCMOCがロイヤルティの関係で停止していた鉱山を2023年から操業再開したため、コバルト供給が急増していた経緯がある。このため、突然のコンゴの輸出停止は中国側にも波紋をもたらした。
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米国はかねてコンゴでのCMOCによるコバルト増産を「意図的な価格コントロール」と指摘してきた。一方のコンゴは東部で内紛を抱えるため、制圧のために米国との協調を仰ぎたい考えで、3月16日の会談でもコンゴ東部での戦闘と米国の投資機会について話し合った。コンゴは輸出停止は「世界的な供給過剰に伴うコバルト価格の下落に歯止めをかけるため」としており、背後に米国による指示あるいは米国への忖度があった可能性も考えられる。
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■LMEと硫酸コバルトは2年ぶりの高値に
他のコバルトも急反発している。国際価格のLMEコバルトは2023年2月以来、電池向けの硫酸コバルトは2023年7月以来と、1年半から2年超ぶりの高値を付けた。両者はともに統計が取れる20年間での過去最安値圏にあったが、急反発した。
過去3か月間のLMEコバルト価格の推移($/ton)
過去3か月間の硫酸コバルト価格の推移(20.5%min China)(RMB/Mt)
航空機向けなどのハイグレード品であるHGコバルトも3月11日に$14.5/LBを付け、遠い節目とみなされていた$14を回復した。2024年11月下旬以来の高値水準。
過去3か月間のHGコバルト (Co99.8%)($/LB) 価格の推移
■Topics
2月26日
インド電池リサイクル企業のリサイクルカロ(recyclekaro)は、同国バルガールの施設を拡張し、コバルトを含む電子廃棄物のリサイクル能力を年間24,000トン、バッテリーのリサイクル能力を10,000トンに増強した。インドメディアのヒンディー・タイムズなどが2月26日までに伝えた。
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2月19日
フェロニッケルメーカーの大平洋金属(パシフィック・メタルズ、PAMCO)は2月19日、自社ホームページ上で、「カナダ深海鉱物調査会社のザ・メタルズ(The metals company、TMC)との共同実験で、深海で採掘したサンプルから高品位のニッケル-銅-コバルト合金とケイ酸マンガンを生産した」と発表した。
関連記事: 大平洋金属、深海サンプルからニッケル-銅-コバルト合金を商業規模生産 世界初 | MIRU
(IR UniverseKure)
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