週刊バッテリートピックス 「24年の車載電池価格は過去最低」「米国が太陽光発電に追加関税」など
2024年も残りわずかとなり、統計的なニュースも増えてきた。12月9日~12月15日のバッテリー業界では、今年の車載電池パック価格が過去最低水準に落ち込んだとことが話題となった。電気自動車(EV)の失速を受けたものだが、それでも自動車各社の電池投資は続く。米国が中国製品に追加関税を課すなど米中戦の激化懸念もくすぶった。
<国内>
●リチウムイオン火災に警鐘続く 広島や岩手でも
福山市の電池回収イベントちらし
(出所:福山市ホームページ)
広島県福山市は12月18日、市内4カ所で充電式電池などの回収イベントを開催する。11月2日にリサイクル工場で火災が発生したため、分別方法の周知を目指し回収イベントを行う。
プレスリリース:充電式電池やモバイルバッテリー等を回収します! - 福山市ホームページ
岩手県でも、盛岡市の消防署がリチウムイオン火災に警鐘を鳴らす。同市では1カ月間に3件のリチウムイオン電池火災が立て続けに発生したという。
●「あいち次世代バッテリー推進コンソーシアム」が発足 産官学で産業育成へ
愛知県で12月11日、電池産業の発展を目指す連携組織「あいち次世代バッテリー推進コンソーシアム」が発足した。人材育成や交流、次世代電池の研究開発を、産官学で推進する。
愛知県が運営事務局となり、トヨタ自動車やデンソー、大学研究機関など111の企業・団体が参加する。EVの急拡大に伴い電池産業の育成が急務とされる中、関連企業や研究機関の集積がある地域的ポテンシャルを生かすべく結成した。
プレスリリース: PowerPoint プレゼンテーション
●住友電気工業、柏座にレドックスフロー電池納入
住友電気工業(本社:大阪市中央区)は12月11日、柏崎あい・あーるエナジー(本社:新潟県柏崎市)にレドックスフロー電池 (RF電池)を納入したと発表した。
関連記事:住友電工、新潟県柏崎市にレドックスフロー電池を納入 | MIRU
●バッテリー議連、新会長選出
未来社会を創出する、バッテリー等の基盤産業振興議員連盟(バッテリー議連)は12月10日、第16回総会・勉強会を東京都千代田区の参議院議員会館で開催し、新会長に渡海紀三朗衆議院議員を選出した。
関連記事:バッテリー議連、新会長に渡海紀三朗衆議院議員 | MIRU
<海外>
●欧州委、「Raw Materials week 2024」開催 バッテリーリサイクル論議
欧州連合(EU)の行政機関である欧州委員会は12月9日-13日、原材料の大型会議「Raw Materials week 2024」を開催した。この中ではバッテリーリサイクルについても論議があった。
関連記事:欧州、バッテリーリサイクルの理想と現実 財政難で計画の半数が危うく 会議で報告書 | MIRU
●米国、太陽光発電材料などに追加関税
米通商代表部(USTR)は12月11日、一部中国産タングステン製品への輸出関税を引き上げると発表した。タングステンバーなどで25%に引き上げる。太陽光発電用ウエハ、ポリシリコンは50%に引き上げる。2025年1月1日付で発効する。
関連記事:米国、中国産タングステンの一部に追加関税 太陽光発電用ウエハも、1月1日から | MIRU
●24年の車載電池平均価格、過去最安値 BNEF
2013年からの電池パック平均価格の推移
(出所:BNEFホームページ)
米調査会社のブルームバーグNEF(BNEF)は12月10日、2024年の電気自動車(EV)向け電池パックの世界平均価格が前年比20%下落し1キロワット時あたり115ドル(約1万7000円)だったと発表した。2013年の調査開始以来の最安値。セル単体は同78ドルだった。
バッテリーパック価格の下落は特に中国で顕著で、中国での平均価格は94ドルだった。また、バッテリー価格の下落率は金属価格の下落率よりも大きいため、原材料コストが高止まりしている状態となり、メーカーにとって苦しい状況となった。
●米国、重要鉱物に25億投資へ
米エネルギー省(DOE)は12月10日、ホームページ上で、「重要鉱物産業に1700万ドル(約25億7600万円)を投資する」と発表した。
関連記事:米国、重要鉱物産業に26億円を投資 レアアースフリー磁石やスクラップ利用など | MIRU
●欧ステランティス、中国CATLとスペインに工場
欧州自動車大手ステランティスは12月10日、自社ホームページ上で、「車載電池世界最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と折半出資し、スペインに電気自動車(EV)向けリン酸鉄リチウム(LFP)電池の工場を建設する」と発表した。
関連記事:欧ステランティス、中国CATLとスペインにLFP工場建設へ 6500億円投資 | MIRU
●英ケータハム、新型車に「液浸冷却バッテリー」搭載へ
英スポーツ車メーカーのケータハムカーズ(Caterham Cars)は12月9日、自社ホームページ上で、「開発中のスポーツEVの試作車に、バッテリーセルを冷却液で均一に冷やす『液浸冷却バッテリー』を搭載する」と発表した。
電池システム開発を手掛ける台湾の行競科技(Xing mobility)の液浸冷却バッテリーを使用する。冷却液にバッテリーセルを浸して効率的に冷やし、セル内の熱暴走を防ぐ。急速充電器を用いても高熱になりにくく、充電時間の短縮も見込めるとする。
今回の試作車は、東京R&Dおよびヤマハ発動機と共同開発し、2025年の完成を目指しているEVスポーツクーペ「Project V」。
プレスリリース:CATERHAM TO USE IMMERSION COOLED BATTERY PACKS IN ITS NEW EV SPORTS COUPÉ | Caterham
(IR Universe Kure)
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