週刊バッテリートピックス 「原子力電池の開発進む」「トヨタ福岡工場様子見」など
2025年3月24日~3月30日のバッテリー業界では、日韓それぞれで原子力電池の話題が出て目を引いた。全固体電池をはじめ次世代電池の開発が進むが、樹脂電池のAPBの困窮が伝わるなど収支均衡は容易ではない。トヨタがバッテリー工場の建設を見合わせるなど、電気自動車(EV)市場の失速が落とす影も大きい。
<国内>
●JAEA、放射性物質利用の原子力開発電池を開発へ
日本原子力研究開発機構(JAEA)は3月28日、ホームページ上で、「放射性物質が発する熱を利用した原子力電池の開発に着手した」と発表した。実用化すれば日本初となる。
新たな原子力電池は放射性廃棄物のアメリシウムの崩壊熱を電気に変えることで発電し、100年以上使用が可能と見込まれる。月面探査や原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の地層処分での活用が期待される。
開発事業のイメージ
(出所:JAEAホームページ)
プレスリリース:アメリシウムによる半永久電源の実用化に向けた開発に着手 -発熱性の放射性廃棄物を有効利用、100年以上メンテナンス不要な小型電源に-|日本原子力研究開発機構:プレス発表
●福井県、APBに補助金返還命令
福井県と同県越前市が、同市に本社を置く電池スタートアップAPBに対して、企業立地促進補助金の交付取り消しと返還命令を通知していたことが、3月28日にわかった。NHK福井などが同日伝えた。3月時点で同社が市税と県税を滞納していると確認されたため。
APBは潜水艦などに利用できる「全樹脂電池」を製造し、次世代リチウムイオン電池として期待が高かったが、技術の中国漏洩などもあり経営危機に陥っていた。
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●古河電池、3月期業績予想を上方修正
古河電池は3月27日、2025年3月期業績予想の修正を発表した。売上高は800億円から830億円、営業利益を40億円から54億円に上方修正した。国内外の販売堅調や為替差益の計上を反映させた。
プレスリリース:pdfFile.pdf
●いすゞ、米カミンズからトラック向け電池供給へ
いすゞ自動車は3月27日、「商用車のパワートレイン(駆動系)事業で協業する米エンジン大手カミンズ(本社:米インディアナ州)との間で、同社子会社からのEVトラック用電池の供給契約を締結した」と発表した。2027年に北米市場への投入を予定している中型トラック「Fシリーズ」のBEVに使用する。
プレスリリース:いすゞ、米国Accelera by Cumminsと中型BEVトラック向けバッテリーパワートレインシステムの供給契約を締結 ~北米市場における部材の地産地消型サプライチェーンを構築~ | いすゞ自動車
●ネオジム磁石の佐川博士がスウェーデンで講演
東北大学は3月27日、「東北大学特別招聘プロフェッサーの佐川眞人博士と本学総長特別顧問の大野英男教授(IVA International Fellow)が、スウェーデン王立工学アカデミー(IVA)で3月11日に開催されたセミナー「Magnets for a Sustainable World」に登壇し、講演を行った」と発表した。
関連記事:ネオジム磁石の佐川博士、スウェーデン王立工学アカデミーやWISE Dialogueで講演 | MIRU
●タカノ、多接合太陽電池の研究開発が進展 NEDOから委託
検査計測装置や産業機器を手掛けるタカノ(本社:長野県上伊那郡)は3月27日、自社ホームページ上で、「多接合太陽電池の研究開発が進展した」と発表した。
同社は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から同研究開発を請け負う。今回は東京大学先端科学技術研究センターとの共同研究で、研究事業全体の責任はシャープが負う。
プレスリリース:NEDO 委託事業にて多接合太陽電池の評価・検査技術の開発を推進いたします | タカノ株式会社
●神戸製鉄所、米電池スタートアップに出資
神戸製鋼所は3月25日、「同社の機械事業部門が、米電池スタートアップのラザニア・ワン(LASAGNA.ONE INC、本社:米国カリフォルニア州サンノゼ)に出資したと発表した。出資額は明かしていない。
ラザニア・ワンは米シリコンバレーに本社を置き、全固体電池開発を手がける。
プレスリリース:全固体電池スタートアップへの資本参加について|KOBELCO 神戸製鋼
●三菱マテリアル、ペロブスカイト太陽電池用インク開発 エネコートと
三菱マテリアル(MMC)は3月24日、自社ホームページで、「ペロブスカイト太陽電池について、従来比で約1.5倍の発電効率を実現する塗布タイプ成膜用インクを開発した」と発表した。エネコートテクノロジーズ(本社・京都府)との共同開発。
関連記事:ペロブスカイト太陽電池の発電効率を向上させる電子輸送層の成膜用インクを… | ニュース | 三菱マテリアル
●マクセル、角形LIBから撤退 中国子会社は解散
マクセルは3月24日、自社ホームページ上で、「角形リチウムイオン電池(LIB)の生産を終了する」と発表した。需要低迷による収益悪化のため。中国・無錫市にある子会社での生産を5月に終え、同子会社を解散する。解散日は未定。
プレスリリース: IRニュース|マクセル
●トヨタ、福岡の電池工場建設を様子見か EV失速で
トヨタ自動車が福岡県に計画していたEV向け電池工場の建設が遅れる可能性が浮上した。世界のEV販売の失速を受けた。関係者の話として朝日新聞など各紙が3月24日までに伝えた。
トヨタは2024年夏に福岡県での工場設置を明かしていた。
関連記事:週刊バッテリートピックス 「トヨタ福岡に新工場」「CATLが4年ぶり減収」など | MIRU
●岐阜のリサイクル工場で火災 LIB火元か
岐阜新聞によると、3月24日夜、県内のカーボンファイバーリサイクル工場で火災があった。けが人はなかった。
関連記事:カーボンファイバーリサイクル工業で出火 LIBスクラップなどが原因か? | MIRU
<海外>
●数千年使える「ベータボルタ電池」開発 韓国の教授
韓国の大邱慶北科学技術院のイン・スイル教授らの研究チームが、炭素の放射性同位体である炭素14で作ったプロトタイプの「ベータボルタ電池」を開発した。ライブドアニュースなどが3月27日に伝えた。
ベータボルタ電池は原子力電池の一種で、理論上は数千年使うことが可能。同教授らは、この電池を3月23日から27日まで開催のアメリカ化学会(ACS)の春季大会「ACS Spring 2025」で発表した。
●EU、重要鉱物プロジェクト47を選定 電池向け材料に比重
欧州連合(EU)は3月25日、ホームページ上で、「重要鉱物の優先プロジェクト47件を選定した」と発表した。リチウムなどバッテリー向け鉱物を特に対象とする。
関連記事:EU、重要鉱物の優先プロジェクト47件を選定 安全保障強化で域内生産を促進へ | MIRU
●中国の長安汽車、高出力の全固体電池を27年に量産へ 現地報道
中国の長安汽車は、最大400Wh/kgのエネルギー密度を実現する全固体電池を2027年に量産開始する計画だ。新浪網などの中国メディアが3月24日、長安汽車がドイツで開催した新車発表会の内容として伝えた。
●中韓車載電池、決算は厳冬
中韓車載電池大手の2024年12月期決算が出そろった。
関連記事:海外企業の24年通期決算①車載電池、厳冬 EV低迷で軒並み減収 BYDも増益率鈍る | MIRU
(IR Universe Kure)
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