カーボンニュートラルプラスチック#1 バイオブラ
プラスチックは、金属材料などと比較して軽く、かつ加工が容易で、強度も耐久性も高く、安価である。さらに金型を用いれば大量生産できる。しかし、これまでのプラスチックには大きな課題が2つある。
1、 1つは、廃棄後に環境へ悪影響を及ぼすことである。埋めても分解されず、だからと言って燃やせば大量の二酸化炭素が発生して地球の温暖化を促してしまう
2 、もう1つは石油という有限の資源を大量に消費してしまうことだ。
バイオプラスチックは、上記2つの課題を克服するべく、1990年代から開発が進んできた。「海洋マイクロプラスチック問題」などをめぐる昨今の環境意識の高まりを受け、注目を集めている。
生分解性プラとバイオマスプラ
バイオプラスチックは、「生分解性プラスチック」と「バイオマス(生物由来)プラスチック」の総称とされる(Fig1)。このうち「生分解性プラスチック」は、微生物の働きで低分子化合物に分解されるプラスチックをいう。「分解性」という機能に着眼した分類である。化石燃料由来か生物由来かの軸(縦軸)、生分解性か非分解性かの軸(横軸)で4つに分かれる。バイオプラスチックは生分解性プラスチックと、生物由来のプラスチックの両方を指す。
Fig1生分解プラスチック、生物由来/化石燃料由来での分析例
生分解プラスチックは土中に埋めるなどして微生物がいる環境下では分解され、最終的には水と二酸化炭素(CO2)になるので、自然界に悪影響を与えないといわれている。
これに対してバイオマスプラスチックは、動植物から生まれた、再利用できる有機性の資源「バイオマス」を原料とするプラスチック。「原料」に着眼した分類である。バイオマスプラスチックに含まれる炭素は、元は植物が空気中の二酸化炭素から取り込んだものである。燃焼した後二酸化炭素が発生するが、それはもともと空気中にあったものが戻っただけで、二酸化炭素は増えていないとみなすことができる。すなわち、カーボンニュートラルである。有限な石油資源も消費しない。バイオマスプラスチックは2種類ある。それは
1 、全面的バイオマス原料プラスチック
2 、部分的バイオマス原料プラスチック
全面的プラスチックは、原料がバイオマス100%のプラスチックを指す。一方、全部ではなく原料の一部がバイオマスのものを部分的バイオマスという。部分的バイオマス原料には化石由来の成分が含まれているものの、一般的なプラスチックより環境負荷が低いものを指す。いわばハイブリッドEV車のようなものである。
現在一般的な植物などの再生可能な有機資源(バイオ資源)を原料としてつくられたバイオプラスチックの原料には、コーン(トウモロコシ)、コメ、小麦、キャッサバ、馬鈴薯、サツマイモなどがある。
◆バイオマスプラスチックの種類
バイオマスプラスチックには、主に以下の3種類がある。
・バイオポリエチレン:汎用プラスチックと呼ばれるポリエチレンのバイオ由来への置き換え
・バイオポリカーボネート(バイオPC):エンプラの一種であるPCをバイオ資源由来に置き換えたもので、PCの持つ高い耐衝撃性と耐熱性を生かし、自動車部品などに使用。
・バイオペット
(椿匡之)
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