化石燃料代替樹脂である生物由来プラスチック実例
2000年初頭、欧州を中心として二酸化炭素削減の動きがあった。日本の家電、事務機メーカーはこの動きに呼応する一部のメーカーがあった。事務機器ではリコーが積極的であった。筆者は外資系エレクトロニクスでPCペリフェラル、具体的には記録式DVD/CDドライブの光学モジュールとICの販売、マーケッティング等の業務に従事していた。株式会社リコーは大手顧客であった。その当時、家電、PC機器製品のトランスポーテーションダメージを防ぐため、梱包箱の一部には発泡スチロール材が多く使用されていた。輸送途中での不測の落下等に対するために梱包箱内部に製品を発泡スチロールを上下左右で挟み込むようにセットされていた。Fig1は製品梱包の例である。
Fig1 製品梱包の例
当時欧州では下記の観点から発泡スチロールから環境負荷の少ない代替品を推奨してていた。
課題
- 発泡処理の際、フロンを使用しているため、オゾン層破壊の要因の一つと考えられる。
- 質量当たりの熱量が高く、ごみ焼却処理場で焼却する際、焼却炉を痛める。
- リサイクルするためには、分別回収する必要があるが、密度が低いため、回収コストがかさむ。
このような観点から、最近では電化製品のクッション剤として発泡スチロールから、段ボールの形状を工夫するなどして代替が進んでいる。
リコーは自社製品の海外事業展開が速く2000年当時には対応していた。
また2010年以降、事務機器の筐体(コピー機などの外装樹脂)の一部をバイオ材料に置き換えることを検討していた。リコーとしてのエコへの取り組みについての考え方は以下であった。
多くの電子機器製品に用いられている樹脂は、石油が原料である。画像機器へのバイオマス樹脂の採用促進することにより石油資源投入量とCO2排出量の削減を実現し、環境貢献を目指す。従来はポリ乳酸(PLA)とポリカーボネート(PC)をポリマーアロイすることにより、難燃性5VBの材料を実現していた。この材料のバイオマス度は25%程度で、環境負荷の高いOCを使用している。リコーは、石油系樹脂を用いない環境負荷の少ないPLAの改質樹脂を用い、筐体部品を実現した。この樹脂はUL94難燃規格の5VB を取得し、新しいプロダクションプリンターに搭載した。この新しいPLAはバイオマス度40%という高い高難燃の電気機器部品用途として最も高いバイオマス度であり、環境負荷削減に貢献している。
Fig2 バイオマスプラスチックの種類
画像機器(MFコピー機など)の樹脂部品に求められる特性とバイオマス樹脂の課題
画像機器に使用される樹脂部品は、重量の大井ものとして、①筐体部品が約50%、②内装部品が約20%、その他が30%の割合と言われている。これらの部品仕様重量は画像機器樹脂部品の凡そ90%弱を占めるといわれている。Fig3に要求特性、使用されている樹脂の例を示す。
Fig3 画像機器使用される樹脂の要求項目
バイオマス樹脂の内最も用途開発がなされているPLAの画像機器部品に適用する場合の課題をまとめると次のようになる。
1 材料の課題
- 結晶か速度が遅く、結晶か温度は約120℃と低い。そのため結晶化しづらい。非晶質では耐熱性が低い。
- シャルピー衝撃強度:2KJ/m2以下で耐衝撃性が低い。
- 難燃性が難しい。
- 加水分解しやすく、長期耐久性に課題が残る。
2 加工の課題
- 流動性が高く、射出成型時に充填不十分でもバリが発生しやすい。
- 金型内で結晶化させるために成形サイクルが長くなる。
したがって、PLA単独では事務機器部品に適応は難しく、耐熱性や耐衝撃性を向上させるとともに、難燃性と耐久性の付与が必要世ある。
この対策としては、これらの部品には、ポリカーボネート(PC)やPLAや、ABSとPLAをポリマーアロイ化し、難燃性5Vを確保した材料がある。ただし、この例ではバイオマス度は25%程度で、また環境負荷の高いPCを使用しているため、樹脂製造時のエネルギー使用量や、樹脂製造時と最終的に部品を焼却した際のCO2排出量の削減効果は小さい。
椿匡之
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