ユニークな韓国化学品メーカーNH CHEMICALA LTDの概要
該社は、Holding CompanyのNamheung Corporationと英国Inspecが資本及び技術提携から1997年に発足した様々な潤滑油原料・製品となるPAG (Polyalkylene Glycols)の3大メーカーの1つである。(他に米国DOW,ドイツBASF) 2002年にInspec社の株を全て買収し、現在は100%の子会社として現在に至る。(本社Seoul市 JK KIM社長)
工場は、ULSANに年間3万トンとコロナ禍などで遅れていた新工場が昨年7月ONSANに年間7万トンで立ち上がり、合計10万トンの規模で積極的な製造販売を展開中。原料EO(酸化エチレン)とPO(酸化プロピレン)の比率により、親水性~親油性までの幅の広い範囲の製品製造を行い、用途は鉄鋼用のQuencher,繊維紡糸用、工業用潤滑油用、切削工具用、極圧潤滑油用など。顧客の要望に合わせた日本的な細かい対応が可能で、他にPPGとPEGなども併産している。
近年、環境対応型フロン1234yf利用のカーエアコン用特殊潤滑油に力を入れており、海外での展開に注力し始めている。本製品は、長く出光興産1社で世界市場を抑えてきたMonopoly製品であったが、既存メーカーには無い環境に優しい製法を開発。(触媒など環境対応を考えて、両末端をBlockしているDouble End Capped PAGの新製法を特許化。)カーメーカー向け純正用として韓国現代自動車、起亜自動車などで認可済み。新工場は、十分な製造Capacityも有しており、該社期待の製品であるとの事。
実際、温室効果的な問題のあったフロン134aが新車では使用禁止となり、環境対応型1234yfに世界的に切り替わってから、はや10年近くが経過。ようやく新フロン搭載車両の冷媒ガスの詰め替え時期が始まった事、未だ旧車両に残っているフロン134aガスにも1234yfにも、一つの品種で対応できる事、原料からの一貫生産ができる為コストメリットがある事、製法上の利点で製造時の汚染水がほとんど出ない事、ゴム樹脂部品への影響が少なく静音性が更に良い事など品質、価格、安定供給性など総合的な優位性も認められ、本格的なStartできる非常に良いTimingと言える。
カーメーカーでは必須の2社購買品として国内外での新車用純正市場にも、過去PAG SingleCap品でしか対応さえざるを得なかった詰め替え用途のAfter市場にも今後期待ができる。
又、新用途として米国などでは、Shopping Mallなどの大型室内冷房機器用に本製品が採用。
更に、現存潤滑油原料中で一番化学的安定しているPAG故に、その他広い用途展開も可能。
世界のPAGの状況としても、ロシアのウクライナ侵攻の影響で独BASFは、生産が大きく落ちており、NHが一部サポートをしている。(もともとDOW、BASFとも基本製造技術は同じものである故、製品としてはほぼ同じと考えられ、PAG自体の競争力も上がっている。)
一方、PPGも大手ウレタンメーカーに長く実績あり、汎用品はもとより、高分子品、特殊品に強みあり。PEGもEO付加数を替えたOEMも得意としている。
最後に出発原料であるEO,POとも危険性の高い原料であるが、新工場はKPIC(大韓油化工業)、S-Oil(アラムコ62.5%株主)の工場と隣接しており、2社の原料メーカーとPipe Lineでつながる供給体制となっている。このような理想的Locationは化学工場において、希有なものであると言える。
韓国は、日本を始め全世界に多くのFTA(自由貿易協定)を結んでおり、輸出の優位性もある。
これだけのユニークな化学会社であり、これからの発展、展開に期待したい。
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K.Sakuma
化学品商社で経営企画、開発、貿易を担当してきました。
海外駐在を含め、70ヶ国に及ぶ訪問国が示すように新規製品開発・
市場開拓・現地活動を得意としており、Positiveで超行動的人間です。
英文契約書や種々の海外交渉・提案型の具体Business Coordinate・
Consultant・戦略構築はお任せ下さい。
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