アジアン廃プラマーケットレポート2024年8月下旬 ぐずつきの残るプライム市場と下支えにより持ち直すリサイクル市場
原油価格が1バレルあたり71ドル(8月21日現在)とかなり値下げの傾向にある中で、プライム市場においては製品ごとに価格の上下幅が安定しないなど、悲観的かつ不安定な市場の状況が続いている。一方リサイクル市場においてはいわゆる政府の「持続可能性プログラム」に則った業者は調子が上向いているとの事である。以下の内容は中国のFukutomi Co Ltd 代表であり、中国の再生プラスチック協会の理事長でもあるSteve Wong氏のレポートをもとに作成した。
(原油および樹脂材料相場の推移)*原油はUS$、他はトン当たり人民元価格)
プライムバージン価格は、中国の主要なバージンポリマー・ウェブサイトから取得
人民元(RMB)表示、消費税込み、為替レートは1米ドル=7.2648中国円。
(NY原油相場の推移 US$/burrel)
中国の需要拡大に対する市場関係者の期待が後退したため、原油価格は先週金曜(16日)のニューヨーク市場で2%近く下落し、1バレル76.65ドルとなった。中国の最近の統計では、7月の経済活動の鈍化が指摘されており、新築住宅価格は過去9年間で最も速いペースで下落し、工業生産高は鈍化し失業率も上昇している。中東の地政学的緊張による供給の混乱は、実際に存在する障害よりもむしろ理論的な要因によるものが多いと考えられている。
夏の終わりに近づくにつれ、一部のトレーダーは伝統的な停滞期後の市況回復を予想しているが、欧米向け製品の輸出先が輸入関税の少ない低コスト国にシフトしているため、悲観的な見方もされている。プライム樹脂は引き続き生産能力過剰の問題に直面しており、更に新しい工場が建設中。その一例として、以前はナイロン66を輸入に頼っていた中国は、現在ではナイロン66を国内で生産しており、その能力は今後数年間で年間1,000万トンに増加する見込みとなっている。
プライムプラスチックの価格は不安定な状況となっている。PP、ナイロン、PET、PVCなど一部の価格は低迷を続けているものの、ABS、HIPS、LDPE、PMMAなどの価格は上昇している。市場のコメンテーターは、こうした価格上昇にもかかわらず、需要不足が取引を妨げ、市場の動きを制限していると指摘している。これは不確実な市場の状況が続いていることに起因すると見られている。化粧品、携帯電話、時計、バッグなどの高級ブランドは、中国での販売開始以来初めて売上が減少したと報告されており、海外の自動車メーカーも過去最悪の売上を記録している。
リサイクル原料は過去2週間、安定して推移している。リサイクル業者の販売店は義務化されたものであれ自主的なものであれ、環境の持続可能性を支持しており、プレミアムのついた価格で販売されている。持続可能性プログラムがない場合、98フィルムからのLDPEナチュラルペレットは採算の取れない価格に苦戦しており、原料コストはトン当たり500ドル前後、販売価格はトン当たり800ドル前後となっている。逆に、一部のPEリサイクル業者は、製品の生産者から1トン当たり1,000ドルを超える価格で再生原料の注文を受けており、1トン当たり550ドルで喜んで購入するつもりでいる。
(PET(アジア市場取引価格 US$/ton)とHDPE(高密度ポリエチレン JPY/kg)の推移 年間)
HIPS(非発泡ポリスチレン)ペレットは、各種電化製品の品質要求を満たすため、コンパウンド業者に販売され、プライム樹脂に近い価格で10月までの注文が確保されている。米国では、PETフレークとHDPEペレットの販売が引き続き好調で、価格はプライム価格を大幅に上回るトン当たり2,000ドルを超えている。他のリサイクル原料、特にボトルやPVCと同じ流れにないHDPE射出は、プライム価格の低迷と市況の低迷により苦戦している。
廃プラスチックは、分別された消費者向けHDPE牛乳びん、PETボトル、PEグレードAフィルム、ナイロン漁網、HIPS、EPS、POM、PMMA、PCなどのエンジニアリング・プラスチックなど、再生原料の市場が確立されているところでは好調に推移している。これらの材料は、輸出国内で留められるか、海外市場で競争力のある価格設定が可能であれば輸出されることが多い。しかし、それ以外のスクラップ材は売れ行きが鈍い。例えば、自動車産業からの混合材料や、包装産業からの混合フィルムは、労力と時間を必要とするためだ。農業廃棄物フィルム、低品位電化製品、汚染フィルム、PPカラー大袋、PPひもなど、回収率の低い素材は販売が難しい。
アジアにおけるPPとHDPEの価格が下がり続けているため、ランバーラップ、郵便袋、MRP、買い物袋のような低価格の素材は、運賃が高いがペレット価格が低いため、東南アジアでは経済的にリサイクルできない。リサイクル業者は現在、持続可能性に重点を置き、生き残っていくことはできているものの原料を巡って争っている業者と、従来の最終用途市場での経済効率を求める業者の2つに分かれている。
(IRUNIVERSE/MIRU)
関連記事
- 2025/06/16 三菱ケミカル 三菱化学高分子材料(南通)有限公司移転決定
- 2025/06/13 レゾナック、日本製鉄他 排出 CO2 の有効活用によるグリシン製造研究開発が、NEDO 採択
- 2025/06/13 東ソー クロロプレンゴムの生産能力を増強
- 2025/06/13 自動車リサイクルサミットⅣ 講演者紹介: Power eee 株式会社 取締役副社長 芋生誠 氏
- 2025/06/12 環境省 地産地消型資源循環加速化事業の2次公募(令6補正事業)発表
- 2025/06/12 環境省 プラスチック等資源循環システム構築実証事業の二次公募開始
- 2025/06/11 自動車リサイクルサミットⅣ 講演者紹介: 日本シーム株式会社 営業本部 営業部長 舩橋 悟
- 2025/06/11 BASFコーティングス トヨタモーター ヨーロッパと「Body&Paint プログラム」開発で戦略的パートナー締結
- 2025/06/10 蝶理、中国・CovationBioと戦略提携契約締結-バイオベース素材の普及へ
- 2025/06/10 精工集団と横河電機 包括的な戦略的協業契約を締結