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第2回CEシンポジウム in TOKYO備忘録 熊本大学 外川健一

 2023年10月30日月曜日、今年はハロウィンの喧騒も前日にはどうもなさそうで、落ち着いた雰囲気での東京でIRユニバース主催の第2回サーキュラーエコノミーシンポジウムin Tokyo が開催された。

 

(関連記事)

10月30日(月)第2回サーキュラーエコノミーシンポジウム in TOKYO①

10月30日(月)第2回サーキュラーエコノミーシンポジウム in TOKYO②

 

 

 当日は質疑応答でも必ず手を挙げてくださった製錬メーカー系のS氏(また、この方の質問がいいところをついていた気がします)のほか、多くの方が質問をされ、進行役の原田先生はとくにタイムマネジメントが大変だったと思う。以下、当日の講演に関してあくまでも私見を残しておきたい。

 

10:40-11:10 講演① 経済産業省 産業技術環境局 資源循環経済課 吉川 泰弘氏

            「サーキュラーエコノミーの加速に向けて」

 

 吉川氏の講演は経産省のサーキュラーエコノミー政策に関するもので、従来の3R・循環型社会構築政策とはかなり違いがあることを強調されていた。

 すなわち経済性のある循環を創りだすため、動静脈が連携して新しい産業を興すことの重要性である。

 

 だからある意味政策的に少し無理をしてEV化を進めている欧州や中国のように、日本も戦略的に循環経済に向けた産・学への支援を行いたいとのことであった。

 

 気になった点を2つ。まず、成長志向型の資源自律経済の確立に向けた検討体制を築くということで、省内横断体制を構築するとのことであったが、現在何よりも求められているのは省庁間横断体制、縦割り行政の弊害をいかにして壊していくかであろう。依然として省内の縦割りを何とかできないかというレベルだったのは一歩前進かもしれないが、道は遠いと感じた。

 

 もう1つは「日ASEANサーキュラーエコノミーイニシアティブ」であるが、E-wasteの適正処理と当地で静脈資源からつくられた再生資源を輸入する計画とうかがい、質問もし確認したが、これは2005年から経産省や環境省が行っていた国際資源循環政策とどこが違うのかわからない。CEの連携を構築するならば製造業そのものの変革、つまり動静脈連携をASEAN諸国でも日本がイニシアティブをとって行うならばわかるが、そのような計画ではなさそうなのが気になる。

 

11:10-11:40 講演② 公益財団法人日本生産性本部 喜多川和典氏

            「EUの第2次CE行動計画における重点政策」

 

 EUの最新動向をみっちり詰め込みながら、1990年代からの政策の変化について触れた講演で、質問時間がほとんどないほど喜多川氏の熱弁に一同聞き入っていた。

 

 気になる点が1つ。喜多川氏は、欧州ではEPR政策は評判が悪く、1990年代後半からIPP:Integrated product policy、そしてCE時代の現在はSPP:  Sustainable public procurement というキーワードで政策の変遷が語られた。

 

 しかし、筆者の知る限り今年指令から規則に格上げされた使用済自動車規則では、再生材の使用は自動車メーカーの拡大生産者責任として課せられたということで、むしろEPRが強化された印象である。電池規則の改正もEVの電池の回収・再資源化の責任は自動車メーカーにあるようで、この点はそんなに単純ではないと感じている。

 

11:40-12:10 講演③ 一般社団法人日本自動車工業会 嶋村高士氏 

            「自動車リサイクルへのメーカーの取組み状況」

 

 嶋村氏曰く、今回のプレゼンは毎年行われる自動車リサイクル法のサーベィに関する産構審・中環審合同会議用に準備していたものだそうだ。そういえば、例年ならばこの時期には前年度の自動車リサイクル政策についてのサーベィと各業界の取り組みが報告されている。(2019年は9月10日、2020年は8月19日、2021年は10月29日、2022年は11月7日と、徐々に審議会での報告が遅くなっている?) 

 

 とくにLIBの再資源化に関する自工会の取り組みの説明で嶋村氏が力説されていたのは、廃プラの場合中国が厳しい輸入規制を行ったら、中国資本が日本でリサイクルビジネスを始めてどんどん中国にもっていった。LIBの場合も日本でブラックマスを作る企業は電池メーカーの破砕くずを主原料としており、国際競争力があるのか問題だ、と指摘された点である。

 

 「では、どうしたら中国をはじめとする外国資本よりも競争力の強い業界になれるのか?」

 嶋村氏は明確に答えなかったが、CEの動静脈連携の成功のカギはまさにこの点にあると思われる。つまり、外国資本と同じ土俵で競争できる環境を創ることが肝要だろう。

 

 13:00-13:30 講演④ 埼玉県 環境部 資源循環推進課 尾崎範子氏

            「埼玉県のサーキュラーエコノミー関連施策について」

 

 今回はランチを会場でサンドウィッチと珈琲という軽食でとるスタイルとなり、午後の部は予定通りスタート。

 実はこの夏、愛知県がCEに関して積極的な取り組みを行っていることを調査したが、埼玉県も負けてはいない。いずれの県も知事の意識が高いのが大きいのかもしれない。

 講演では詳しい説明はなかったが、「埼玉県サーキュラーエコノミー型ビジネス創出事業費補助」で選ばれた7つの事業の内容に関心があったので、それを詳しく教えていただきたかった。

 帰宅してウェブサイトで、以下を確認した。

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0507/r5-hojyo.html

 ユニリーバと取り組む幼稚園を軸としたサーキュラーエコノミー事業の採択には、少々興味を引いた。ユニリーバはグローバルサウスの大きな市場に向けて、同社の石鹼で手を洗う習慣を幼児期から身に着けてもらうことで、感染予防をはじめとする衛星ビジネスを拡大させた。このように外資系メジャーとの連携は非常に興味深い。

 

13:30-14:00 講演⑤ パナソニックホールディングス株式会社 田島 章男氏

            「サーキュラーエコノミー実現に向けた取り組み」

 

 司会をされた原田先生もコメントしていたが、改めて家電リサイクル法は、わが国でリサイクルしやすい素材や解体しやすい設計を促すことに最も資した法律であろう。家電リサイクル工場でも人件費の削減と業務の効率化に向けて、エアコンの室外機のビスを外し解体するロボットの動画なども興味深く拝見した。

 

 しかし筆者が痛感したのは、パナソニックはそれこそPaaS: Product as a Service を考えた各種事業を展開していることである。それが「冷やす価値」の提供であったり、リファービッシュにより、様々な店舗に合わせたスーパーマーケットの店舗のデザインであったりである。

 

14:00-14:30 講演⑥ 株式会社EVERSTEEL 田島圭二郎氏 

            「鉄鋼業の脱炭素に向けた、鉄スクラップ画像認識AIシステム」

 

 同社の目玉商品は、AIを用いて鉄スクラップ検収の精度を上げ、売り手も買い手も納得し商売するような、鉄スクラップの売買を行うことを目指した装置である。すでに電炉メーカー数社が購入しており、これまでベテランの勘で決められていた鉄スクラップの品質が、大いに変わっていくのかもしれない。

 残念ながら資料は配布されなかったが、電炉業界にとってCEというか、とくにカーボンニュートラルは追い風であろう。この追い風を活かして、この業界の発展のため様々な装置の開発されるのは、観ていて楽しい。

 

14:30-15:00 講演⑦ 金城産業株式会社 金城 正信氏 

            「これからのGX&CE戦略への取組み」

 

 愛媛県に拠点を置く金城産業の金城社長が最も惹かれた考えはゼロエミッションである。そしてCEやGXにおいても、ゼロエミッションの思想が脈々と流れているということである。

 

 私が注目したのは氏の小型家電リサイクルに対する取り組みである。金城氏は同社が全国トップクラスの小型家電の回収やリサイクルが行われていることを強調していたが、質疑応答のなかで、同社の営業マンが四国の各自治体の職員にできることから始めましょうと呼びかけ、各自治体の能力に応じた回収を行った結果、徐々に自治体職員の意識が変わった模様である。

 

 ただ、小型家電リサイクル法に関する公的データは、この法律が促進法ゆえなのか発表されていないのも問題であると感じた次第である。

 

15:20-15:50 講演⑧ 一般社団法人日本RPF工業会 岡弘氏 

            「カーボンニュートラルに資するRPFその世界的な需要増傾向について」

 

 第2講演(喜多川先生)で欧州ではサーマルリサイクルやケミカルリサイクルが評価されていないお話を聞いたが、この講演では改めて、それは建前であると感じた。

 

 実際にロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ地区への攻撃などで、化石燃料の価格はいっそう高騰し、それでもそれに依存している人々が多く、需要はどんどん伸びているのが実情であろう。RPFは東南アジアでも評判が良さそうで海外での需要も見込まれるという。

 

 RDFはごみ由来だから失敗したが、RPFはその成分がしっかりわかり、基本的に炭素と水素、および酸素である。

 日本国内市場が少子高齢化で縮小する中、「何もしない」で縮小する戦略もあるが、海外市場の開拓は、確かにこのような現地ニーズに合った考え方とも思われる。

 

15:50-16:20 講演⑨ 富士加飾株式会社 杉野 守彦氏

            「風力発電ブレードの真のサステナブルリサイクルについての提言」

 

 杉野氏の講演は私が司会したこともあり、かなり答えにくい質問までさせていただいたが誠実にお答えいただいたのが印象的であった。

 

 まず、感じたのは「餅は餅屋」なのである。CFRPやGFRPを再資源化するコンパウンド技術を持つ同社の技術は、とても興味深かった。乾留炉を用いたリサイクルは、ASRのリサイクルでも検討されていたが、このような成分がはっきりわかっている物質の場合、さらに有益であるように感じた。

 感銘を受けたのは杉野氏自らが現場で汗を流しながら、工程管理を行っていらっしゃることである。現場を知る方の発言は興味深い。

 

16:20-16:50 講演⑩ オリックス株式会社 山下 英峰氏

           「オリックスグループ『環境事業ユニット』紹介 / オリックスグループの目指すサーキュラーエコノミー」

 

 オリックスという会社がリース業を基に事業を展開しているだけに、たとえばオリックスレンタカーの場合にそれをどの業者で適正処理をしてくれるか、まずそれを探すのが大変だったという。

 結果として自ら環境リサイクル事業を立ち上げ、オリックス環境やオリックス資源開発を創設したが、やはり根幹は全国の環境事業1,000社のマッチングにあるようだ。

 

 阪神との日本シリーズは1勝1敗で舞台は甲子園へ(原稿執筆時10/31)。完全アウェーの中、比嘉が見事に火消しをして2勝1敗としたバファローズ。山下氏も今晩はゆっくり休めるでしょう。しかし、タイガースとバファローズの今回の日本シリーズは、手抜きプレーやケアレスミスで勝負が分かれる気がする。(後半余談。来週には削除?)

 

16:50-17:30 パネルディスカッション

 テラサイクルジャパン合同会社 エリック・カワバタ氏とハリタ金属株式会社 張田真氏を加えたパネルディスカッション。テラリサイクルのエリック・カワバタ氏が、日本の廃掃法に対する問題点をいくつか指摘したが、各自治体の裁量になっている部分が極めてグレーだという印象を外資系企業の方は日本人以上にお持ちのようだ。CEの具現化には廃掃法を抜本から見直す必要があると思われる。

 

 ハリタ金属の張田社長は、富山大学を中心にアルミという素材で地域社会を創る取り組みや、CEの国際規格のTCのお話をされていたが、登壇者すべての方々のコメントは、前向きで積極的だった。

 しかし、静脈産業の現場で外国人資本が日本の法律を必ずしも守らずに営業を続ける限り、CEの展開は難しいと思われる。取り締まるべき事業者は警察と連携してしっかり取り締まらないと、結局美辞麗句で終わってしまう一抹の不満も感じた。

 頑張れ日本のモノづくり!

 

 

(外川健一 編集iruniverse棚町)

 

 

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