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公開NG「蓄電池のサステナビリティ検討に対する取り組み」―日本学術会議 公開シンポジウム③

2022.12.06 17:58 FREE

「なぜSDGs? ~資源・材料循環におけるSDGsとカーボンニュートラル~」をテーマにした、日本学術会議と東京大学生産技術研究所の共催による公開シンポジウムでの講演の様子をシリーズで掲載している。第3回は武尾伸隆・経済産業省電池産業室室長による「蓄電池のサステナビリティ検討に対する取り組み」。武尾氏は2023年1月30日~31日に開催されるIRUNIVERSE主催のBatterySummit2023 at Hilton TOKYO に登壇予定だ。

 

講演の主な内容は次の通り。

 

テーマ:「蓄電池のサステナビリティ検討に対する取り組み」

登壇者:武尾 伸隆氏 経済産業省 電池産業室 室長

      

 

蓄電池産業の現状、何故蓄電池が注目されているのか、そして国際状況がどうなっているのか、その中で経済産業省としてどのような取り組みを行っているのか、さらに本日のテーマであるカーボンニュートラル、資源循環といったサステナビリティの観点から、どういった検討を行っているか、それらの点について紹介できればと思っています。

 

2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けて、蓄電池はキー技術になると考えています。例えば、日本でも運輸部門のCO2排出量の2割近くを自動車が占めていますが、そのカーボンニュートラル実現のための1つの方向性として、電動化に取り組むということです。EV関連でもバッテリーは最重要技術で、コスト面だけからで見ても3 割から4割ぐらいを占めるわけで、世界的にも注目を浴びている理由かなと思っています。

 

カーボンニュートラルの実現には電力部門の脱炭素化も不可欠です。欧州に 比べて若干遅れたかもしれませんが、日本も再エネの主力電源化を目指して2030年に36%~38%に増やそうとしています。再エネは太陽光も風力もそうですが、出力が天候によって左右されることもあり変動します。したがって電力の需給調整力として蓄電池の配置は欠かせません。

 

また、様々な5G通信機器とか、データセンターといった施設は社会がデジタル化していくなかで重要になってくるわけですが、こういったものも電力が動かないと動かない。何かあった時の対応のためにバックアップ電源も必要になります。ここでも蓄電池ということになるので、レジリエンス強化の観点でも蓄電池は重要です。

 

(「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より)

 

昨年の通常国会で法律化されました経済安全推進法の中で、サプライチェーン上の重要物資に何をするか、年末にかけてですね 決めていくわけですが、この蓄電池も経済安全保障上の重要な物資の1 つとして候補に挙げて議論している状況です。 電池も色々な種類がありますが、蓄電池といった場合充放電できない一次電池から、充放電ができる電池として二次電池がありますが、二次電池の中でも特にリチウム電池が注目されています。

 

これは他のニ次電池に比べても、少なくともいま実用化されている電池の中では最もエネルギー密度が高いというのが特徴です。この技術自体はノーベル化学賞を受賞された吉野彰先生が1980年代に基本原理を確立し、その後ソニーが世界で初めて実用化しており、日本発の技術、電池であると言えます。その後も、初期の頃はパソコン、IT機器を中心に、途中からスマートフォンを含めた小型家電で使われ、その途中までは少なくとも日本勢が技術に加えてビジネス面でも、ずっとリードしてきたわけです。しかし、2010年以降、自動車分野でEVでの活用が注目をされ、そこから中国、韓国メーカーが、参入して急速に事業を拡大し、国際競争が激化しているというのが現状です。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

 産業規模、市場の拡大という視点で蓄電池を見た場合、足元から2030年、50年にかけて急速に伸びると予測されています。 特に車載用電池 あるいは定置用、これは家庭用の小型から需給調整のために系統につなぐものを含めますが、それらのいずれも、市場が拡大すると見ています。足元大体5兆円ですが2030年に40兆円、2050年には100兆円という、1つの試算があります。足元を見ますと、車載用電池市場にそのうねりが急速に起きている印象ですが、中長期的には定置用電池も拡大していく見込みが出ております。

 

(「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より)

 

 市場が拡大する中で、日本の企業の位置づけはどうなのか、左側が車載用のリチウム電池のグローバルシェアです。2015年、5年前ですが、日本は5割のシェアを誇っていたわけですが、直近の2020年のデータで見ると、2割まで落ち込んでいます。中国、韓国が、その分台頭してきたということです。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

企業で見ると、パナソニックが入っていますが、それ以外では中国でCATL、韓国でLGということで、日本もまだ世界的に見てトップ3に入っている状況ですが、非常に競争が激しくなってきていて日本のシェアは残念ながら低下しています。右側の定置用リチウム電池を見ますと、さらに落ち込みは激しく、27%だったものが5%程度へと、落ち込みが激しくなっています。

 

その背景ですが、主要国いずれもが蓄電池を戦略物資として位置づけ、大規模な政策支援を行ってきているということがあります。

 

 例えばアメリカです。今のバイデン政権になって、就任直後の100日レビュー というレポートの中で、4つ重要物資の中に蓄電池を掲げていて、その後超党派のインフラ法案でも大規模な電池材料の政策的な支援を行うこととしています。

 

欧州は2017年ぐらいから、産業政策に力を入れていて、カーボンニュートラルに積極的ということもあり、電池の重要性をより早く位置付けて官民連携の体制を作り、財政的な支援も行ってきています。また、今回のテーマとも関係しますが、バッテリー規則案を公表していています。

 

それ以外では韓国、中国がいずれも電池に力を入れており、税制面あるいは電動車の普及に向けての補助金の中での蓄電池の優遇とか、 様々な形の支援を行って産業政策を展開している状況です。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

 先程の欧州の バッテリー規則案ですが、2020年に欧州委員会が公表したものです。非常に多岐にわたる内容ですが、4点ほど私が考えるポイントを挙げます。1つ目が、原材料のニッケル、コバルトなどについて、環境や人権などに配慮した調達を促している点です。企業に対して、それを調達する際にどういった環境への配慮を行っているかなど方針の公表を義務付けています。

 

 2つ目がカーボンフットプリントの表示義務です。電池を製造もしくは廃棄する際に、いわゆるLCAでの観点で、温室効果ガスをどのくらい排出したのか、バッテリーごとに表示をしなさいという、こういう義務を課そうとしています。さらにその先には、一定以上のCO2を排出する電池については欧州域内では販売させないという、マーケットアクセス面での検討も提案されています。例えば脱炭素電源でない化石燃料で作った電源を使っているような電池は欧州域内から締め出される、そういう恐れもあると見ております。産業界もここへの対応をどうするか、関心の高いところです。

 

図にあと2つありますが、先に4番目のリサイクルから話します。事業者に電池の回収を義務付けるとか、あるいはリサイクル事業者に一定以上の資源回収率を要求しています。さらに2030年以降は電池メーカーに製造にあたって一定以上のリサイクル材を活用するよう求めようとしています。コバルトだったら何%以上のリサイクル材を活用するとか、そういった内容です。

 

最後に3番目です。例えばカーボンフットプリントの計算などをするためには非常に膨大なサプライヤーと情報伝達が必要になるので、情報交換ができるデータ流通の仕組みについても、バッテリーパスポートという形で検討しているというのが欧州のいまの状況です。

 

(「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より)

 

蓄電池のサプライチェーンについても簡単に触れておきたいと思います。蓄電池を考える際に、このサプライチェーン全体を 考えることが非常に重要になってきます。

 

 電池でいうと、コバルト、ニッケル、リチウム、これらのレアメタルが中心になりますが、サプライチェーン上の課題として生産国が限定されるといった問題であるとか、精錬工程が中国に集中していることがあります。電池材料、電池セルにしてもそうですが、もともとは日本が非常に競争力を持っていた分野で、いまも安全性などで一定の技術では日本は優位性を保っていますが、一方で中国、韓国メーカーとの投資競争、コスト競争の中で日本のシェアは下落しているということです。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

複数のセルを組み合わせて電池パックという形にし、ここに制御技術をつけて電動車等に乗せたりします。この制御システムをBMSと呼んだりしますが、それが性能あるいはセキュリティ上重要になりますので、そうした技術をどう確保するのかという点も非常に大切です。いずれにしても、電池生産を考える上では、こうしたサプライチェーン全体を考えることが重要であり、それをどう維持・強化していくかが、政策当局の課題だと考えています。

 

次に電池のサプライチェーンにおける材料とかバッテリーメタルの現状についても見ておきたいと思います。蓄電池材料の競争力ということで、主要な部材メーカーを図に示しています。赤字の部分が日本メーカーで、正極、セパレータの分野であるとか、それぞれいまも日本勢はトップランキング の中に入っています。正極のNCAでは日本メーカーがトップです。

そうした強い部分は残っているのですが、過去いずれの材料でも日本がトップを走ってきたわけで、ここも追い上げ、追い抜かれ始めているというのが現状です。コストが課題になってきているということです。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

バッテリーのサプライチェーンの図(下図)になります。リチウム、ニッケル、コバルトの埋蔵から、日本がそれぞれの鉱物をどこから輸入しているのかを示しています。リチウムであれば、埋蔵と生産はチリ、豪州、ニッケルであればインドネシア、コバルトはコンゴ民主共和国と、特定国にある程度偏在しているのが現状です。

 

中流工程の製錬を見ると、中国の割合が高くなっていますが、これは製造コスト、環境規制の問題とか、そもそも中国にマーケットがあるとか、様々な要因がありますが、相当特定国に依存しているということです。 従って、このサプライチェーン見た場合に、特定国への依存も、場合によってはこのリスクにもなり得るというところで、ここをいかに対応するかといったことも重要になっております。市場が急拡大する中で、中長期の視点でその需給を見たとき、帳尻が合うのかといったこともあります。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

IEA(国際エネルギー機関)のレポートなどを見ると、リチウム、コバルトは2030年前に、需要に供給が追いつかないという問題もあって、いまバッテリーの関係者の中では、これらの資源をいかに確保するかが課題になってきています。これまでであれば資源メジャーとか、資源会社が確保に動くところですが、バッテリーメーカーとか、あるいは自動車メーカーも資源獲得に走っている状況です。極めて重要な課題になってきています。

下図は黒鉛のサプライチェーンの状況を見たものですが、埋蔵・生産から中国に集中しています。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

少し話は変わりますが、電池の技術進化を考えたときに、注目されているものに全固体リチウム電池があります。いまのリチウムイオン電池(下図=左) はセルの中に、セパレータと正極・負極があり、電解液が浸っていて、その間をリチウムイオンが行ったり来たりすることで電気が流れる構造になっているのですが、電解液が燃えやすいという課題があります。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

全固体電池はこれを全部、固体電解質に置き換えるというものです。安全性がより向上するとか、あるいは材料の組み合わせで航続距離、いわゆるエネルギー密度が高められるとか、充電時間が短縮できるといった特徴があるので、注目されているわけです。

日本では自動車メーカー、電池メーカー含めて長く研究してリードしてきたのですが、中国も猛追してきています。一方で経年劣化であるとか、量産化技術の確立などの課題もあり、これがいつ頃実現できるのか、1つの課題になってきています。

 

蓄電池の製造などにかかわる課題についても見ておきましょう。これはサステナビリティの観点からの課題ということになりますが、大量の資源を使うということで、資源リスクとか、サプライチェーン上の人権・環境リスク、特定国であると例えば児童労働問題、あるいはその製造工程における水質・大気汚染とか、より広い観点での環境問題が重要になってきます。電池の製造工程でも、相当の温室効果ガス(GHG)を排出します。これもひとつの課題になってきております。

資源循環の観点からは廃棄問題への対応もあります。大量に消費されますので、それを単純に廃棄するということでは、環境にも良くないですし、非常に非効率なことになってしまいます。いかにリユースや、リサイクルをするかです。

 

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

 経済産業省ではこうした現状を踏まえて、8月末に政策の方向性ということで「蓄電池産業戦略」を公表しました。2021年11月に官民協議会を立ち上げて、産業界の代表あるいは専門家、ユーザー企業に入ってもらい、合計6回の議論を重ねてまとめたものです。

 

最初にこれまでの政策の反省から入っています。先程も触れましたが、経産省の産業政策は次の全個体電池の技術開発に相当集中投資してきました。一方で、その間に中国、韓国、あるいは他の国の政府は、現行のリチウム電池に相当投資してきていて、この分野での投資競争が非常に激しくなっています。

 

2030年ごろまでは現行のリチウム電池が支配的であるとの見込みも出ていますので、次の全固体電池に行く前に、いまのままでは足元の市場で日本勢が疲弊して追い出されてしまいかねない。そういう恐れもありましたので、もう1度、足元を固めるべきだとの考え方に至ったということです。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

今後の方向性として3つ示しています。1つは現行のリチウム電池の基盤強化、特に国内基盤を強化すること、そのために大規模投資を行うということです。

 

2番目がグローバル市場を意識して日本の技術を海外に戦略的に展開し、グローバルでのプレゼンスを確保するということです。

 

3番目です。次世代電池の重要性を踏まえて引き続き技術開発をしっかりやっていくということです。

 

この3つの方向性をより具体化し目標を立てております。

 

1番目が既存のリチウム電池の製造基盤の確立については遅くとも2030年までに蓄電池・材料の国内の製造基盤、製造能力を150GWhにするという目標になります。現行の製造能力がおよそ20GWhなので大体7倍になります。これから7年~8年しかありませんが、7倍になると、EV台数換算で、これは計算の仕方にもよりますが、大体300万台程のボリュームになります。それを目指すということです。

 

2 番目です。そうした国内基盤に加えて、グローバルプレゼンスを確保するという観点から海外でも日本企業がきちっと投資をして、製造能力を持つことが必要であると考えているので、国内外全体で600GWh程度の製造能力を確保する目標にしています。2030年の世界市場規模は電池容量で3000GWhとの予測があるので、その場合でも少なくともシェア2割以上取れるということです。足元のシェアは15%程度に落ちているので、それよりは少なくとも引き上げるということです。

3番目の技術開発については、全固体電池の2030年頃の本格実用化という目標を掲げています。さらに 2030年以降も日本が引き続き技術開発をリードするという目標を掲げています。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

この3つの施策目標を掲げた上で、具体的な政策として7本の柱を決めて示しています。1番目が国内の基盤拡充のための政策パッケージということで、官民連携して国内にきちっと投資をする、材料もしくはセルの工場にきちっと設備投資をするということです。 令和3年度の補正予算でも1,000億円の支援スキームを設けたのですが、11月20日に閣議決定した今年度の第2次補正予算にも、国内製造基盤の確立支援に3300億円の予算を盛り込んでいます。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

2番目の海外展開、海外との連携については、例えばアメリカをはじめとする有志国との戦略的な連携を強化するとか、あるいは国際標準とか、そういったことを含めた国際ルールの構築を日本がきちっとリードするという内容です。

 

3番目は上流資源の確保です。ここに数字はありませんが、蓄電池の産業戦略の中には2030年における具体的な数字、定量的な目安を置いています。国内で150GWhという数字を確立するためには、リチウムだけですと10万トン、ニッケルで9万トンになります。さらに グローバルでの600GWhという目標の達成のためにはリチウムで38万トン、ニッケルで31万トンです。非常に膨大な量の資源が必要になってきます。

 

こういった資源確保のために、国として大きく2つ、支援スキームの強化と、関係国との連携強化を考えております。

 

支援スキームの強化では経済産業省の関係の独立行政法人JOGMECの機能強化です。これまでも上流資源の開発支援、例えば民間企業と一緒になって出資し権益を確保する活動を行ってきておりますが、この支援体制についても、従来は50%までしか国が支援できなかったのですが75%まで国がリスクをとる仕組みにしました。この資源の確保に向けた支援スキームの強化についても今年度の補正予算の中で、バッテリー関係でも1800億円弱の予算を盛り込んでいます。

 

 関係国との連携強化については資源国の豪州、南米、アフリカ、北米の国と様々な機会を通じ関係強化、いわゆる資源外交を推進していきます。

 

4番目が次世代の技術開発です。全固体電池、あるいはその先にある革新電池の技術開発を推進していきます。一昨年に設けたグリーノベーション基金に2兆円の予算を積んでいますが、蓄電池関係で1400億程の支援を盛り込んでいて、例えば全個体電池の高性能電池、あるいは材料の研究開発であるとか、リサイクル技術であるとか、いま技術開発を進めているところです。

 

5番目が国内市場の創出で、電動車の普及促進と定置用の蓄電池の普及促進が柱になります。EVなど電動車の普及促進に欠かせない充電ステーションの整備については従来から支援を 行っていますが、これに加えて電動車の購入支援、 EVの価格はまだ高いので、それを補填するために購入補助金制度を設けています。これについても補正予算の中に700億程度の予算を盛り込んでいます。

 

併せて定置用蓄電池の普及に向けて、財政的な支援や、あるいは電気事業法の改正などを通じて、その位置づけの明確化など進めています。

 

6番目は人材育成です。国内の製造基盤の強化には2030年に向けて国内だけで新たに3万人の人材を確保する必要があるとの見通しを立てていて、まず蓄電池メーカーが集中している関西に人材育成などのためのコンソーシアムを8月末に発足させたところです。蓄電池産業界がどういう人材を求めているのか、ニーズを明確にし、工業高校、高専、大学など様々な教育機関が人材育成のために、どういった教育カリキュラムが必要なのか、議論しているところです。年度内に一定の方向性を示した上で、23年、24年にかけて教育カリキュラムへの反映を、関西の特定の学校とかで行っていくということです。

 

最後が国内の環境整備の強化になります。この中にシンポジウムのテーマに一番関係の深い「サステナビリティの確保に向けた取り組み」とあるので、少し詳しく触れたいと思います。4つほどのテーマを含んでいますが、1つ目がリサイクル・リユースです。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

国の方針としては2030年までに国内のリサイクルシステムの確立を目指すとしており、電池の回収力の強化にいま取り組んでいます。 国内で作った電池のうちかなりの量が海外にいっています。車載用にしても新車の形でいっているものもあれば、中古車としてもいっています。部品としても海外に行っているものもあります。これをいかに国内で循環させるか。また、リユース市場の活性化という観点もあります。例えば、車載用電池は、使い終わった後も定置用電池としてなら、まだまだ使える性能だったりするので、いきなり廃棄してリサイクル資源にするのではなくて、 もう1回、再利用するといったことも検討を進めております。

 

さらにこのリサイクル基盤の構築に向けた、必要な取り組みに関しても検討しているところです。まだまだリサイクル技術には課題があり、例えばリチウムの回収は技術的に難しくて、おそらく回収率は半分にもいかないのではと思います。これをどう効率的にして経済性のある形にするか、重要ですので、そうした技術開発も進めています。

 

2つ目がカーボンフットプリントです。後ほど詳しく触れますが、 電池を作る工程、あるいは使用工程、リサイクルの工程でどのぐらい CO2を排出しているのか、試行的にこれを算出しようとしています。

 

人権・環境デュー・デリジェンスについても同様で、人権、児童労働とか、土壌・ 大気汚染がないかとか、そういったチェックをしてもらっています。

 

データ連携基盤というのは、そうした取り組みを支えるうえで、データのやり取りは欠かせないものなので、欧州のバッテリーパスポートの話題の中でも触れましたが、それを支える基盤を作ろうということで、いま取り組んでいる状況です。

 

いま説明した4つについて、この後もう少し具体的に紹介したいと思います。

 

まず1つ目がカーボンフットプリント(CFP)の算定試行事業です。そのベースとなる考え方が整理できたので、事業者にカーボンフットプリントを今年度、試行的に算出してもらっています。自動車メーカー5社、材料メーカー30社、セルメーカー6社、40社程度に、なります。原材料を含めた自社製品のCFPという形で求めています。

 

カーボンフットプリントの算定を試行する上では様々な論点があります。算定対象にどこまで含めるか、どういう計算方法で実施するのか、アプローチの仕方によって数値も変わってくるからです。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

例えば算定対象です。理想的にはもちろん原材料の調達から、使用後処理までということですが、使用段階あるいは使用後の処理についてはどう把握するのか、かなり技術的に難しいところがあります。算定試行事業では使用後の処理まで含めて行おうとしていますが、欧州のバッテリー規則案では、使用段階がいま入っていません。

 

 実際にCO2の排出量を計算するには、活動量、例えば電力とか、原材料をどれくらい使うのか、一定の活動量を把握する必要がありますが、それもどうやって計算するのか。電池材料にしても、もう何十とか何百とかありますので、それをどこまで計算するのか、その境界線の問題もあります。試行事業では一定の仮定を置きながら計算しております。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

さらに、(活動量当たりのCO2排出量である)排出原単位をどうするのかということもあります。これはもう一次データで取れない場合は2次データを使うことになるのですが、どのデータソースを使うか、そういった問題もあります。様々な論点をいろいろ確かめながら作業を進めています。原材料の調達から使用までは事業者に進めてもらおうと思いますが、廃棄・リサイクルのプロセスは、把握するのが難しい面があるので、それは国の方でまとめて進めようとしています。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

もう一つポイントは機能単位です。電池は大きさとか重量とか、あるいは電気の容量とか、全然違うので、異なった製品をどう比較するのか、この比較の仕方が結構難しい。基本的には大きさが大きければ、それだけ作る過程でもCO2を排出しているのですが、この機能単位をどうするかによって、結構この全体の値が変わってきます。

 

排出原単位のデータベースは、産総研のIDEAが網羅性や日本の平均値をとっている点などを評価して、これをベースとしていますが、もちろん1次データが取得できる場合には、それを優先しようと思っています。

データベースも欧州、米国を含め様々なものが提案されていますが、実際に細かく見てみるとデータベースによって相当数値のばらつきがあります。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

2つ目の人権・環境デュー・デリジェンスです。これについても電池メーカーなどを対象に、人権・環境をテーマに試行的な事業を行っています。ここに書いてあるのはコバルトとかニッケル、リチウム、黒鉛の採掘・精錬・加工するプロセスで、環境であれば大気、水、土壌とか、児童労働とか、ちゃんと配慮していますかといったことについて、調査票を通じて確認しています。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

電池メーカーから材料メーカー、さらにそのサプライヤーに、調査票を送って課題があるかどうか、どういった対応をしているのか確認する取り組みを進めています。

 

   

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

3つ目がリユース・リサイクルです。 まず現状、どういった流通状況になっているのか、車載用電池に絞って説明します。国内で生産されている自動車は年間1000万台程で、このうち半分は海外に輸出されます。あとの半分は国内ですが、中古車としてこのうちから150万台が海外に行っています。 国内で廃車になるのは350万台ということになるので、 全体で見ると35%ほどです。資源の循環という観点では、現状だとこの規模のポテンシャルしかないということです。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

アンケート調査の結果から廃車後の電池流通状況をみると、海外にリユース向けとして出ている20%と、あと資源、ブラックマス資源として出ている5%があるので、25%は解体後に出ていっています。残りの3割はリユース向けで4割ぐらいが中間処理で、この一部がリサイクルされるということになります。それがここまでに分かった結果です。

 

リユースの実態や、中間処理以降、単純に廃棄するだけのものとか、あるいは ブラックマスになってリサイクルに使われているのか、ここも実体把握が必要なので、これについてもいま調査を行っているところです。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

 こういった実態を把握した上で、リサイクル市場を確立するためには、経済性がどのくらいになったら成立するのか、そういった点についても検討しております。

 

また、ここにあるのは廃棄されるバッテリーだけを考えているのですが、調べてみると、材料は 製造工程でもかなり廃棄されています。 不良品であるとか、廃棄処分されたものであるとか、足元は圧倒的にそちらから出ているものが多い。

 

原材料というか、そうした製造工程で廃棄されているものと、廃材として出てくるものをいかに組み合わせて循環型社会を考えていくのかといったことが重要になるのではと思っています。

 

 最後にデータ連携基盤です。説明してきたようなカーボンフットプリントとか、サプライチェーン上の管理をするためには、膨大なデータのやり取りが必要になります。欧州ではバッテリーパスポートという形で法律上も位置付けられ、あるいは欧米では自動車関係の団体が、こうしたデータ連携のプラットフォームづくり、標準づくりに動いています。こういった サプライチェーンの管理自体は本来、電池とか自動車に限らず、業種横断的な課題になるかと思いますが、 バッテリーが最も先に対応を求められています。欧州のバッテリー規則というのは、それだけ大きなインパクトを与えているわけですが、我々としては、他の分野への展開も意識しながら、まずは電池をユースケースとしながらデータ連携の基盤づくりを官民連携で進めているところです。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

まずCFPと、DD(デュー・デリジェンス)、材料の環境リスク、 人権リスクの管理に使えるように、この2つをターゲットにデータ連携基盤を作った上で、さらにアプリケーションを増やしていきます。

 

システム設計に向けて必要なデータの特定を進めながらシステム要件を検討していますが、例えば欧州のバッテリー規則への対応なども考えた場合に、海外のプラットフォームあるいは海外の規制との調整、連携も重要な視点になってくるかと思っております 。 ただ、この要件定義、結構難しい面があります。例えば、データ連携する上ではデータをオープンにする必要が出てくるのですが、一方でCFPの数字などはかなり機微情報というか営業秘密になります。それで企業の競争力がわかる部分もあるので、あまりオープンにしたくないという企業マインドもあります。機密情報の保護という観点も重要なので、そこをいかに両立するかということで、かなり難しい制度設計になったりします。そうしたところにも対応しながら事業者の使い勝手の良いシステムにどう仕上げるか、いままさに官民連携しながら検討している状況です。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

今年度中に要件を具体化した上で、来年度にかけてシステムを作って 2024年までに、この時期がちょうど欧州の規制対応が必要なタイミングになるので、それまでに一定の形を作りたいと思っています。

 

サステナビリティの観点で進めております4つの取り組み、まだまだ検討途上ですが、日本の産業競争力とともに、国際的な課題にも対応できるような 形にできればと考えています。

 

「蓄電池のサステイナビリティ ~蓄電池産業の現状と今後の方向性~ 」より

 

関連記事:「法政策からみたサーキュラーエコノミー」――日本学術会議 公開シンポジウム①

     

     「カーボンニュートラルと資源循環の両立の重要性と難しさ」―日本学術会議 公開シンポジウム②

      

 

(おわり)

 

<IRuniverse G・Mochizuki>

 

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